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声の神に顔はいらない  作者: 上松
381/403

381 運命の日 16

(泣いていいかな?)


 私の心は既に折れている。だって……だって全然反応帰って来ないんだもん。私はすごすごと静川秋華のところまで帰っていった。


「もうだめだ……今日のオーディションも私なんて……」

「よしよし、ととのちゃんは頑張ったよ。でも諦めるには早いかな? ちゃんと彼女見てみて」


 敗北者となって戻ってきた私に静川秋華はそんな事を言ってきた。てかナデナデするのはやめてくれない? 流石にこの年で、しかも年下の美女にナデナデされるとか恥ずかしい……てかなんか目覚めそう。美女にナデナデされるのってなんか気持ち……いや、これ以上は深く考えないほうがいいような気がする。

 美女ってなんか癒やし効果ある何かでも発してるのだろうか? あるかもしれない。だって私は逆だと思うから……それなら対象的な美女は別のなにかを出しててもおかしくない思う。


 私は静川秋華に言われたから、再び声をかけた彼女を見る。本当なら見たくもないよ。さっきの記憶なんて彼方へと放り投げたいくらいだ。でもとりあえずもう一度見た。

 別に何か変わったという事はない。ただ壁によりかかり、スマホを彼女は見てる。今の時代、あんな人はたくさんいる。


「別にさっきと変わりない……」

「そうですね。さっきまでと同じく、彼女イヤホンしてるよ」

「え?」


 私は言われてよく見る。けど、ゴメンだけどそもそもが彼女からは耳が見えてない。だって女性だとイヤホンとかしてるかどうかなんて分かりづらいんだ。だって高確率で耳なんて隠れてるし……


「なんで……そう思うの?」

「リズムに乗ってるじゃないですか」

「確かにちょっとだけ揺れる時有るけど……」


 あれでリズムに乗ってるって判断するのは無理があると思う。だって本当に時々頭をちょっと揺らす程度だよ。規則的に揺れてるのなら、まだわかるけど……別にそうじゃない。

 まあこんな人がいる所で、あからさまに体揺らしてたりするやつなんて舌端に近づきたくないかけどね。


「大丈夫、あれは絶対音楽きいてまずよ」

「なんかい今笑ってるけど」

「お笑いラジオかもね」

「適当な……」


 まあけど、たしかにスマホを手放さなしい、何かのど動画を見てるって事はありえる。普通に縦持ちだから、動画見るにはちょっと適してない……と思うが……


「もう一度やってきたらどうですか?」

「わかった」


 私は静川秋華に背中を押されて再び彼女の元へといった。そして目の前で声をかける。


「あの……」


 反応はない。スマホに夢中のようだ。既に帰りたいが、ここはグッと我慢して、さっきよりも声量を上げる。でもこれでノイズキャンセリングイヤホンなら意味なんてないかも? けど、とりあえず私はもう一度「あの」っていった。すると私の思いが通じたのか、ようやく彼女が顔を上げる。そして私と目が合うと、耳に手を持っていってイヤホンを外してくれた。


(やっぱりイヤホンしてたんだ)


 静川秋華よくわかったな。でもようやく、私と彼女は向き合う事が出来た。

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