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声の神に顔はいらない  作者: 上松
208/403

208 土壇場で自分を知る

ドンドンドン!!


「せんせーい−−私、これ以上何も反応ないのなら……しちゃいますよ?」

(何を!?)


 静川秋華は腕が痛くなりそうな程にドアを叩いてる。高級マンションだからこそ、ドアひとつとってもおしゃれで質の良さそうなそれが静川秋華が叩くたびにそのドアが震えてるんだ。絶対に腕がヤバイでしょ。ハッキリって怖い。けど……


「ヤバイな……何する気だあいつ?」


 先生は静川秋華の行動の方に目がいって今現在起こってるあの扉を恐怖でしか見てない。まあ無理もないけど。普通はあんなドンドン響く扉は恐怖でしかないよ。でも私はそれをやってる静川秋華が気になる。

 だってああいう演出はホラー映画とかではよく見るけど、実際生身の人がやれるものなの? だって今にも扉が吹き飛びそうなんだけど? あんなのタックルでもしないと……しかも大の大人の男性じゃない無理じゃない? でも事実、あれを起こしてるのは静川秋華なはずだ。霊的な助力がない限り。


(それは現実にはないんだよね)


 霊なんていてたまるか−−だ。静川秋華は細身の女の子らしい女だ。それがこんなドアが吹き飛びそうな程に衝撃を加えてる。異常だよ。異常すぎるから、その体が心配になる。だって、静川秋華はどれだけの人に求められてると思ってるの?


「せんせ……い、彼女……止め……て」

「いや、あれは開けた瞬間襲われる奴だ」


 わかるけど……先生的には今の静川秋華に近付くなんて怖くて出来ないだろう。そもそもが私の様子を見に来ることを利用して一時的に静川秋華から離れたっぽい。ならようやく離れられたのに再び……しかもあんなドアを異常な力で叩いてる静川秋華の前になんて生きたくないだろう。わかる……わかるけど……


(いや、待って……私が行けば良いんじゃない?)


 妙案が浮かんだ。だって今は私は先生と一緒に居られないのだ。でも先生はこの部屋に居たい――というか静川秋華と一緒に居たくないみたい。なら私が静川秋華を止めに行けば良い。まあ止められるかはわからないけど……とりあえずあんな風にドアを叩いてるんでは心配だ。


「わた……しが行きます。せんせいは……ここにいて……ください」

「ダメだ。今のあいつは危険すぎる」


 静川秋華は猛獣か何かですか? てかさっきから近いからドキドキが収まらないんですけど!? とりあえずベッドから退いて頂きたい。けどこのベッドは先生の家のベッドだし……それすなわちこの部屋の物は全て先生の物で……私がとやかく言う権利があるかというとないよね。まあ女性が入ってるベッドにのってくるのは非常識だからそこは指摘できるかも知れないけどさ、やっぱり先生は私の事を女性とみてないだけかも知れない。


 まあとにかく、私は先生から逃げたかったのだ。そう、静川秋華の心配なんて二の次、体の良い先生から距離を取れる選択をしたかっただけ。私はそんな人間です。

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