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声の神に顔はいらない  作者: 上松
323/403

323 誰もが出たい作品

 まずは電話を切って心を落ち着ける。直ぐに台本がPDFで届くはずだ。今も大体の人は紙の本を会社まで行って貰ってるだろうけど、私の要求を呑んでくれたマネージャーはちゃんと私のやり方に合わせてくれてる。まあきっとわざわざ取りに来たときの為に待ってないといけない時間が面倒だから……とかだろうけどね。でもありがたい。そう言う事をやってくれないマネージャーだっているからね。まあ台本が届くとデータ化しないといけないしね。

 でも最近は元々データで届く場合もあると聞く。そこら辺は統一なんてされてないみたいだけど……でも先生の作品とかは豪華な予算で色々とやられてるだろうし、物も送ってデータも送る位はしてそうな気がする。

 私はワクワクとスマホを畳の上に置いて、その前に正座して待ってる。ちゃんとした姿勢で台本をお出迎えしないと、失礼でしょ。


「…………」


 五分くらい正座したまま経った。まあこのくらいは余裕だ。全然問題はない。私の足はまだまだ平気。部屋はちゃんと暖かいし、大丈夫。狭い部屋には一畳位を占有する暖房器具がある。エアコンの暖房は空気を乾燥させる。まあ暖房とはそういう物だ。石油ストーブとかもそうだしね。どうしたって空気を暖めると乾燥がセットとしてついてる。でも声優に空気の乾燥は大敵だ。なにせ喉の状態に影響してくるしね。だから加湿器が必要だし、そもそも乾燥しない暖房器具があれば……いやあるのだ。オイルストーブとかがそうだね。まあそれよりも良い奴が今はある。結構お高いが、今の私なら買えたのだ。なので今年の冬は快適だ。


 じんわりと……部屋その物があったまる感じ。まあそもそも加湿器も使ってるから乾燥なんて無いんだけど、やっぱり温まり方は違う気がする。そんな熱を感じつつ、自分の中でも熱が滾ってるのがわかる。でもだからこそやきもき……しちゃうよね。ちょっと体がモゾモゾしてきた。それから更に五分……流石に遅すぎる。


「でもなんか催促するのはな……」


 気が引けるというか……なんというか。だってもしも、今まさに送ってくれようとしてたら、私の出した催促のメールに「ちぇっ」って思うじゃん。そういうの余計に考えちゃう質なんだよね。もしかしたら台本は紙でしか届いて無かったのかもしれない。それなら紙をスキャンしなきゃだからこのくらいは……ね。うん、きっと必要。そう思う事にする。とりあえずスマホをちゃぶ台の方へと移して、立ち上がる。


「いちち……」


 ジーンと足が……慎重に歩く事になった私は立ち上がりしばらくその場でとどまる。けどその時、ピロンとスマホが鳴った。


「きた――わきゃ!?」


 私はジンジンする脚で一歩動いたせいで、すっこんろんだ。まあ誰も見てないし……別に良いけどね。とりあえず腕を動かしてちゃぶ台の上のスマホを探して感触だけで握って顔の前にもっていく。スマホの画面を見ると、次の瞬間私は固まった。

 だってそこにはこんな風に書かれてたんだ。


『すまん、ちょっと揉めている』


 なにそれ? 

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