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声の神に顔はいらない  作者: 上松
371/403

371 運命の日 6

「どういう事なのか、中に入って聞いて来て」

「はい」


 私も知ってる静川秋華の付き人さんだ。キリッとした尖ったメガネをつけてスーツに身を包んだ女性だ。まさに出来る女って感じの人で、ちょっと私的には苦手っていうか……めっちゃきっちりしてるんだよね。はっきり言って、哀れだよね。


 いや、静川秋華がじゃなく。あの人が……だってあの人は本当に真面目な人だ。まさに会社員って感じで、スケジュールをびっちりと決めて、タスク管理をして、一つ一つそれを消化しながら、日々を生きてる……みないな? 私は会社員の経験なんてないわけだけど、まさに彼女は会社員だなって印象を私は勝手に持ってる。


 それに比べて私達声優はどうか……案外自由だ。もっというと適当……というかね。いや売れてる人たちはそれこそタイトなスケジュールでカツカツなのかもしれないが、私にはその経験はないからね。

 まあ静川秋華なんて、その最たる例のはずなんだけど……私も静川秋華の影をやってるだけあって、一応そっちのスケジュールもちょっとは把握してる。かなりカツカツだった。でもそれでも、静川秋華は静川秋華なんだよね。


 何を言ってるかわからない? まあつまりはどんなに忙しくても、あいつは、自分を殺したりしないって事だ。仕事を自分の都合でキャンセルしたり、行かなかったり――なんて事は流石にしてないが、なんかどんどん色んな要求してた。最初は腕を折った負い目からか、大人しくしてたんだけど……日が経つにつれて、なんか細かいことを要求してた。


「今日はあそこのお弁当食べたい」とか「抹茶フラペチーノ飲みたい」だのとか……そういうのを突然言って買いに行かせたりしてた。

 まあそういうくらいなら、可愛い物……なのかもしれないが、毎日だとね。私はイラッとくるよね。


「さむ……」


 そういった静川秋華はそそくさと車に戻ろうとする。確かに外は寒いからね。静川秋華の登場により、周囲がざわついてるけど、静川秋華本人は全くそれを意に返してない。てか気づいてない。

 あれが大物か……私ならあんなに注目されてたら、ソワソワするだろう。てか……絶対にネガティブな方向に考える。ブサイクだって思われてるんだろうなって……とか。

 あそこまで堂々とは出来ない。それを素でやってるんだから、静川秋華は持ってると思う。


「あっ」

「っ!」


 皆が静川秋華に注目してた。けどそんな中、なぜか私と静川秋華の目があった。浅野芽依を盾にしてたんだけどな……


「ととのちゃん!」


 やめて、そんな思いっきり手を振らないで、ほらこっちにも注目が……私達の関係はそんなに喧伝しないほうがいいってそっちの社長も言ってたじゃん。

 きっと静川秋華はそんなの頭から抜け落ちてるんだろう。

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