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声の神に顔はいらない  作者: 上松
228/403

228 仲間と書いてライバルって読む!!

「ちょっ!? カナン!」


 廊下でちょっと話す程度かと思ってたら、なんかスタジオの結構奥まった所まで連れて来られた。ここまで来たことない。なにせこのちょっと前にトイレがあるから、行くとしてもそこまで何だよね。大体いつも行く場所って固定化されてるし、探検とかそんな冒険心はない。私は現場を探検するよりも、人の心を探検してるからね。うん、なんか上手いこといったぜ。なんて、今はそんな事を言ってる場合ではない。

 実際結構追いつめられてるから、変な思考進んでいくのかも……トイレの先はロッカーがいくつか並んでて、そして段ボールが積み上げられてるそんな場所だった。使ってあるんだろうか? よく分からない。まあこの先は何もないし、トイレもちょっと前にあったから、完全にここには人が来ない。そう言う場所だ。カナンは私の腕を掴んだまま、立ち止まってる。こっちに振り向こうともしない。


(まさか……焼き入れられる?)


 私は過去の経験からそう思った。私は学生時代に虐められてた……とかは無かった。何せこっちがやられる前にやる方だったし。正義感を振りかざすよりも、私は周囲に併合することで自分を守ってたんだ。そういう処世術。もちろん積極的にイジメをやってたなんて意識はない。ないが……もしかしたら恨まれてるかも知れない覚悟くらいはしてる。そして女子ってグループ作るのが好きだ。

 好きというかもう本能と言っていい。だからグループ同士の対立ってのがある。ちょっと行きすぎたりすると、言葉だけじゃなく手が出るなんて事も……女の子が誰もがおしとやかで物腰が柔らかいなんてのは童貞男子の妄想だ。そして私はその経験を元に、カナンが相当お怒りになってるのでは? と思った。なにせ、カナンは速攻終わらせてたしね。私がいつまで掛かってるんだって思っても不思議じゃない。


「――かえそうよ」

「え?」


 ボソッといったカナンの言葉を私は聞き逃した。なにせそれだけ小さかったからだ。決して私が考え事をしてたせいじゃない。するとカナンは振り返ってサイドにまとめた髪と共に、耳につけたピアスが揺れる。


「見返そうよ! あの人を!!」

「見返すって……どういう事?」


 行き成りそんなことを言われてもね。そう思ってるとカナンがズイッと顔を寄せてくる。ちょっ!? 近い。美人の部類に入るカナンの顔がこの近さは毒なんですけど。ついついひっぱたきたくなる。だってめっちゃ肌とか綺麗だし。


「芽衣だって分かってるでしょ? あの人は芽衣に悪いイメージをつけさせる気よ。そうやって、ちょっとずつ周囲を自分の意見に同調させていく気みたい。さっきあの人、なんて言ったと思う? もっと良い子がいるんだけどな~だよ!! 私達はこの三人で『トゥモローエナジー』なのに!」


 そう言ってとっても悔しそうなカナン。そんなカナンを見てたら、なんか毒気が抜かれる気がした。そして「ぷっ」と吹き出す。


「ちょっと笑ってる場合じゃないわよ」

「分かってる」

「なら!」

「大丈夫だから。私は大丈夫」

「芽衣……」


 不安そうなカナンの目。カナンはグループとか初めてじゃない。声優のグループなんてアニメに合わせてそのメインで組んだりしては解散してってよくある。だからカナンがこのグループにこんなにこだわる理由なんてない気がする。でも……こいつはそう言う奴なのかも。


「だって私はあんた達を踏み台に超売れっ子になるんだから! こんな所で邪魔なんてさせない。私は絶対にこのグループから卒業なんてしない。こうなったら、私の真の本気をみせてやるわよ!!」


 私は浅野芽衣。その名を声優界に残す……そんな声優だ!!

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