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声の神に顔はいらない  作者: 上松
32/403

32 二つって事

「よ、よろしくお願いします……」


 どんどんと尻すぼみになっていく挨拶。私『匙川ととの』は新たな現場へと来てた。バイトテロされたあの日から経った二日である。二日で現場入りって何? つまり台本貰ったの二日前なんですけど? どうやらマネージャーから聞いた話によると、予定してた声優さんが急にキャンセルになったから、候補には残ってたらしい比較的暇で直ぐに呼べる私にお鉢が回ってきたという事らしい。


 まあ理由はあれだが、これはチャンスではある。ハッキリ言ってキャンセルしてくれたその人にお礼を言いたいくらいだ。なにせ仕事を回してくれた訳だからね。でも、そんな甘い考えは現場に来てからなくなったよ。なんか皆さんピリピリしてるんだ。


 私を見てなんか明らかにため息つかれたし、なんか挨拶もそこそこにブースに押し込まれた。こっちは挨拶したのに向こうはしないんだ……っておもった。まあ私は弱小声優だし、そういう事もあるかと思った。驚いたのはブースに入ってからもたった。なんか……とてもボロボロだ。いや、外側もボロボロだったけどねこのビル。

 でも中はまともなのかと思ってたが、ブースまでなんか古い……時代を感じる。今は令和だよね? 昭和に迷いこんだのかな? 壁にはなんかヒビとか染みとかあるし、声優が待機する為の椅子はなんか座る所が破れて中の繊維みえてる。


 それにマイクもだ。マイクはこういうスタジオの顔というか、仕事道具なんだから手入れされてて当然だと思ってたが、どうやらそれは違ったようだ。なんかマイク錆びてる……そしてマイクガードとか穴開いてるし……それはガードとして意味があるのか? と問いただしたい。


 しかもブースと音響さんたちがいる部屋は隔たってるが、見える様にはなどこも鳴ってる。なのにここ見えないよ? ガラス? かは知らないが、透明だったそれがくすんでしまってる。いいの? それいいの? といいたい。


 なんだろうか、なんかそこはかとなく嫌な予感が私を襲ってた。


「なんかいい感じでお願いしまーす」


 そんな軽い声で収録が始まった。他の人はいないのかな? と思ったが、どうやら今日は私だけのようだ。既にこのアニメの収録は五話まで終わってるらしい。そして今日、五話まで取り終わる予定らしい。ちょっと待って、私台本三話分しかもらってませんが? 


 もう訳がわからない。けど、私は疑問を口にするなんて事は出来ずにただ「はい」という機械になってた。元々コミュ障な私にこんな現場の人達に意見を言うなんて無理なのだ。目の前のモニターに表示されてる絵がずっと棒人間なのもグッと堪えて頑張って、取り合えず私は自分が思う演技をした。出来る事を精一杯……とくに声の演技に妥協なんてしない。


 そんな事を思って収録してると――


「うへ~おーくれちったー」


 ――なんか酔っ払いが収録中に乱入してきた。もうなんなのこれ?

次回は17時に予約投稿してます。

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