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声の神に顔はいらない  作者: 上松
321/403

321 針は動き出す

 私は家で本を読んでる。iPadに居れた本だ。今やもう全て電子で買ってるから、かさばらずに済むのはありがたい。静川秋華の影の役でそれなりに収入もあるから、これまで我慢してた本とかも変える。あれ? この前、生活水準は変えてないって言ってたじゃんって? 大丈夫、生活水準は変えてない。ただ、物語を読むのは癒やしと仕事への糧なのだ。色んなキャラが物語には出てくる。だからその人達の声を出すのは声優には大切だ。なるべく沢山の登場人物に会いたいのだ私は。


「やっぱり先生の小説はいいなぁ~」

 

 明確にイメージしやすいというか、世界がちゃんとある。そこで人々は生き生きと……だけど必死に生きてる。あがいてると言ってもいい。だからだろう。輝いて見える。流石は出す度にベストセラーを塗り替える前人未到の成し遂げ続ける人物だ。


「私……こんな凄い人と知り合いなんだよね……」


 巻末の後書きを読みながらそんな事を考える。だってよく考えたら夢みたいな事だ。てかなんで先生はこんなにも凄いのに、私は普通にせっしてられるんだろうか? 


「しごかれたからだよ……絶対」


 そう、私は先生の作品のアニメに出たときに、かなりしごかれた。それこそ無駄なプライドだけを持って声優の端っこにしがりついてたあの時の私を、先生は木っ端微塵にしたんだ。あの時の「こなくそっ」て気持ちが今もあるからかも知れ無い。嫌われてるなんて今はおもって無いけど……うぬぼれはしないよ。ただ先生は声優としての私を買ってくれてるだけだ。


「先生の作品なら……」


 ワンチャンあると思う。なにせ先生はこだわりが強い。製作サイドにそこまで口は出さないらしいけど、計画が始動するまでには沢山関わるみたいだし、それに声優は事務所の付与とかそれこそ大きさ……なんて物は一切考慮してない。考慮してるのなら、静川秋華を一つの作品くらいには出してるだろう。なにせイケイケの声優だ。今はそれこそそれでも売れるけど、先生の最初のアニメ化作品なんて、売らなきゃいけない作品だった訳で、そういう時には一番人気の声優がそれこそ絶対に必要だった筈。

 でもその時から、静川秋華は出てない。まあ実際、静川秋華の人気が出てきた時期よりもそれは早いんだけどね。でもそれなら逆に、これから来る声優を使うのはお得だった筈だ。それにクアンテッドは……というか大室社長のあの正確なら、先生の作品がアニメ化するんなら絶対に抑えようとしたはず。それは大手事務所の圧力みたいな物だろう。けど、先生はそれを蹴ってる。なら……先生なら、声優という物をちゃんと見てる。事務所なんかじゃなく、声優の声で決めてくれるって思える。


「でも……そんな都合良く先生の作品がアニメ化するわけないよね……」


 いや先生の作品はもれなくメディアミックスしてるからあるだろう。でも、それが都合良くこの時期に来る……なんて事はそうそうない。そう、そうそう……ね。そんな事を思ってると、私のスマホがヴーヴーと震え出す。

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