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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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27 天啓

 一週間くらい、部屋から出なかった。まあだが作家には珍しい事じゃない。作品を書く上で筆が乗ると止め時という物を見失うんだ。まあだが一週間も碌なものを食わずに作品に没頭したのはここ数年なかったことだ。コンスタントに作品を上げてたわけだが、ここ最近で一応数年続けてた連作が完結したのも大きいな。


 こんなに自由に時間を今までは作れなかった訳だし。だが今ならそれが出来た。詰まってる仕事がないからだ。こういう時はリフレッシュとかをやった方がいいんだろうが、やっぱり自分は作家なのだ。ついつい自分の中のアイディアをアウトプットしたくなる。


「うう……あぁ……」


 変なうめき声が出る。なんかいつから椅子に座ってたのかわからないくらいだったから、体が座った態勢で固まってしまって全身が痛い。伸びをしようにも体が痛くてできないし、とりあえず何か飲み物でも飲まないと喉もカラカラだった。


 腹は背中とくっつきそうだし……我ながらこの状態はヤバイとわかる。だけど上手く体が動かない……固まった体は椅子に躓き、床にごっつんこする羽目に。でもなんとぶつけた頭とかよりも態勢が変わって全身ボキボキと鳴った全身の方が痛いんだからこれは重傷だろう。


「はふゅーはふゅー」


 変な呼吸が口から洩れる。別に特殊な呼吸方を実践してる訳じゃない。そんなのは会得なんてしてない。ただなんか体がおかしくて変な呼吸になってるだけだ。これはマジでヤバイ感じだ。

 なんか視界がかすんで来た気がする。マジでヤバイ……これはもう救急車とか呼んだ方がいいんでは? ってレベルだ。


 なんとか手を動かしてポケットとかの部分に手を持っていくが、そこには無慈悲な現実があるだけだった。


(そうだ……スマホは机の上だ……)


 ポケットとかに入れてると振動とかが煩わしいからな。家では必ずどこかに置くようにしてる。目に入る場所にな。移動するときには持っていくようにしてるんだが、流石に今の状態ではそんな余裕はなかった。自分は首を動かして自分の机を見上げる。


 なんて事だ……いつもなら何も感じない机が、遥か高みを頂いてる様に見える。そのスケール感や否やまるで藤さん? チョモランマ? いやはやエベレストまでいくかもしれない。大袈裟だと思うなかれ……今の状態の自分には本当にそう見えるんだ。


 弱ってる状態で山に……それも富士山やチョモランマやエベレストに登れるだろうか? そんなのは自殺行為だ。だが、このまま手をこまねいても死が近づいてる気がする。


(どう……すれば……)


 今の自分は地を這う芋虫だ。本当にほんのちょっとしか移動できない。視界は揺らぎ、体には力が入らない。いや正確には入れようとすると痛い……それでもなんとか動かしたとしても芋虫並み……


(これは……死んだな)


 そう思った。けどその時だ。ガチャリと玄関のドアが開く音がきこえた。そして聞き覚えのある声がさも当然の様に聞こえる。


「ただいまですせんせーい。可愛い可愛い彼女がやってきましたよ~」


 いつもならふざけるなという所だが、この時ばかりは奴の図々しさをありがたいと思ってしまった。


「わっ、先生何やって……大丈夫ですか? 先生!」


 この時初めて静川秋華が見た目相応の存在に見えた。

次回はちゃんとあげたいです。忘れ無ければ。

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