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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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267 いけ好かなくても後輩だから

「せんぱーい、干されてるっ本当ですか?」

「はい?」


 なんかラジオ収録終わりに浅野芽依の奴が信じられない事を言ってきた。何こいつ? 一番デリケートな問題をそんな明日の休み? 位のノリで聞いてくるの? てか干されるってかなり大問題なんだから声を抑えなさいよ。いや、ここの現場の人達は大丈夫だろうけど。なにせどんな収録場所よりも距離が近いし。自宅の他で一番安らぐ場所だと言っても過言じゃない。


 いつものキッチンの椅子に座ってお茶を飲んでる。今日は暖かい緑茶だ。別に寒い訳じゃない。ちゃんと暖房は効いてるしね。でもやっぱり熱いお茶って落ち着くじゃん。緑茶を飲んでると日本人だと確認させられる。まあ心臓はバクバクだけどね。


「それってどこで?」

「うーん、なんかたまたまですね」

「たまたま?」

「はい、私それなりに売れっ子じゃないですか?」

「まあ……うん、本人がそう思うんならそうなんだろうね」


 なんかわざわざ勘に障る言い方をする浅野芽依に私はそう返す。言葉の節々に自慢を入れるのはうざったいよ。そんなんだから同性に嫌われるんだよ? 友達は沢山居るようだけど、実際浅野芽依に親友とか呼ばれる友達は居なさそうだよね。

 まあそれは私もだから、そこら辺は突っ込めないけど。


「ある現場でですね……私聞いちゃったんですよ。先輩の名前なんて誰も知らないから直接じゃないですけど、クアンテッドが動いてるって」

「ちょっと毒吐かないでよ……」


 こいつは自慢と他人への毒を遠慮なしに吐くのやめてくれない。そういう所だから。


「わたしと先輩の仲じゃないですか。私普段はとっても良い子ちゃんなんですよ? だから疲れちゃって。猫被らなくて良いここは癒やしなんです」

「私の癒やしをとるな……」


 ここは私にとっても癒やしなのよ。それを潰しに来てるのはアンタだ。まあなんか浅野芽依とはこんな会話ばっかりしてるから、こいつとだけはつっかえずに喋れるようになってしまったけど……でもこいつは友達とは言いたくない。だって簡単に友達だとしても売るような奴だと思う。自分のためなら。

 浅野芽依はそう言う奴だ。そしてそれがバレた時は「友達だから許して」とか平気で言うと思う。


「それでクアンテッドが動いてるってのは?」

「そのままの意味ですよ。業界では直接干されてるって言わないでしょ。クアンテッドなんて最大手が動いてるって事は、大きな事が動いてるって事らしいですよ。色んな現場で試しにクアンテッドの名前を出して見たら、スタッフの人達、ちょっとぎこちなくなるんですよね。そこで色々と情報を集めて見たら、どうやらクアンテッドの標的は我らウイングイメージみたいです。

 そしてウイングイメージでクアンテッドに関わってるのって先輩くらいじゃないですか。なら先輩かなって」


 こいつ……そこらの頭ペラペラな女のようで案外考えてるじゃん。まさか、浅野芽依がそれに気付くなんておもって無かった。これは……どうしたらいいの? 浅野芽依はそれなりに売れてるが、それはそれなりに居る声優の一人でもある。こいつ自身に何か力があるかと言われると……ない。クアンテッドが動けば、浅野芽依まで巻き添えになるかも……それは流石にいけ好かない後輩だとしても、可哀想だ。


「それで……何を言いたいの?」

「はい、ご愁傷様ですね!」


 何やら手を合わせて拝み出す浅野芽依。なのに声は楽しそう。こいつを案じた私がバカだった。

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