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声の神に顔はいらない  作者: 上松
194/403

194 知ってたけど、神様の理不尽さに怒りを覚える

「わかってるくせに~」


 そう言ってケラケラと笑う静川秋華。ゾクッとする。私がもしも……もしも先生との連絡が私だけにあったら……って質問でこれである。見た目は本当に百パーセントなのに……先生が気の毒でならない。まあとりあえず私にも別に何か連絡があったわけでもないし、そこは大丈夫だろう。うんうん……


 今、目の前で静川秋華は着物を着こなしてまさに和風美人なおしとやかさと、奥ゆかしさを醸し出してる。でももしもだよ……もしも私に先生から連絡が来てたら……この穏やかさはなりを潜めて、静川秋華は極道の妻みたいになるんじゃなかろうか? 

 いや、そういうのあんまり見たことないけどね。ただのイメージで言ってます。けど案外間違って無いとも思う。てか、よくここまでぞっこんラブしてるね。一体何が、彼女をそこまであの先生に執着させるのか……わからない。


 たしかに先生は超優良物件だ。それは間違いない。なにせ大ヒット作家だけど、社交的だし、オタクっぽさもない。顔は普通にアリな方だし、なにより優しい。お金の心配なんてするひつようもない。世の独身女性は誰だってあの人と結婚したいと思うだろう。


 でも静川秋華の場合は、そういう浅いところで先生に執着してる訳ではなさそうなんだよね。本当に先生の事を好きというか愛してるというか……


「どうして先生……なんですか?」

「だってそれは先生は優しくて格好良くて~」

「そういう表面的な……事じゃなくて」

「ふふ、匙川さん変わりましたね」

「そう……かな?」


 何やらジッと見てくる静川秋華。もぞももぞしてしまうから止めて欲しい。何その優しい目? 私の方が年上ですけど……でもそんなのいえない。だって社会的に成功してるのは静川秋華の方だから。てかなんで私はそんなプライベートな事を聞いてしまったんだろうか? 

 あんまり静川秋華に踏み込むのはヤバそうな気かしてたのに……なんとなく、ちょっとだけ気になってしまったんだよね。確かに静川秋華の言うように、これまでの私ならここまで他人に踏み込む――なんて事はしなかったような気がする。

 他人は他人……気にしてもしょうがないが、私のこれまでのスタンスだし。そもそも私は煩わしい人間会計なんてくそ食らえ……と思ってる側の人間だ。他人が怖いから、他人との関係性だって怖い。でも私はその面倒な事にも踏み出したから、ついつい聞いちゃったんだと思う。


「匙川さんは私の事、うらやましいって思ってます? 可愛くて美人で、仕事も順調でって?」

「まあ……ね」


 何、自慢? 早速自慢か? でも何一つ間違ってないし、その印象を持ってるのも確かだ。てか、静川秋華に対してそう思って内野つなんて世間に居ないだろう。いるとしたら、それは静川秋華を知らない奴だ。


「ふふ、でも私、全部持ってるからこそ、世界って退屈だなって思ってた口ですよ? よくアニメであるじゃないですか、出来るし、最初からなんでも与えられてたからこそ、全てが退屈に見えるキャラ。あのイヤなのが私だったんです」


 だったんです――といって一口お茶を含み、そして外の景色に目を移す静川秋華。まあ……はっきり言ってそれって、私的には自慢以外の何物でも無いけどね! 本当に最初から何でも持ってる奴だったらしい。逆上死体くらいだが、こんな人目あるところで……いや人目無くてもできないから、私は静かにお茶を飲みながら聞くことに徹する。


 けど、ただ静川秋華の話……というかのろけというかを聞くだけで、なんか自分の心が踏みつけられてる感じがした。

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