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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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156 大きな子供の、大きな夢 13

「アナタは一体……」

「紹介がまだでしたね。私は『ミーシャ・デッドエンド』と言う物です」


 ついに死神がきた……とその名前を聞いた時に思った。でもその考えは直ぐに払拭する。なぜなら、彼女はこちらをさげすむ様な雰囲気ではなかったからだ。だって最近……というか、多分ここに連れられてきた人の中で人扱いされてた人なんて居ないんじゃないだろうか? 


 まるで家畜かなにか……いや、家畜だって今の世の中、ここまでの仕打ちは受けないだろうって感じの扱い方だったんだ。まあ家畜はその命を使ってお金を生み出してくれる。けど、自分たちは稼ぐ所か、マイナスなのだ。家畜以下の扱いでも当然なのかもしれない。


 そしてそれを受け入れてた自分たち。ても彼女は……ミーシャさんはそんな自分をちゃんと人扱いしてくれる。


「まずはこれをどうぞ、いくつか食べものを持ってきてますので。まともな食事も与えられて無かったのでしょう。本当に頭の悪い連中です。ちゃんと体力をつけておかないと、効率だって落ちる物でしょうに」


 そう言って彼女は僕に食べものをくれる。箱に入った棒状の食べものだ。栄養がいっぱいとれる奴。そして水もペットボトルでくれた。それをむさぼる様に食べる。どうやら彼女は車でここまで来たのか、真っ赤な高級車から更に食べものを出してくれる。

 いや、本当に一体何者? とりあえず食べる手が止まらない。


「そのままで結構ですよ。栄養がないと頭も働かないでしょうしね。私もただの善意でこんな所まで来たわけではありませんし」


 そう言って車に寄りかかる彼女。スーツを着こなして鋭い眼鏡を掛けてる彼女は、仕事をバリバリこなしてる女性って感じだ。タイトスカートから伸びるしなやかな脚がエロいんだが……なるべく視線を向けないようにしながら堪能しておこう。


「私はアナタをここから連れ出す許可は得てますが、借金がなくなったわけではないです。そこらへんわかっておいてください」

「えっと、どういうことですか?」


 沢山食べたから、意識がようやくミーシャさんの方へと向いた。彼女は僕を助けてくれたけど、根本的には解決はしてないという。話がみえない。そもそもが僕は彼女とは初対面の筈だ。一体どうして自分の事を助けてくれるのか……なんか不信感がようやく出てきた。


「警戒するのも無理はありませんね。けどアナタには選択肢はないと思います。なにせこのまま私の提案を受け入れないと、アナタは死ぬまで奴隷の様にこき使われて、最後には内蔵までを切り売りされてしまうんですから」


 ミーシャさんのその言葉にゾクッと体が震えた。それは決して彼女の冗談なんじゃない。


「このままではアナタには未来何て物はありません。ただ死に向かって歩くだけ。それも何の幸福もない死へと向かってです。ですが、今ここに新たな道があります」


 そう言って彼女は僕に手を差し出す。そして更にこう言う。


「どうせなら、舞台の上で死にたくないですか?」


 そんな事を言われたら、答えなんて決まってる。なぜなら僕は、舞台に魅入られた役者だからだ。

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