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声の神に顔はいらない  作者: 上松
201/403

201 他人を持ち上げる資格の有無

「せっ−−」

「先生!!」

「−−ふぎゃ!?」


 先生がドアを開けた瞬間、私は静川秋華に突き飛ばされて横に退かされた。


「先生酷いです! 帰って来てるなら帰って来てると−−」


 あんたの方が私に取ってひどいことしてるって自覚ある? とか思ってると、静川秋華の声が萎んで言った。一体どうしたのか? 静川秋華なら有無を言わさずに先生の胸に飛び込んでいくんだと思ってた。


「うっ……」


 私は先生を見て思わず腕で鼻を抑えた。なぜかって? それは彼がとても臭うからだ。はっきり言って本当に先生なのか疑うほどだ。


「今のは……」

「先生一体どうしたんですか!? こんなになって……」

「今のは匙川さん?」

「ちょっとーーー!!」


 先生はどうやら静川秋華は無視していくスタイルを貫く様だ。この世の中でも、この静川秋華をそんな扱いできるのは先生くらいだろう。そもそも男なら静川秋華は大好物でしかないはずだ。それこそ極端なブス専でもない限り……


「あっ」


 私はその考えに至って赤面した。いや、だって……私は自他共に認めるブスだ。ブサイクである。大逆転きちゃう? なんて……


「そうです……けど」


 もじもじしながら私は答えた。すると、先生は今まで見た事ない様な辛そうな表情をした。それを見て「あっないな」と悟ってしまった。だってその辛そうな表情の中に明らかに落胆も見えてしまったんだ。

 やっぱり世の中、そんま都合よくできてる訳ない。ブサイクに救いなんて……ね。特にそれを他人に求めて良かった試しなんてないと私自身が分かってるはずだ。


「そうか……見事、だったよ。でも……その声は今聞きたくないんだ」


 どうやら私の声真似はかなり精度高かった様だ。話してた言語が違うはずなんだけどね。もしかしてその人も実は日本語を話してて、それにたまたま似てた−−とかだろうか? なら、あり得なくもないと思う。

 てか、なんかずきっときた。心に何かが刺さった様な痛み。今まで先生は私の声をとても褒めてくれてた。けど、その先生が私の声を聞きたくないと言った。それがなんか予想以上にショックだったみたいだ。そして先生は再びドアの方に幽鬼のように歩いていく。


「あっ……の……つっ……」


 心が痛い。そして私は誰かを励ますなんてそんなこと……した事もする資格も……ない。確かに以前、宮ちゃんが落ち込んでた時には励ます事が出来た。けどあれは一応私達歯が同じ声優というステージに居たからだ。同じ場所に居て、端っこでなんとか生きてきたから見てきた物もあった。だからこそ、宮ちゃんに言えることもあった。でも……私が先生に何をいえるだろうか? 


 先生は成功者だ。私なんかよりもずっと凄くて、沢山の人に認められてる。それに対して私は売れない声優だ。ただ最近はちょっとだけ知られてるけど、それを先生と比べよう物なら……私なんてプチッと潰される程の差がある。

 それに咥えて先生は男性である。私は男性となんて人生の中でそこまで離してないし、なによりも深いことを語った事なんて仕事以外無い。こういうとき、何を言えば良いのか……私は知らないし、私は自分が誰かを持ち上げるよりも不快にする事が多いと知っている。だから……


「先生待って!!」


 私がウジウジしてると、静川秋華が扉の前に立ち塞がった。大きく手を開いて絶対に通さないオーラをだす静川秋華はなんか頼もしく見えた。

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