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声の神に顔はいらない  作者: 上松
302/403

302 異世界行き拒否家族(仮)PV

 スペースキーを押してPVの再生が始まった。暗転する画面。そして桜の花びらが一つ、また一つと鮮やかに量を増やして舞っていく。そしてカメラは一つのはぐれた花びらを追っていく。それから少しずつボリュームを抑えた曲が流れていく。声はない。完成形の歌までは用意してないようだ。

 まあ勝手にそこまでやられてたら流石にね。問題なりそうだから、曲だけにしてるんだろう。けど、決して手抜きではないだろう。静かな曲調だけど花びらが止まって、その側に誰かの足が落ちてきた瞬間に曲はそのテンポを変えた。まさにイントロが終わってAメロに入ったみたいな感じだ。


 そこからは静かだった曲調はアップテンポに変わってる。そしてその足の勢いで桜のはなびらが再び舞う。慌てて現れるスーツを着ようとしてる男性が自分が思うに主人公だろう。さえないが、陰キャって訳ではなく、人の良さが見えるみたいなキャラデザは納得出来る物がある。

 自分の中のイメージと重なるからこそ、一目見ただけで『彼』だとわかった。多分場面は朝だから慌てて出社してる感じなんだろう。彼を追っ手花びらが続く。ちょっと古めかしい日本家屋の室内の描写も雰囲気ある。そして台所には大きなテーブルに用意された食事、そして金髪リーゼントのヤンキーみたいなのが現れる。そいつは楽しそうに卵焼きをやいていた。


 そしてそこにはこの家にいるメンバー全員……いない。とりあえず元気な爺さんと、金髪幼女が楽しそうに朝食を食べていた。更にタンクトップの女性が一人。その人は朝食をとりながらも、ダンベルを上下にうごかしてた。いきなり濃い映像になった。でも料理をしてる彼から、更に老人、そしてダンベル女、最後に幼女と行くことで爽やかな映像にしてる。この風景だけで、家族を一通り見せてるのは上手い。朝食ってのもPV的にいい。なにせ朝食って一日の始まりじゃん。


 その描写をPVに使うって事は多分、作品の始まりを期待させる為なんだと思う。でもまだ終わりじゃない。彼は口にパンを突っ込みヤンキーが作った弁当を貰う。幼女にヨシヨシして、ゴミを担ぐと廊下へと出る。そのさい勿論花びらもついていく。そして玄関で靴を履こうとしたところで、花びらが階段の方へと流れる。それに合わせて視線が動く。階段を上がる描写。そこは今までの淡い色使いの世界とは違ってとても暗い。そして一つの扉の前でそこで彼は『行ってくる』という。そして彼が階段を降りる音が響くと共に、扉の向こうの部屋へとカメラが流れる。そこには一人の少女。


 それからは白い空間に居る見知らぬ人々。二つの光の中には文明が未発達の世界とこの世界があった。声はないからこれで伝わるのかは微妙ではある。これだけ見た人はこの映像の意味がわからないだろう。それに皆さっきまま手の姿とは違うんだ。

 だから普通に見ると別人だ。でも一人の男がこの世界を映す方へと背中を向けて走る。その過程で姿が変わっていくのを見せていた。


(上手いな)


 単純にそう思った。そしてパパパとそれぞれに関係する描写を転換させていき、最後には花びらが空へと上がっていき、タイトルドーンだ。そしてPCの画面が暗転する。これでPVは終わったみたいだ。自分は暗くなったPCの画面に映る顔をみた。

 その顔は、なかなか良い顔してた。そして自分自身に言われた気がした。


「いいんじゃないか?」


 って。

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