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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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243 君を数ある星から見つけること

「へえーそれは面白い」

「言うなよ?」

「言わないさ。なにせ相手はあのクアンテッドだ。俺の会社なんて潰されるだけさ」


 自分はちょっとオシャレな居酒屋で『桐生直孝』の奴と食事をしてた。まあ自分が一番心許せる友達はこいつだからな。なにせ昔からの知り合いだし、自分が有名になる前からの仲だから信頼できる。今や地位と名誉……なんて言うと奢ってると思われるかも知れないが、実際の所、今の自分はそれを手にいてしまってる。だからこそ、自分には極端に友と言える者が少ない。なにせ有名になった時、色々とあった。本当に色々と――だ。

 そんなに仲良くなかった大学の友達から連絡が来たり……いやそれはまだいい。そもそもが知らない奴から一杯連絡が来たりした。どうやら自分の連絡先が出回ってたようだ。なのでスマホを変えて、更に電話番号だって新規にするしかなかった。後は知らない親戚から連絡が来たりもするようになった。まあ親戚とかどうあっても逃れられないから、もう無視を決め込んでるが。それでも色々と人間関係が変わったのが確かだ。


 今だって実家の方に帰りたくないし。名声とかお金とか、そういうのが大きくなれば成るほどに、なかなか他人を信じられなくなる。それは仕方無いことなのかもしれない。だから自分には友人と呼べる者は片手で数える位しかいない。桐生直孝はその中の一人だ。アニメ会社の上級役員の彼は業界的にも近いところにいるし、話し相手としては丁度良い。今日まで頑張った情報を疲労するには良い相手だろう。


 無闇にネットに書くことでも無いしな。実際、これが漏れたら再びクアンテッドが炎上しそうだしな。今もクアンテッド関連はなかなかに香ばしいことになってる。秋華の奴が怪我して最初の時期はそれこそ秋華の怪我の原因がスキャンダルかなんかじゃないかと騒ぎ立ててた。でもそこら辺は強引にクアンテッドがもみ消したというか、上手くやったらしい。でもその怪我でもクアンテッドは静川秋華を酷使してた。


 まあキャンセルできない仕事もあったんだろう。でもその姿勢がブラック企業だと叩かれてる。まあ実際、静川秋華の姿は痛々しかったからな。それなのに付き人をつけてまで仕事をさせるその姿勢が『ブラックだブラックだ!!』と言う事に。このネタはそこに更に燃料を投下する事になるだろう。まあしないけど。クアンテッドは声優を偽って仕事をしてる……なんて事になったら、更にヤバい批判になるだろうし。別に自分はクアンテッドをどうにかしたいわけじゃない。


(それに、秋華の奴が今の地位から転げ落ちるのは……な)


 別にそれは秋華のことを思っての事ではない。あいつが自分の事で自重――あれでも自重してるのはあいつはそれなりの立場にいるからだ。立場が人を作るともいうしね。だからこそ、今の地位、声優業界のトップという地位から落ちたらあいつは嬉々として自分の家に入り浸ることだろう。なにせしがらみがなくなるんだ。それはとっても、そうとっても困る。


「まあけど、お前の執念もなかなかだけどな。そんなにその声優が気になるのか?」

「気になるっていうか、懸念だよ。このままクアンテッドに囲い込まれるのは困る」

「でも彼女、別の事務所だろ?」

「そうだけど……」

 

 クアンテッド社長の大室社長はかなりのやり手である。それに業界最大手、はっきりいっな彼女のためを思うなら、良い事なんだ。でも……いや、これは自分の都合だけど……


「あそこの社長、苦手なんだよな」

「はは、あのおばさん、怖いからな」


 自分の言葉に桐生直孝は盛大に笑った。うるせえ。てか匙川さんに最初に目をつけたのは自分だぞ。横からかっさらわれてはかなわない。勝手だけど、自分の作品の声優として勝手に名を借りてるからな。彼女が有名に……これでは成らないが、知られるのは嬉しいんだが、大室社長は懸念材料ではある。でも……彼女にどう気をつけろというか……自分と匙川さんの関係って何だろう――から。

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