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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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299 人間性に惚れること

「上手くやったみたいだですね。これなら、こちら側もあなた方に作品を任せても良いと――そういう判断がされました」

「本当ですか!!」


 肉をたらふく食った酒井武夫がそう言って思わず立ち上がって叫ぼうとして、声を押し殺して喜びを噛みしめてる。ここは高級店だ。だからこそ大きな声は迷惑になると思い出したんだろう。そこら辺気が回せるんだ。でも……その喜びを自分は一回落とす必要がある。なにせ判断はされたけど、ゴーサインを出したわけじゃないんだ。

 自分はまだ、認めてはない。自分はこの人に任せられる……と思えるだけの理由が欲しい。


「は、早く野村の奴に連絡を――」

「待ってください!」


 野村さんに連絡しようとする酒井武夫を自分は制止させる。このまま報告されると困る。だってまだ決定じゃない。こっちにも覚悟って奴が必要なんだ。これまでやってきた決まりを壊してまで彼に任せたいと思える……それだけの理由が必要だ。


「落ち着いてください。確かにそちらは条件をクリアしてくれました。それはとても凄い事だと思います」

「ああ、まあ、それほどでも……」


 なんとか最初は「んなこたぁない」みたいな態度で貫こうとしてた酒井武夫だが、途中でうれしさが隠し切れてなかった。なんか胸が痛むが、これは避けては通れないことだ。なんたってアニメ化されるのは自分の作品なんだ。中途半端なことしたくないし、自分の作品だからこそ、大きく羽ばたかせたい。でも、その可能性がまだ自分には酒井武夫に対して見えてない。

 アニメーションは監督だけで作る物じゃないってのはわかってる。けど、その作品の方向性やら、作品の質はやっぱり監督の腕の見せ所だと思う。なにせあの監督だから……という理由で引き受けてくれるアニメーターだっていると聞く。アニメーターだけじゃない、誰もが監督について行かなくてはならない。その監督を見誤る事は、こちら側の責任で、そして一番最初の失敗になり得る。


 なにせ監督は簡単には差し替えなんてできない。作画監督やらなんやらの人達は色々な都合とかなんとかで入れ替わりは激しい所だけど、監督となるとね。監督にはそれぞれ方向性とかがある。監督が替わると言う事はアニメが変わる事に等しい。勿論原作有りなら、大元が変わる事はないが、絶対に同じ物は作られない。

 

 だから自分達は見極めないといけない。この監督に本当に任せていいのかなと。自分はとりあえず姿勢をただす。そしてそれに対して酒井武夫も真面目な雰囲気を感じてか、姿勢を正した。同じ肉を突き合って、この人が大胆でデリカシーとかがなくて、上下関係にも疎いのはわかった。

 なにせ、肉食ってると直ぐにため口になる。でも他人を気遣える心はあるようだ。最低限だけどね。基本自分優先だ。でも個性はそれだけある。なんかそれぞれ適当に肉を焼いてるようで、色々と試してるみたいだった。自分が美味しい肉の焼き方を教えても、それだけで食おうとはしない。

 常に何か試してる……みたいな? そういう所はきっとクリエイターなんだろうとおもった。でもそれだけじゃわからない。だから自分は告げる。


「でも、それだけじゃ自分の作品を任せる事はできない。だから、貴方に任せたいと思わせてください」

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