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声の神に顔はいらない  作者: 上松
301/403

301 勝負は妥協した奴が負けるんだ!

「とりあえずPVからいいですか? やっぱり動いてるのって気になるので」

「ええ、是非見てください! 俺達の魂の結晶です!!」


 俺は望むところだ! という気持ちでそう言う。本当なら最初に先生とコンタクトを取ったときにこれを見せる気だった。それが出来れば、こんな場は必要なかったのかもしれない。いや、もしも先生が慈悲深く無かったら、俺の監督としての度量を疑ってるんだから、この場自体がなかった可能性は高い。

 なにせ先生は大人気作家だ。こんな場を用意するのだって大変だろう。いつ潰れるかもわからない会社の社長とは違うだろうに、先生は時間を作ってこの場を用意してくれた。


 それはとても慈悲深い事だ。それに支払いも持って貰ってる……それはもしかしたら、もしも断る時とかにも遠慮とかをなくす為とかなのかも知れないが、上手くいけばこの場での食事もお祝いみたいな物になるんだろう。手切れ金になるか、祝い肉になるかは自分次第。


 俺はPCを先生の方へと向ける。既に動画は立ち上がってる。後はスペースを押せば良いだけだ。と、まてよ。


「先生、これもどうぞ」


 俺は更に鞄からヘッドフォンをとりだした。しかもノイズキャンセル搭載の良い奴だ。幾ら良い店といえ、ノイズが何もない訳じゃない。


「用意が良いですね」

「それは……当然ですよ」


 そう、これは先生の為ではない。俺の為だ。せっかく勝負を賭けた映像を見て貰うんだ。別の物に意識を取られたりしたくない。それだけで評価が落ちる事だってあり得るんだ。そんな事を防ぐ為のヘッドフォンだ。自分の手数を上げる為にはこのくらいは当然だろう。どんな環境で観るかってのは案外重要だ。


 映画館で観る映像と、家のテレビで観る映像では印象が変わる。そういう物だ。幾ら昨今のテレビが大型化してると言ってもそれでも50から60インチとかだろう。大きくて70。海外ならもっと大きくなってるかも知れないが、日本の家屋事情ではそこら辺が頭打ちだろう。それに対して映画館なら300インチとかだ。どうあっても及ばない。

 まあ流石にここでその迫力は無理だ。なにせPCの画面は15インチだ。テレビよりもずっと小さい。でもスマホよりはいい。そして映像だけじゃなく、音も大切なのは自明の理。その為のノンズキャンセルヘッドフォン。先生はヘッドフォンを装着して有線でPCと繋ぐ。少しでも音をよくするために、有線だ。昨今の有線と無線でそこまで変わるかはわからないが、絶対的に有線が音的に有利なのはまちがいない。


 そして一点を稼ぎたい今の状況、無線は選択肢になかった。あのヘッドフォンは無線ヘッドフォンなんだが、線もつけられる。だからあらかじめ線をつけて渡せば、先生ならPCに接続してくれると思った。


 そしていよいよ、先生がスペースキーを押してPVを再生しだす。その時間は僅か一分三十秒。アニメのOPと同じ秒数だ。俺はその時間を固唾を飲んで待っていた。

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