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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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296 社会はズルい奴が上がってく

『お前は金が必要なのだろう? 昨日、お前は金を寄こせ寄こせと五月蠅かったぞ。だがこちらもタダで金だけやるなんて出来ないからな』

「金だけ出して、後は勝手にやるんだ。楽でいいじゃねーか。お前は何もしなくていい。心配するな問題ない」

「はは、お前は酔ってても酔って無くても同じ事をいうな」


 おい、酔った俺も同じ事をいってたか……素面でなんも変わらないじゃないか! 会社の一室で俺は自身のバカさ加減に頭を抱える。学なんて無いんだ。仕方ないじゃないか……泣き言言ってる場合ではないが……


『それに、お前のプランでは先方は納得してないから、窮地に立ってるんだろう? 違うか?』


 ぐうの音も出ない真実だ。俺と会社には信用という物が欠けている。なにせ一度も元請けでアニメを完成させた事なんてないからだ。ずっと下請けの会社の初めての元請け作品。それに大人気作家の人気作品を求めるなんて贅沢なんだろう。


 だが、俺には……いや会社にはこれしかなかった。確かに全く無名の作品を引っ張ってくる方が楽だろう。こんな交渉が難航なんて為なかったと思う。だが、それじゃあ……俺は頭を振って電話に集中する。厳密には電話の向こうの奴の言葉に……だが。


「違わないが、何が言いたい? 昨日、何を決めた?」


 じわじわとこっちが追いつめられてるって事をいって追いつめてきやがって、そこら辺は昨日で充分こいつはわかってるだろうに。さっさとこいつがどうする気なのか、言いやがれ。


『別に、俺的にはお前の所と組んでもいい』

「なに?」


 スマホが思わず手から滑り落ちるかと思った。それほどに衝撃だ。まさかこいつが俺と組んでも良いなんて……


(いや、騙されるな。それだけ……なんて訳がない)

「条件はなんだ?」


 俺はすぐさま気持ちを落ち着かせてそういった。昨日そこら辺も言ったのか知れないが、俺は憶えてない。一応最低限、これだけはってラインを俺は野村と共に設定してた。それがダメなら、こいつと組むなんて事は出来ない。出来ないが……それが許されるかどうかは昨日の俺次第だろう。昨日の俺が酔った勢いでどれだけの事をいったか……てか本当なら、先生の作品だって事だってばらしたくなかった。

 最初からこいつは気付いてるようだったが、それでもこっちが認めずに、そして資料だって見せなかったらしらを通せた。けど、既に先生の作品を狙ってるのは完全にバレてる。それだけでこっちに取ってとは脅しの材料にされるんだ。既にこっちに拒否権がないような……弱気になるな俺!!


『予算の足りない部分は補おう。スタッフもお前の所だけではたりないだろう? 格安で派遣してやるよ。それに別に口出しはしないさ、最高の物を作ってくれればいい。ただ――』


 ここまでは最高の条件。でも……


『――製作会社は家だ。お前が思うように作っていいが、クレジットでは貴様等は第二製作会社だ』

「お前! 俺達の手柄をぶんどるつもりか!!」

『おかしな事を言うな。俺もお前も良い作品を作りたいだけだ。違うか?』


 ギリ……俺はスマホを潰すくらいに握りしめてしまってた。

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