132 齧り付かずにはいられない
「ご、ごめんなさい!」
「いや、まあ……大丈夫だったから」
なんとか自分は無事に解放された。あのときカジノであった綺麗なマネージャーの人がやってきた彼『ジュエル・ライハルト』をひっぱたいてくれたんだ。いや、彼女よりも筋肉ムキムキの奴らなんて他にもいっぱい居るんだけどね。
何故か彼女が来るまで誰も止めに入らなかった。なんか暖かい目で見守るだけでね。
「おい、こいつはそっち系のやつなのか?」
「いや、違うと思う……けど」
バッシュ・バレルが小声でそんなことを聞いてくる。多分そっち系の人ではないはずだ。そこまでジュエル・ライハルトを知ってる分けじゃないが、そうだったら困るからこれには自分の願望も交じってる。たぶん……こんな熱くハグをしてくるのは自分の作品のファンだからであって、そういう気持ちは一切ない……と思いたい。
「すみません家の団長が」
「あはは」
マネージャーの人は深く頭を下げてくれる。まあ大事にはならなかったし、気にすることでもない。素晴らしい舞台を見せてくれるんなら、それで満足だし。
「ヒュー」
そう言って口笛を鳴らすのはバッシュ・バレルだ。こいつ、マネージャーの人を見て猛獣の目をしてるぞ。確かにマネージャーさんは綺麗だが……昨日と違ってドレスじゃないが、ラフな格好である意味、こっちもエロい。シンプルなシャツにパンツだが彼女のスタイルの良さもあって抜群に映えてる。
「えっと、貴女は舞台には……立たないんですよね?」
「ええ、私はそういうことはからっきしなので。どうしてですか?」
「そりゃあ勿体ないからだよ。あんたみたいな美女は舞台に映える」
ニヤッと顎髭触りながらバッシュ・バレルが会話に入ってきた。どうやら今夜の獲物を見つけたようだ。気付いたが何やら他の団員達も頷いてる。どうやら彼女は他の団員達にもそう思われてるらしい。
「ありがとうございます。バッシュ・バレル様」
「俺のことをしってるのか?」
「ええ、話題になってる演出家の人たちはチェックしてるので」
「俺は監督だが?」
「肩書きの問題ですね」
何やら二人の間で火花が散ってる。まあバッシュ・バレルはやけに監督って肩書きにこだわってる節はある。何せyoutubeでチャンネル開設したときからこいつは自らを監督と名乗ってた。けど自分もそこら辺の境は曖昧なところがある。
まあバッシュ・バレルの前では言わないけど。
「あんた達は、俺たちに売り込んで来たんだよな?」
「それは違います」
「あん?」
「私達も、見極めようと思いまして。先生は先日お見受けして信用できると思っております。ですが貴女は……まだわかりませんので」
「言ってくれるじゃねーか」
明らかに彼女はバッシュ・バレルをあおってる。それに一番びびってるのはなんとジュエル・ライハルトだった。なんか大きな体を小さくして震えてる。団長の威厳は消え去ってる。大丈夫なのかこの人で……と思った。
次回は明日あげますね。




