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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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259 獲物をいたぶるのが好きなんですね

 カターン……カン――カン……


 私は大室社長の言葉を聞いてショックを受けた。そしてするりと手から滑り落ちたスマホがそんな音を鳴らしたんだ。不味い! と思って私は急いでスマホを追った。けどそのスマホが落ちて滑った先は私が身を隠してた角の先で……


「匙川さん……」


 バレた……今のを聞いてたと思われただろうか? カツカツとヒールを鳴らして大室社長が近付いてくる。私の心臓はバクバクと鳴っていた。大室社長は私の前で立ち止まる。ヤバい……上を見れない。私はスマホを拾った姿勢のまま固まっていた。


心臓が口から飛びだすとはよく言った物だ……正に今の私がそんな心境だ。大室社長も腰を落として私の肩に手を置いた。そして頭を近づけてきて耳元でささやく。


「よくやってるわよ貴方。私感謝してるの。これからも頑張ってね」


 そう言って大室社長は歩き去って行く。私はそれから一体どれくらいそうしてただろうか? わからないけど、三分くらいはそうしてたかもしれない。


(今の……多分聞かれてること前提で言ってたよね?)


 大室社長はたとえあれを聞かれたとしても、別段全然良いって感じだった。その上で、私が直前の電話での会話を聞いてる前提で大室社長はいったんだ。


「それでも……頑張って……」


 怖い……と素直に思った。体が震える。私は急いでこのビルから立ち去った。でも急にもうやりません……なんて言えない。どうせこの関係は静川秋華が完全復帰するまでの物だ。ならそこまで……頑張れば……


「でも、この間のオーデションは大室社長に潰される……」


 それは大室社長に回されてきたオーデションだけなのかな? とふと思った。もしかしたら、ここ最近で私が受けてるオーデション全部に大室社長の手が回ってるとしたら? それがないなんて言えるだろうか? だってクアンテッドは大手だ。それだけの力がある。なんか波が止まったみたいに事務所の方からはなってたような……こっちに編重しつつある……とは思って長けど……まさか……


 私はイヤな余寒を憶えつつ、マネージャーにLINEを送る。いや、ライン上でも良かったけど……流石に……ね。会って話したいと思ったから、私は「都合の時間はありますか?」と送った。すると「今なら事務所の方にいる」って帰って来たから私は事務所へと戻った。


 流石にそんな事は……そこまでなんてしない……なんて思いたい。けど、私の胸には大きな不安がくすぶっていた。オーデションは結局実力……それにタイミングとか何を先方が求めるかとかある。だから仕方ないとは思ってる。でも……もしも……もしも、そんな中に別の思惑が入って来てるとしたら……私は何かから逃げる様に怯えて事務所までの道を急ぐ。

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