373 運命の日 8
何故か誰も中に入りたがらない中、私達は白い息を吐きつつとりあえず静川秋華のお付きの人の帰りを待ってた。浅野芽依はピクピクと口角をしつつも、なんか周囲に静川秋華との仲良しアピールをしたいのか、積極的に絡んでいってる。
まあ強いものには巻かれろの精神があいつあるからね。どうせ静川秋華の人気の一端を自分に引き込みたいんだろう。浅野芽依もなんだかんだ言って一定の人気はある。コンスタントにアニメにも出てるし、今のウイングイメージの一番の売出し中の声優だけはちゃんとあるのだ。
まあ最近の声優の外見のレベルの上昇の速さに危惧を覚えてるだろうから、最近は見た目がいい新人とかと懇意にして先輩風を吹かせてるとは聞いてる。
まあけど、普通自分の顔面レベルをわかってて自己顕示欲が強い人って大抵、周囲を引き立て役に使う。だから自分よりも顔面偏差値が低い相手に的を絞って交流したりするのだ。
怖いし、醜いけど、それが女と言うものだ。そして実際浅野芽依ってそういう女じゃん。てかそういう女だと思ってた。でもをとやら浅野芽依はそんな奴らよりも一歩先を行くようだ。
積極的に自分よりもビジュアルがいい女性に絡みにいってるからね。そこら辺の中途半端な容姿の奴と違って、浅野芽依は周りを低くするんじゃなく、周囲のレベルを上げる事で、自分の事を相対的に上げる戦法で言ってるようだ。
まあ周囲を低くすると、上限まで低くなるからね。でも周囲をあげれは、自ずと上限自体が高くなる。でもまあ自分だけが、突出して低く見られる……って事があり得るし、多分私ならそれが起こるだろう。
でもその絶妙なラインを浅野芽依は維持してるみたいだ。ちょっと可愛い娘と一緒に写真を撮ってSNSにあげればどっちにも「可愛い」と評価がつく。
浅野芽依だけに「ブサイク」がつくことは殆どない。まあそれだけ気を使ってるってのはあるけどね。最近のスマホのカメラは凄いしね。でも流石に元がないくらいにすることはない。浅野芽依は猫耳とか髭とかつける事でオプションに付加価値をつけてるみたい。
そしてやっぱり、声優界で一番の容姿を持ってる女性と成ったら、誰もが静川秋華というだろう。よく雑誌とかの表紙も飾ってるし、時々グラビア的な事をやってる。
大体の声優は声優雑誌ではそういうのやってりするけど、それ以外となると……ね。でも静川秋華はコンスタントに女性雑誌とかで表紙飾ってる。声優という枠に収まってないのだ。
だから浅野芽依的には、そんな静川秋華と繋がる事で、もっと深く芸能界に食い込もうとかの魂胆があるのかも? 私は浅野芽依と静川秋華を尻目に宮ちゃんと温かい飲み物を飲みつつ、ゆっくりしてる。宮ちゃんはガツガツしてないし、雰囲気が柔らかいから、こうやって何も話さなくても気まずくなくていい。
そんな風に思ってたら、静川秋華のお付きの人が建物から出てきた。その後ろには多分、この武雄スタジオの人も居た。そしてその人が声を発して、私達声優を中に誘導し始めた。どうやらようやく、中に入れるらしい。




