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声の神に顔はいらない  作者: 上松
325/403

325 声優として生きるために

 家を飛び出し、電車に飛び乗った。周りには気持ち悪いおばさんが全力疾走してゼェハァゼェハァ肩で息してる危ない人と思われただろう。そう思うとなんか帰りたくなったが、既に電車は動き出した。私は手すり体を預ける。


(そうだ……)


 勢いで飛び出してきてしまったが、流石にマネージャーには伝えておこう。スマホで『今から直ぐ行きます』とメッセージを送っておく。既読は直ぐについたが、返信かくることはない。色々とやってくれてるんだろう。私が言ったときには既にもうおわってる……なんて事になったらただの無駄足だしなんとか長引かせておいて……


(いや、行ってどうするの?)


 なんか冷静になってくると、普通に帰りたく成ってきた。だってきっとそこには別に突撃してくる声優なんていないよね。なのに私が突撃したら、「なんだこいつ」って成らない? 成るよね? そう考えると気持ちが萎えてくる。陰キャだからね私。誰かにどう思われるのか……そんな事をいつだって気にしてしまう。


(いや、いやいやいやいや! ここは……ここだけは引いちゃダメなとこでしょ私!)


 私はそう心で言って自分を奮い立たせる。私は今まで良い子で生きてきたと思う。皆に周囲に迷惑が掛からないように、なるべく小さく、小さくなって生きてきたんだ。それを我慢できたのは夢があったから声優になるって夢。でもその夢でも誰かに遠慮するの? そうなったら、私が生きていける場所なんて無くなってしまう。他の全てには妥協して遠慮したって我慢できる。でも今ここで遠慮したら、私は声優を続けて行くことは出来なくなる。声優業界には入れるけど、それは影として。私としての声優人生はおわる。そんなの売れ入れられる訳がない。だから遠慮なんてしちゃいけないんだ。


 私はこれからする事を考えて服をギュッと握る。鼓動だって早くてドクドクという音がきこえる。電車の音なんて遠いよ。それから時間を掛けて駅へとついて、私は人混みに紛れて、会社を目指す。既に日は落ちてる。一回帰って寛いでた時間だからね。既に日は落ちてる。てか寒い。普通に上着が足りない。


「ちょうどいいじゃん……」


 私はそんな事を小さく呟いて走り出した。街中で走り出す私に好奇な目が集まる。多分集まってると思う。意識しないようにしてるから私は足を緩めたりしない。いつもなら、直ぐに恥ずかしくなって、私は少し早歩きにするだろうけど……そんな事はしない。だって今私は背戸際にいるんだ。私は誰になんと見られたっていい。私はただ……声優として生きたいんだ!

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