表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声の神に顔はいらない  作者: 上松
277/403

277 原作を愚弄してるわけじゃない

「それで今日のお話と言うのは?」

「お忙しい中、更に先生にぶしつけな事を言うのをお許しください」


 うーん、かなり酒井武雄は無理してるね。なにせ一回りくらい自分は彼よりも多分年下で、そんな奴にこんなに頭を下げるなんて……でもそこには卑屈な感じはない。寧ろその目はメラメラと燃えてると感じる。


「大丈夫ですよ。一応色々と覚悟してきましたし。そちらが自分に接触を図る理由は、自分の原作……ですか?」


 自分は小説家だ。そして彼等はアニメを作る側だ。なら彼等が求めるものは一つだけだろう。


「私達は、貴方の原作でアニメを作りたい! 作りたいんです!!」


 酒井武雄は言い直して頭を下げる。既に土下座である。そして更にもう一人、野村さんは鞄からパソコンを取り出してた。とりあえず何かあるのかと思ったけど、今は酒井武雄の方に集中するか。きっと準備が出来たら声をかけてくれるだろう。


「なんでそこまで? 別に原作なら幾らでもあると思いますけど?」

「それは……」

「やっぱり人気とかですか?」


 自分でそう言う事を言うのは気恥ずかしい。でも彼等の状況を考えると、人気もない原作を使ってそれでアニメを一山当てるのと、元から人気の原作を使って挑戦してみるの……リスクは当然後者の方が低い。彼等には後がないんだ。


 だから次のアニメでこける事は出来ない。なら、求める物は確実に一定数の売り上げが見込めるアニメ原作――と考える事が出来る。まあこっちにしてみたら、良い気持ちではない。そんな思惑なら……だけど。そうじゃないかなって思ってるが。


「違う!」


 酒井武雄は力強くそういった。顔も上げて、真っ直ぐにこっちを見つめてくる。目を逸らさないから本心とは思わない。逆に本心を隠すためにそういう風にする大人は沢山居る。でも酒井武雄はそこまで器用では無いと思う。


「違うんですか?」


 自分はチラッと野村さんを見る。すると彼は顔を剃らした。うん、多分その思惑もあるね。


「確かに会社の利益も考えた。だが、作品自体に惚れたのも本当だ!!」


 そう言って酒井武雄は自分の荷物から一冊の本を取り出した。ボロボロの本だ。タイトルは『異世界行き、拒否家族(仮)』確かに自分の本。


「こんなに成るまで……ちょっと中を見ても?」

「どうぞ」


 ボロボロの自分の本を受け取る。最初はライトノベルとして出してたけど、後でハードカバーでも出ることになった作品だ。まだ完結してないから、映像化は慎重になってるんだよな。酒井武雄が出してきたのはライトノベル番だ。


 ライトノベルだから挿絵がある。そして登場人物の名前……その下にはCVが書かれてた。うん……まあいいよ。更に目次を経て文章にいくと、行き成り赤線で文字が潰されてた。なるほど……酒井武雄は本自体に色々と書き込むタイプの様だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ