表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声の神に顔はいらない  作者: 上松
348/403

348 ズルをするって事

「あらあら、幸運なお二人じゃない」

「……どうも……おはよう御座います、北大路さん、登園さん」

「おはようですお二人共。お元気ですか?」

「あんた、煽ってるの?」

「ええーそんなただの挨拶じゃないですか〰。被害妄想はやめてくださいよ〰。公平なクジな結果じゃないですかぁ〰」

「そうね、公平なクジな結果は仕方ないわよね。本当にそうなら……だけど」


 そういって北大路さんは浅野芽依をギロッと睨む。けどぞれを涼しく受け流してる浅野芽依は流石だ。だって北大路さんは普段はとても細い糸目してる。それを開く時……それは余程の事があるときだ。先日も見たけど、あれだってそれほどの事だった。そんな開眼を間近で受けて、同様一つ見せないとか、どんだけ心臓強いのよこいつ。逆に私はブルブル震えてた。


「ちょっとやめて上げて、ほらととのが怯えてる」

「あら、ごめんなさいね。貴方はおめでとう。素直にそう言えるわ」

「同じオールドのカテゴリだからですか?」


 ピキ――という空気に亀裂が入る様な音が聞こえた気がした。こいつは本当に爆弾を投下してくるね。絶対にわざとでしょ。こいつの場合は天然なんていいわけ効かないよ。なにせ本性知ってるからね。こいつは周りの空気を読むことに長けてる。わざわざ地雷を踏むなんて事は、踏み抜く気があるから踏ん出るんだ。


「お、オールドって……」


 やばい、北大路さんがわなわな震えてらっしゃる。なんとか我慢して私に祝福の言葉をくれたのに……それに水をぶっかけるような事を浅野芽依がいうから……てか私の良心もずたずただけどね。まさかオーディションに行けるだけでこんなにも精神が痛むなんて……なにせ北大路さんも登園さんも純粋にあがいてる。それは私と全く同じなんだ。そんな二人にズルして私はオーディションへと行く権利を奪った。


(いやいや、ズルじゃないから)


 そうだった。あれは不可抗力。私にその意思はなかった。だから私が罪悪感を覚える必要はない。ないったらない。私はそう心で言って、心の平穏を保つ。


「はーふーはーふー」


 呼吸も整えて……


「大丈夫? 北大路さん、抑えてその目強烈なんですから」

「登園……あんたまで……悪かったわよ。私は貴女の事はちゃんと応援してるのよ。ただ礼儀知らずな奴が嫌いなだけ」

「ひゅっ――」


 北大路さんが私に向かって謝罪して来たことで、私の心臓が逆に鷲掴みにされた。なんとか収めようとしてた罪悪感で私の心臓は握りつぶされそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ