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声の神に顔はいらない  作者: 上松
73/403

73 世界は平等なんじゃない

「匙川さんって声だけですよね」

「ケンカ売ってる?」


 そうなるよね!? いきなり声だけって言われたらそうなるよね!? いや、実際そうなんだけどね。けどこう直で言われるとね……しかもまあ静川秋華は年下なわけだし……いや、年功序列なんてくだらない。そう思ってるよ。


 なにせ声優界は実力主義だ。実力と人気を兼ね備えた奴が偉いのである。だから実は静川秋華に逆らって得することなんてない。今の模範的な回答はきっと――


「えへへ、そうなんですよ~。もう本当声だけしかないんですー。静川秋華さんは全部あってうらやましいですー」


 ――とかだろう。自分を貶めて静川秋華を上げなければならない。それが社会という物だ。けど咄嗟に私は反抗してしまった。あの静川秋華に……


「あっ、いや実はその通りだけと……私なんて声だけなんて当然だけど……その……」

「いえ、気を使わなくてけっこうですよ。ちょっと本音が漏れただけですので」


 そう言って笑って許してくれる静川秋華。毛と良い奴……なんて思わないよ。だって本音って堂々言ってるし。まあある意味、静川秋華の様な奴はわかりやすくていいけどね。ずっとずっといい子の皮を被ってるよりもこうやって本音をさらしてくれた方が、こっちとしてはありがたい。


「でも、その声が凄いのも事実じゃないですか」

「私は……ちょっとは容姿にパラメーターを振ってもよかったと思いますけどね」


 私の人としてのパラメーターは声だけ突出しすぎだと思う。もう少し容姿にもパラメーターが振ってあったら、きっともっと生きやすかっただろうと思わずにはいられない。


「けど、それじゃあきっと先生の関心は引けなかったと思う。今の匙川さんの声だから先生は……」

「先生?」


 先生とはどの先生かな? 私達声優からしたら先生なんて一杯だ。今の作品の原作者さんだろうか? けどその人は一度も現場に顔出してないんだよね。先生といわれて真っ先に思い浮かぶのはあの人だ。今、一番売れてるあの人。


「まだ海外でしたっけ?」

「何で!?」


 めっちゃビビった。だって静川秋華が凄い勢いで体を詰めてきたからだ。なにその勢い。どういうことなの?


「何で先生が海外だって知ってるの?」


 どうやら私が思ってた先生と、静川秋華が言ってる先生は同一人物のようだ。なるほど……確かに普通は先生とのつながりなんてアニメ期間中だけだろう。私が先生の事を知ってるのは不自然だ。あの人、SNSもあんまりやってないしね。


 どうしよう……けど、ん?


「どうしてそんな事気にするの?」


 それである。だって私と先生の関係が珍しいものなら、今先生の事を知ってる静川秋華も珍しいのでは? 私の言葉に、静川秋華はもじもじしだす。


「それ……は」

「静川さんってあの先生の作品に出た事なかったですよね?」

「あ、あるし! 最初の頃に一度だけ……」


 あるんだ。てかこの反応はもしかして……この静川秋華よりも全てを持ってる奴がいた……それはあの先生である!!

次回は20時にあげます。

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