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声の神に顔はいらない  作者: 上松
215/403

215 大きすぎる額に震える

 クアンテッド社長『大室かなえ』社長が私に対して土下座をしてる。いい大人でも土下座なんてするんだぁ……けどされた方はたまったものじゃないよ。何せこの人は何百? 何千……は流石にいいすぎか? けど業界最大手の事務所の社長である。宮ちゃんの所の社長さんもかなりの大物だけど、この人と比べると一段劣る……そのくらいの人である。内の社長? あれは……ね。いい人ですよ。優しいし。怖くないし。


「えっと……そういうことは……困ります」

「そうね。こういうことじゃないわよね」


 そう言って大室社長は何やらポーチから取り出して書き出した。そしてビリッと破ってこっちに差し出してくる。


「事務所の方にはこれからだけど、これは私から貴女への迷惑料と思って頂戴」

「これって……」


 私はその紙を見てわなわなと震えた。いや、正確に言うとその紙に書かれた金額だ。ゼロが一、二、三、四、五、六、七……


「五百万……」


 思わずつばを飲み込んでしまう金額だった。イヤだって五百万だよ? 見たことない金額で一瞬、子供銀行券なんでしょ? とか思った。


「本物?」

「足りないかしら? それならもう一枚」


 ピッと大室社長はもう一枚同じ金額を書いて渡してくれた。五百万と五百万で一千万である。生涯年収かな? 私ならこのくらいだと思う。紙だからはっきり言って実感がないんだけど……でもこれはきっと本物……だよね。


「なかなか良い読経してるじゃない。そのくらいの気概は必要よ。この業界で生きて行く気ならね」

「はあ……」

「それじゃあ、これで今回の件は解決って事で」


 そう言って大室社長は颯爽と出て行った。私はその背中を見送ってたけど……ハッとして握ってた紙を上に掲げてこういった。


「ああえっと、これは? これ……は?」


 どうしたら良いの?


「えっと……どうしましょう? てか、小切手ってどうしたら良いんですか?」

「銀行に持って行けば良いんじゃないか?」

「なる……ほど……っていやいやいやいや! 一千万ですよ! 一千ます!!」

「噛んでるぞ。珍しい」


 いや、噛みもしますよ! なにせ一千万だよ!? ヤバい……なんか変な汗が出てきた。急に実感が……


「一千万あったら仕事取ってこれますかね?」

「絶対に止めとけ。そもそも君にそんな交渉できないだろう。一千万巻き上げられるだけだぞ」

「じゃあどうしたら良いんですかこれ!?」


 一千万の使い方よりも持ち方が分からないよ! 不安で仕方ない。私は二枚の紙がくしゃっと成ってる事に気付いた。とりあえず一生懸命伸ばしたら二枚とも真ん中から破けた。私の心もなんか破けた気がする。


「これ……使えますか?」


 私は涙声でマネージャーにそう聞く。するとマネージャーはいたたまれない声で「さあ、わからん」といった。

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