310 実力を試させて貰おうか!
「スカウトってどんな感じだったのかな? 二人も聞きたいよね?」
そんな風にパリピの二人にふると二人ともクビをブンブン振ってる。これラジオだから、アクションじゃなくて、声をだしてね。
「私、よく路上ライブを見てる……んです」
「音楽好きなんだね」
「いえ、こんなことして何してるんだろうなーっ思って」
冷やかしか。
「それに私目の前では見ません……ちょっと離れてるんです。だってああいうのの周りは怖い人が……多いじゃないですか」
「そうなんだ……まあそんな気もするけど」
私は路上ライブとかあんまり見たことないけど。仕事意外ではあんまり外出しないしね。そもそもが最近はそんなの出来るの? とか思う。
「私はちょっと離れて、口ずさんでたんです。すると同じような人がいて……なんか意気投合したんです。それで色々とお話ししてたら、その人はこの会社の人で……『それなら声優なんかどうだい? 声出すだけだし』って」
「ちょっとそれが誰か教えてくれるかな?」
私はイライラだよ。なにせ声優事務所最大手のクアンテッドに就職してる奴が声優をめっちゃ軽く見てる。それはどうなの? 私自身がそいつに何かを言うなんて出来ない。でも告げ口は出来る。社長に告げ口するぞ。なのでそいつを教えてほしい。
「さ、流石に放送では……」
「う……ん確かにそうだね! でもそれでクアンテッドに入ったの? オーディションとかは?」
「一応……社長さんに許可は貰いました」
「うそ……」
ミスった本心が出た。だって社長って大室社長だよね? 他に誰か居たっけ? いや、多分社長って肩書きの人は一人しか居ないはずだ。なら、私が知ってるあの人の筈。
「本当に社長が許可したの?」
「はい……なんででしょうね」
いやマジでなんでだよ。まさか、この子と気が合ったその人が実は大室社長の愛人とか? それくらいしかこの子を大室社長が会社に入れる理由が……いや、私はこの子の声優としての実力をしらないし……もしかしたら逸材なのかも。
「実はとっても言い声してるのかな? わたしちょっと貴女の演技聞きたく成っちゃった。一緒にやってみよう」
新人にはちょっとハードルが高い要求だ。ついでに暇そうにしてる二人も巻き込んでやろうかな。設定はどうしようか? 三人はお姫様設定にして、私が話しかけて、そのキャラを演じて貰おう。声優を目指す様な女の子はきっと一度はお姫様を夢見て演じてるくらいしてるでしょ。
なので突発的な寸劇みたいなのが始まった。




