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声の神に顔はいらない  作者: 上松
219/403

219 そう、意思疎通だって出来る――iPadならね!

「おっはようございまーす!」


 そんな元気な声と共に浅野芽衣が現れた。今日も今日とてラジオの打ち合わせである。ラジオ自体の収録は一週間に一度だけ。収録というか、生ライブをしてる。生だからこそ、失敗は出来ない。失敗も生の醍醐味だって言う人は居るだろう。そう言うハプニングは確かに生っぽいとは思う。けどね、やってる側からしたらイレギュラーの何物でも無いのだ。そう言うのは極力無くしていきたいってのが現場の声としてある。

 だからこうして密な打ち合わせは必要なのだ。まあ最近はラジオの形も定まって、内容も精査されてきた。どんな物がリスナーに受けて、どんな物を求めてないのか……それが分かってきたから、このラジオの内容も固定されてきてはいる。


 前はよく分からない企画をぶっ込むってのはよくあった。私がアニメのキャラで色々な童話をボケながら話すとかね……いやそれ自体はなかなかに好評だったけど、私の負担がね。もちろん脚本家の愛西さんの手は借りたけど、ぼけるのも大変でね……そもそもそう言うキャラじゃないのも居るし。色々と無理が出てきて止めた。他にも色々と突発的な企画をやってきたけど、最近は落ち着いてきてる。


 だから、こいつ……この浅野芽衣がおかしな事を言い出さなかったら、打ち合わせ自体は直ぐに終わるだろう。


「せんぱーい、どうしたんですか? マスクなんかして?  ああ風邪ですか? ダメですよ~、プロなんだから体調管理はしっかりしないと」


 ムカつく口調だけど、言ってる事は至極まともだから言い返せない。こればかりは浅野芽衣が百パーセント正しい。プロとして私は失格だ。なので私は素直にiPadにささっと文字を書く。


『その通りね。ごめんなさい』

「うわっ、やっぱり先輩って面白いですね。うけるう!」


 私がiPadで意思疎通するのがそんなにおかしいかこの女。なんか浅野芽衣を見てると熱が上がってくる気がする。私は直るまで喉を極力使用しないって決めたのだ。最悪風邪になったとしても、喉だけは守る。それがプロとしての責務でしょう。喉のイガイガした感じとかは、過去の経験上熱とかとは独立してる気がするんだよね。だから最初のこの日を乗り越えれば、喉自体はきっと回復するはずだ。最悪、風邪が熱をもたらしたとしても、熱なら何ら問題ない。声優としてはね。


『これも声優として必要な事だから』

「そうですね。先輩は正しいですよ。まあ、私は風邪なんて引きませんけど。体丈夫なんですよね~」


 そう言う奴に限って……とか思ったけど、私は何も言わなかった。変なフラグは立てるのは止めよう。何せこいつが風邪引いても困るのはこっちだ。だから私はiPadで意思疎通をするという事で今日の打ち合わせに臨むよ。

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