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声の神に顔はいらない  作者: 上松
330/403

330 後悔するくらいなら、みっともなく足掻こう

「芽依、う……裏切るの!?」

「裏切るって人聞きが悪いですよ先輩~。だってこればっかりはしょうが無いじゃないですか。私はまだピチピチの二十代ですし、輝いた未来がある若手ですから……枠を一つ貰うのも仕方ないかと? ごっつあんです」


 この野郎……本当に既に自分は無関係って感じじゃん。まあ確かに浅野芽依からしたら、自分は既に安泰だからね。でもそれで納得するような人達だと? 私も含めて、この年齢まで声優やってきたんだよ? つまりは……とってもこの人達は意地汚いのだ。そんなに知らないけど、ここまて声優としてやってきたのなら、きっとそうだ。生きるって事は……そう言う事でしょう。綺麗なままでなんて居られない。私は誰かを傷つけるよりも、なんとか踏みとどまるって感じでここまで来たけど、上の方の争いはきっと熾烈なはずだ。

 なにせ人気は移ろい続ける。それこそ盤石なんて……本当にその地位を確立させないとないだろう。油断したら、直ぐに下に落ちてしまう。それだけこの業界は過酷だ。確かに人気があれば選ばれやすくなる。でもいつだって新人は下から突き上げてくるんだ。新人がいなく成るのも問題だけど、新人が次々と出てくるのも、先に業界に居る者としては気が気じゃないんだよね。だってその内の何人かは自分の地位を怯えさせる可能性があるんだから。年々レベルが上がってる声優業界だ。

 この会社は比較的、顔だけじゃなく声のレベルで声優を取ってくれてる方だと思う。だからこそ、私みたいな声優を放り投げないで居てくれてる訳だし。でも事務所によっては既に顔面偏差値が満たないと入れもしないところがあったり……そう言う所はそれこそグラビアとかやってる所と併用してたりしてるけど……まあ私には関係ないね。なにせ私、ない……し。いやいや、問題は二人、北大路さんと登園さんだ。ようは彼女達は、今の声優に比べたら、それこそそこまででもないって事。容姿がね。でも私と違って愛嬌さえないって程じゃないけど。それに二人ともコミュ力は高いみたい。

 二人は浅野芽依の事、そんな知ってるとは思えないけど、引くとかよりも、燃やしてる感じだ。


「ふふ、今の子達はそれくらいでないと。ですけど、私達も引退した気は無いんですよ? 私達は、一つとて枠を譲る気はありません。確かに私達の様な旬が過ぎたばばあなんかよりも、貴方たちの様な若手に譲るべきなんでしょう。ええわかってますとも。ですが……私達にだって生活があるんです。人生はまだまだ続くんですよ! 一人で生きないといけないの! だから……譲る気なんて一ミリもない。意地汚くとも、私はここで最後まで生きて行かなきゃいけないんですから」


 登園さんの言葉には流石に浅野芽依もいつもの作ってた顔をふるい落とされてて、ちょっとだけたじろいだ。それだけ、登園さんの本気が浅野芽依にも届いたって事だろう。そして登園さんの言葉は私へも通じる。私だって、この世界でしかいきれない。誰にだって譲れない物がある。ようは私達的には、若手に譲るとか言う常識なんて……いや、きれい事なんて言ってる場合ではないんだ。だからみっともなくても、批判されても、あがく事を私も……登園さんも……そして北大路さんも恥だなんておもって無い。

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