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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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195 友達って言葉を便利に使う奴

 静川秋華の自慢? を聞いてちょっと気になったらから帰り道、スマホを取り出して私は先生とのやり取りを眺める。別に対した事はしてない。それにやりとりも数える程だ。私なんかよりも、よっぽど積極的にやってる静川秋華の方が履歴だってあるだろう。


「なんて打つのよ……」


 私は何かメッセージを打とうとして、そう呟いた。白い息と共にそんな言葉も喧噪に消えていく。私は結局何も打たずにスマホをしまう。だって相手は大作家先生である。しかも何故に海外に行ってるかと言うと、それはハリウッドで自分の作品を映画化するため。そんな人に一体何を言えるというのか。


 この国から世界へと羽ばたこうとしてる大先生に日本の小さな声優業界でヒーハーヒーハーしてる弱小声優が何をいえるのか。何もいえないよ。それにそんな関わりがあるわけでもないんだ。時々、向こうからメッセージが来て、それに返信するていど。それも一つ二つやりとりをしたら終わる。


 そんな関係だ。全然深い仲っていえない。てか、一体何なんだろうとは思う。私は先生に取ってなんなのか? 彼女面をしたいわけじゃない。そんなのおこがましいってちゃんとわかってる。ただ、私のただの知り合いの声優って感じなのかな? という疑問があるだけだ。そもそもそんな原作者さんと知り合わないから、私的にはわからない。

 実は声優はだれたって作品で出会った原作者さんとはこのくらいのやりとりはしてるのだろうか? でもこの前の、あの酷いアニメの原作者さんとは寧ろ私、一回もあってませんけど!? まあアレは特殊だよね。そもそもが私が入ったのもアニメ放映されてる途中からだったし。普通はそんなのありない。それこそ2クールとか一年放送とかのアニメくらいだろう。


 あれを参考にしてはダメだね。とりあえず宮ちゃんとかに聞いてみよう。あの子なら私はなんの気兼ねなく質問できる。そういう唯一の存在だ。




 それから数日、念書始めのラジオの仕事場で私の所によくわからない電話が来た。先生からだった。なんだが様子がおかしかった気がしないでもない。でもその時はまだ収録の合間だったしでなんとなく流してた。けど更に数日後、現場であった静川秋華に私は有無を言わさずに連れられてタクシーに乗らされた。


「えっと、どこに連行される……の?」

「匙川さん、人聞きの悪い事を言わないでください。私達友達じゃないですか」


 こんな薄っぺらい友達って言葉を初めて……いや、初めてではないが、久々に聞いたよ。友達って言ってるときの静川秋華の目、まったく笑って無かった。てか周りも何事かと引いてたから! 私はぶるぶると震えながら目的地がどこなのか恐怖するしかなかった。

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