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声の神に顔はいらない  作者: 上松
180/403

180 一年の最初くらい希望を持とう

「うっ!?」


 隣の浅野芽衣がなんか太い声を出して固まってる。いや、わかるけどね。なにせ手水舎の水はめっちゃ冷たい。こんなので手を洗ってておじいちゃん、やおばあちゃんは大丈夫なのだろうか? 寧ろ逆に危ないくない? と思う。いやほら、心臓とか弱かったら、これで心臓発作とか起こしそうな冷たさだよ? 私は流石に浅野芽衣の様な変な声はださない。唇を噛みしめてたからね。


(これが初詣の洗礼か……)


 神にお祈りするんだろ? このくらい乗り越えろ……ってそういうことね。


「ふふふ、ふふふふ」

「だ、大丈夫かいあんた?」


 なんかおばあちゃんに心配された。てかちょっと引かれてる。どうやら私の笑い声が陰湿だったみたいだ。新年早々凹む。


「「「おお……」」」


 そんな声が手水舎で起こる。私や浅野芽衣では起きなかった事が起きている。それはやっぱり宮ちゃんが原因である。宮ちゃんが手を洗ってる。いや、本当にそれだけなんだけど、それだけでなんか神聖な事の様に見える。同じ事を私も浅野芽衣もしてるんだけど……この違いは何か……若さ? それともやっぱり顔か!? 水を掛けてちょっと赤くなってる宮ちゃんの手とか……なんかこう……尊い。


「いきましょう」


 そう言って宮ちゃんに引きつられる、私と浅野芽衣。高校生に見蕩れてしまってたよ。年下……なんだけど、宮ちゃんはかなりしっかりしてる。ちょっと前に弱さをみたけど、あれを乗り越えて宮ちゃんは一回り大きくなったみたいだ。お仕事も順調だしね。可愛い女子高生で素直で丁寧で愛嬌もある。声だって良い。これで仕事こない訳ないよ。大勢の初詣客に交ざって私達も参道に並ぶ。あふれかえる人のおかげか、ちょっとは暖かくなってる気はする。気はするけど、多すぎる人でやっぱり気持ち悪い。浅野芽衣はパシャパシャと写真を撮りながら、なんかこまめにSNSを更新してるみたい。


「先輩、先輩は写真NGですけど、この子なら良いですよね?」


 そう言って宮ちゃんを自身のSNSに出そうとしてる浅野芽衣。多分、宮ちゃんの人気にあやかって自分を知ってもらうつもりなんだろう。貪欲な奴である。多分宮ちゃんのファンを奪って更に自分の糧にしようとかおもってるんじゃないだろうか? 逆に奪われないといいねって思う。


「先輩先輩、撮ってください」

「はいはい」


 私は浅野芽衣と宮ちゃんのツーショットを撮ってやる。横に並ばずに、後ろに引いたり、撮った後にスマホをめっちゃ操作してる所を見るに、多分写真加工をめっちゃやってる。涙ぐましい努力だ。まあけど、そこまでやってちゃんと人気を維持してるんだから浅野芽衣は浅野芽衣で凄い。それに事務所が押すだけあるくらいにはちゃんと人気もある。トップ……とは流石に言えないが、中堅所ではある。そんな浅野芽衣は今の地位に満足なんてしてない。静川秋華の地位を狙ってる。こいつは本気で声優の頂点に行く気なのだ。だから全てを利用する。その狡猾さは、見習わないといけない事なのかも知れないなってちょっと思う。


 そんなこんなで私達はお参りを済ませる。それから食事でも……とかなったけど、元旦にやってる所は少なくて、宮ちゃんの家にお呼ばれしておせちをごちそうになった。まともな手作り名おせちなんて何年ぶりか……凄く楽しかった。けど浅野芽衣は宮ちゃんの環境とか見て敵認定してたけどね。まあひがみたく成る気持ちはわかる。なにせ宮ちゃんは全部持ってるからね。でもだからこそ、ここまで純真な子が出来たと思う。それには私はちょっと感謝しちゃうよ。今年の正月は楽しく過ごせたと思う。これからの一年間……良い事が起きそうな……そんな気がする。

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