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声の神に顔はいらない  作者: 上松
192/403

192 繋がりは広がりであり、縛りである

「ふう」


 私はそんな息を吐いて椅子に腰を下ろす。本当なら、皆が座ってそして私がようやく端っこに座る……それかもう立ったままで我慢する。それがいつもの私だ。私は自分の社会での位置と言う物をわかってるからね。椅子があるからって真っ先に座ったりはしない。電車だって基本立ってる。誰か一人でも車両にいればどれだけ席が空いてても立ってる。


 だって誰も私の座った後なんかに座りたくないだろうなって思ってるし皆心の中で「なにブサイクが座ってんだよ」って思ってると知ってるもん。まあ今ではそれが過剰な自己嫌悪な心理だってのもわかってる。他人は自分が思ってる程に、自分に興味なんてない。


 それでも長年の卑屈さってのは簡単に捨てられないし、私は多分一生こうなんだろうなって思う。そんな私が座った……それはつまり、既にここには誰も居ないからだ。昼ちょっと過ぎくらいだけど、あれから本年初収録はつつがなく終わった。


 それぞれがきちんと挨拶とかして繋がりをつくり、有意義な……そう有意義な時間と共に、きっと皆さん帰って行っただろう。私だって、今日はとても有意義だったと思う。なんか大御所声優さんのラインのアドレスとか貰ったし。勿論遠山飛鳥ちゃんに小南さん、それに五上院さんのラインを交換した。それから静川秋華のおかげで監督さんや、プロデューサーの人、制作委員会側の出資者の会社の人なんかもだ。


 静川秋華はそこらの声優と繋がりが違って怖い。普通は声優は声優と繋がりを深める物だと思う。でも静川秋華はアニメスタッフ全員と繋がってる感じだった。もしかしたらここには来てない作画監督さんとかキャラデザの人とも繋がりがあるのかもしれない。


「顔だけじゃなく、ああいうのも静川秋華がトップに居る要因なのかも」


 そんな事を静かになったこの場所で呟く。流石に音響関係の人達はまだまだ仕事がある……というか、ここが彼等の仕事場だし、この建物から居なくなるって事はないけど、最初賑わってた時とは打って変わって今は静かだ。エントランスを埋めつくす……と言うほどじゃないにしてもそれなりに狭いと思ってたのに、人が居なくなると広く感じる。


 閑散として寂しい気持ちと、気楽な気分が同時に訪れてる。あと、新年一発目の収録が終わった安心感。私は実際、今回は別に居なくて良かった。だって私は収録では声だしてない。まあ私のキャラは一期目でお亡くなりになってるからね。

 出てくる筈もない。再登場はわかってるが、それは今ではないのだ。それでも再登場まで全く出番がないかというとそうでもない。なにせ主人公の回想とかで新規の台詞が入ったりもするからだ。あと私はガヤ要因でもある。


 なんかあのアニメ……伝説を作ったあのクソアニメをやはりここに居る人達が大抵は見てた。まあそれはそうだよね。なにせ同じ業界で作られてるんだ。気にならないわけ無い。そして私の声のポテンシャルに気付いてくれたらしい。


 なので今暇してる私を酷使しようという腹づもりらしい。いや、良いですけどね。なにせ声優は一話で一言でも話せばギャラが入るし、それは私にはありがたい事だ。今回は何もなかったが、多分次回では何かきっとある。台本はその場で渡されるらしい。



 なにせあらかじめ決めておく……みたいな奴でもないからね。勿論、モブでもちゃんと決まった台詞がある時もあるけど、なんか現場では「匙川さんなら大丈夫だよね?」的な空気がでてた。いや……とは言えなかった。

 私、超絶台詞とか喋り込むタイプなんだけどね。


「お待たせしました」


 そう言って現れたの和服の静川秋華。そう最初に言われた通り、どうやら話があるみたい。

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