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声の神に顔はいらない  作者: 上松
328/403

328 声優に年齢なんて関係ない

「ねえちょっと何二人で盛り上がってるのよ?」

「そうそう、何もこの仕事をどうしても取りたいからここに来てるの、あんた達だけじゃないのよ?」


 私と浅野芽依がもみくちゃになってると、ふとこの部屋の別の椅子に座ってる二人の人物が目に入った。それはこのウイングイメージ所属のトップ声優だ。浅野芽依はあくまで今売り出し中であって、今までずっとこの事務所を支えてきた人気の二人。『北大路小萌』『登園大地』二人とも今は売れっ子と言うよりは、大御所と売れっ子の間に位置してるって感じの声優だ。売れっ子の時期は過ぎ去ってしまったけど、大御所って程ではない……みたいな? 歳も私よりもちょっと上か……まあ言いたくはないが、同じくらいだ。なにせ私は既に三十路近いし……女性声優のの旬と言う意味では、私はとっくに過ぎ去ってる。

 それに旬は年を追うごとに低くなってると思うんだ。今はまだ学生声優って珍しいけど、女の価値は若さに依存してるところが有るとは誰もが気付いてる。三十路の声優よりも二十代の声優の方が価値高いし、二十代の声優よりも十代の……学生という付加価値が魅力的なのは世の常だ。それこそそれを乗り越えるには絶対的な人気と地位が必要だ。それを言えば、あの静川秋華だって安泰だとはいえない。


 確かに静川秋華はそこらの女優やアイドルよりも綺麗で美しい。声優なんでやってるの? ってレベルだ。声優で可愛い――と言われる人達って学校一のマドンナってレベルじゃなく、クラスでも4・5番目に可愛いよね……って感じが一番多い訳だからね。そしてどんなに美しくても、人間は老いには勝てないわけで、そして年々レベルって上がってると思う。その内、第二の静川秋華はその内出てくる。

 だから誰でも、それなりの年齢で限界に当たる。北大路小萌さんと登園大地さんは正にその谷間に入ってる。人気声優としての旬は既におわってて、けど大御所でもない。でも人気だったし、若手でもなく、ちゃんとした実績もあるから、ギャラって点では多分私やそれこそ浅野芽依とかよりも単価は高いだろう。それを低くする事だって出来ない。だってそうすると、新人とかにも悪いからね。多分、人気があった人達三十超えて年取って行く如くに本当の技量で勝負しなくちゃいけなくなるんだと思う。

 

 まあ私は既に実力でしか勝負できないけどね。でもそれも今は無理。いや、それは結局私の実力不足なんだけど……結局今の私の実力は権力に屈してるからね。お二人は二十代に散々いっぱいこの業界で活躍してた。このウイングイメージと会社をもり立ててくれた立役者ではある。でも今は目に見えて出演作品は減っている。アイドル的な売り方も今になって……と言う事でやりにくい。潜在的なファンは多分二人にはいっぱいいる。でもそれも作品に出なくなったら、次第に離れていくだろう。

 時々個人的なファンイベントを開いてどれも好調らしいけど、二人はまだこのままおわって行く気はないし、大御所って位置に行くにはまだ終われないんだと思う。このままだと――


「いつの間にかあの声優見なくなったよね~」


 ――って言われて消えていくだけだからね。


「ふふ、久しいじゃないととの。本当に、貴女は好きね。声優って仕事」

「ご無沙汰……です。お二人とも……」


 勿論私もそれなりに長くウイングイメージ所属だ。この二人の事はしってるし、登園大地さんは私の一つ上だ。私の同期は誰も残って無いが、一個前はそれなりに黄金期だった。その中でもトップだったのが登園大地さんだ。私も色々とこの人に学ばせて貰った事はある。それに、印象最悪だっただろう私にも、よくしてくれたし……逆に北大路小萌さんは私が入ったときにはもう会社のエースで声優界でもその当時のトップ集団だったから、憧れしかないんだよね。会社でも話した事なんかほぼない。


「オーディションの枠は二つ。そこの小娘自身が出る気ないのなら、貴方が辞退すれば、それで丸く収まる事なんだけど?」


 北大路小萌さんの鋭い眼光が飛んでくる。確かに枠が二つなら、お二人がいけば、どっちかは確実にオーディションに勝てる確率的には高いかもですね。


「な、何言ってるんですか! 全員年増ばっかりじゃこの会社には売れ残りしかいないのかって印象ついちゃうじゃ――うぐ!?」


 私を押してくれるのは嬉しいが、流石にその発言はヤバいでしょ。てか発言の一番の売れ残りって私だからね。実はディスってるのこの子? 私は浅野芽依の口を防ぎつつ、前にでる。


「私は……引く気はありません!」


 はっきりと目を見てそういう。めっちゃ怖いし、顔だってさっきまで泣いたりしててボロボロ……いや元からとかじゃなくて……とにかく私は自身の勇気を揺り絞って自分の先輩に立ち向かう。

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