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声の神に顔はいらない  作者: 上松
197/403

197 利便性を犠牲にしたオシャレデザインの波にのまれる

 どうにかこうにか、途中からエレベーターに乗ってくる人もいなくて助かった。私が知ってるエレベーターは大抵が鏡があって、なんか中を広く見せようと必死にやってる感じの印象だったんだけど、ある程度上に上がると(多分十階くらい?)そこからなんと外が見える様になっていた。まあそれでも、しばらくはビルとにらめっこ見たいな感じだった。


 でもさらに上に行くと、遮るものがなにもない空が広がって来た。そして都会の街を一望できるようになる。まさにこれが成功者だけに許された景色なんだろうなって、思える様な光景だった。


 どうやらこのマンション、十階までの住人には外を見る権利すらない様だ。こんなマンショに入ってる人は下層階でも私の何十倍の年収なんだろうに、それでも上から押さえつけられる様な生活をしなくちゃいけないのだ。


(悲しいな。私はアパートでいいや)


 世間一般の成功者なんてのきっとここの下層階の住人だろう。私たちが見上げる頭上は私達にも見える範囲の天辺でしかないのだ。本当は天蓋を突き破り、その更に上が広がっている。そしてそんな天上人だけに許された住まいこそが、タワーマンションなんだ。


 そんな事を思いながら通路を進む、かなり上に上がって来たから、景色は良い。けどなんかオシャレマンションだからか、建物の中から外へとわざわざ曲がりくねってたりする。別に天気の影響とか受けない様に出入口は中だけで良いじゃん……なんでわざわざ不便なのを取り入れるのか。やっぱり天上人は普段が快適そのものだから、どこかに不便を求めたくなるのかも知れない。いや、知らんけど。


「ここです」

「ここって−−」


 私たちは冬の寒空の下、一つの扉の前にきた。タワーマンションの外側は普通は風とか影響で外には出れない訳だけど、ここはそれを解決してるのか、案外風はない。まあ一応、外の様で外じゃない、けど限りなく屋外っぽい感じの場所になってると言っておこう、外気は入って来てるのかここは寒い。


 そんなところで私は表札を見て静川じゃないということに気づいた。どうやらここは静川秋華の家ではないらし。では誰の家なのか。私の知り合いでこんな超高級なタワーマンションに住めそうな人なんてあと二人くらいしか知らない。

 一人は宮ちゃんの事務所の社長……そして、後一人は先生だ。でもここで絞るなら、多分先生だろう。だって静川秋華と宮ちゃんの事務所の社長は面識ないはずだし、そもそもが家に出入りしてる様な間柄ならスキャンダルだ。

 まあそれは先生もだし、寧ろ先生の方が問題は大きいけど、それは今更だ。静川秋華が先生に本気なのは知ってるからね。


「ここって、先生の家?」

「本当は教えたくなかったんですけど、やむを得なかったんです」

「どういう事?」

「それを証明するためにはちょっと匙川さんのスマホ、見せてくれないですか?」

「ん……って、ちょ!?」


 なんとなく、さも自然に差し出してしまった。スマホには数日前の先生からかかって来た電話の着信履歴が残ってるというのにだ!! まさか静川秋華はわかってた? いや、そんな訳……私は背中に冷や汗が流れるのを感じた。そして−−


「やっぱり」


 −−その静川秋華の声が鬼の首取ったかの様に聞こえて体だけじゃなく、肝まで冷えた。

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