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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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238 小市民な私と悪魔の契約

 クソッタレめ!! ――なんて心で思ったけど、冷静に考えると、私と静川秋華の価値の差はそのくらいあってもおかしくはないと思える。そもそも自分にこの百万の価値があるか……と言われて「有ります!! 自分の価値は百万円です!!」って自信を持って言えるかと問いかけると、自信が無い。だって百万円は大金だよ? 確かに百万円は手に入らない額では無い。今の私でも切り詰めて、色々と頑張って貯金すれば見える金額でもある。

 でもだからこそ、逆にリアルな大金って感じがする。正直一千万とか紙二枚貰っても実感がね……それに比べで百万円と言う数字の重みよ……寧ろ一千万の時より震えてるまである。百万の小切手と何の数字も書かれてない小切手。どっちを受け取るか……いや、これを受け取ってしまっていいのだろうか? 一兆円って掻き込むのは流石にない……でも下手にこの人に逆らうのもヤバいんだよね。


 私はお金は人並みに好きだ。だってあって困る物ではない。寧ろあったら豊かになれる。でもこれは、私の価値を決められた金額で、そしてもう一つは私がそうありたいと思う姿の価値の金額ではないだろうか? 現在と……そして未来。まあ実際、今の私には百万円の価値はない。それは自分で認めるよ。きっと釣るために大室社長は私の価値を高くつけてるんだろう。それでも現在が、ここだというなら……そして、真っ白な紙に未来の私の価値を書かせるとしたら――


「私は……受け取れません」

「どうしてかしら?」


 ヤバい、間髪入れずに聞いてきた。それもさっきよりも声のトーンとが低くなってる。怒ってる? 怒ってるの? 私は必死に視線を逸らす。だって見れないよ。とりあえず私は飲みかけのココアだけに視線を集中した。やっぱり貰っときます――って言った方が良い? でも……それは……今更言ったら格好悪い。


「私は……声優です。お金だけで動く人間じゃ……ないんです」


 ボソボソとそんな事を私は行った。はっきり言おう……やけくそだった。いや、受け取らないって自分の中で決めたけど、別に明確な断る理由があったわけじゃない。普段なら飛び付いておかしくないけど、今の私には一千万があるっていう心の余裕があったのも大きい。そしてこう何回も大金を提示されるとね……ちょっと冷静……にはならないが、疑念くらい湧く物だ。それにちょっとは静川秋華が私の事便利そうだからキープしてたみたいなのはちょんとムッときた


 いや、私も静川秋華との関係は複雑で曖昧でよく分からない。歩みよろうと思ったら、危険な内面みせてきて引かせてくるし……けどやっぱり自分に持ってない魅力を一杯もってて、憧れはあるわけで……ちょっとした、ほんのちょっとした自慢くらいには心の隅でおもってた事もある。だから……


「分かったわ。秋華の勝ちね。お金よりも仕事が欲しいと。確かに秋華の代役させるだけじゃ、上を目指す物としては満足出来ないわよね? それにこんなはした金、昇れば勝手に転がってくる物」


 そう言って、大室社長は私の前に差し出していた百万円の小切手を自身で破り捨てる。その瞬間心の中で「あぁ~」とか悲鳴上げたのは内緒だ。私は所詮、小市民なんです。

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