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声の神に顔はいらない  作者: 上松
329/403

329 レジェンド側じゃない

「私も引く気はないの。あの先生の作品、私達がもう一度花開くには丁度よくなくて?」

「そうそう、あの先生の作品なら、申し分なんてないのよ」


 お二人は正に待ってたかのように離す気はないらしい。このウイングイメージに与えられた枠は二つ。それを先輩達に取られてしまうと、それはそれで先輩的にはイメージが悪くなるだろう。なにせ強引にその枠を奪ったみたいな物だ。二つあるのなら、普通は一つはベテランでもいいが、もう一つは伸びしろがある人に行かせるものだろう。


「北大路さん、登園さん。済みませんが、二つともお二人で枠を埋めるなんて事は出来ません。それは、心情的にも会社的にも許しがたい事なんです」


 そう言ったのは、なんと私の担当マネージャーだった。まあ確かにあの人、やけにはっきり言うからな。てかこの会社だけで見たらあの二人は大御所だ。なにせ黎明期のこの事務所を支えたのはあの二人だから。だからあの二人にはっきりと言える様な人はそれこそマネージャーの中にはそれこそいない。もっと上の役職の人達くらい。でも私のマネージャーは恐れ知らずか。


「そうなの?」


 北大路さんが自身のマネージャーに向かってそういう。すると北大路さんのマネージャーは「そんな契約書的な事はありません……が」とか言ってる。まあ確かにそれが書面とかにあるとかはないと思う。だってそういうのは、暗黙の了解とかいうそういう感じだろうし。でも二人の思いも私はわかる。とんでもない……とか大人げない……とか思うけど、人間必死になってたら、そんなのどうでも良い物だ。そしてきっとあがかないと、この業界では消えていくだけってのも、この二人は知ってる。知ってないわけ無い。


 私なんかよりも、消えていった人を知ってるだろうし、それこそ引退とかしていった人達も知ってるだろう。人気があった時、良い物件を見つけた人達は早々と止めて行く人っているし……私のような端っこの声優にはあんまり深い情報とか入ってこないけど、この二人くらい売れてたら、それこそ色々と私のネット頼みの情報なんかよりも、生の声を聞いてるだろう。だからこそ……だよね。流石に北大路さんは結婚してるらしいけど……登園さんはまだ。この会社の為にそういうスキャンダル的な事は避けてきた人だ。私と違って人気もあって、顔だって不細工ではない。人気だってあった内は、それこそ弾き手あまただっただろうに、会社の為に……ファンの期待に応える為に……と言うことでここまで独身。

 私は覚悟してる。けど……頑張った人にはご褒美があるべきだとは思う。でも……その為に私は犠牲になる気なんてないんだけど。だって私も後には引けないから。


「皆さんも、一つは若手に譲るべきだというおもいなのでしょうか?」


 そんな北大路さんの言葉に、殆どの会社の人達はだんまりである。けどそこで新入社員っぽい人が――


「でもそれなら……匙川さんもオールドの方に含まれるのでは?」


 ――とか失礼な事を言いやがった。ちょちょ! オールドじゃなくレジェンドだから! 流石に失礼過ぎでしょ。すると浅野芽依が二マッとした。


「じゃあ私は若手側なので確定ですね」


 おい! 私の事押してたじゃん! 裏切らないでよ!

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