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声の神に顔はいらない  作者: 上松
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107 しつこいくらい、重ねてく

 既にゲームは半分を過ぎてしまった。その間に私たちがピンを倒した本数はなんとゼロである。私は元々わかってた事だ。そもそも倒せるなんて思ってない。思ってないけど、頑張ってないわけじゃない。投げやりになってるわけでもない。一応投げるときは真剣にやってる。


 あんな重い球を私の様な貧弱な奴に投げろってのがどだい無理だ。だから元から転がしてる。一応毎回、位置は調整してる。レーンには目印みたいなのがあるから、それを見てピンとまっすぐになる様に転がしてる。けどなかなかまっすぐにも行かない。


 レーンが長いからなのだろうか? 途中で絶対に端に落ちる。なんなのこれ? 欠陥じゃない? と思う。まあその度にアニメ声でいろいろなパターンをさせてもらったけどね。私はただではこけない女になったのだ。けどこけたままの奴もいる。マネージャーである。


 昔はボウラーだったらしいマネージャー。少しは期待してたんだけど……散々だ。私が倒せないのは想定ないだろう。愛西さんだってその筈だ。彼の不安要素はきっとマネージャーだった筈。とりあえずフォームはなんとなく様になってる気はする。


 私と違ってちゃんと投げてるしね。けど、なんか音が大きい。投げた時、太い指に引っかかって上手く抜けないのか、投げたボールがいったん落ちて転がるみたいな感じに見える。そのせいでレーンにガツンといって転がってくから、きっとそれがマネージャーの思い通りに行ってない原因だと思う。


 ようやく穴がスポスポと行くボールに変えたみたいだから次からは期待しよう。


「ふむふむ、よしよし、いっけいけ! ああーー!! まあまあまだまだこれから!」


 私はとりあえずいろいろな事を言葉を色んな声音で口にする。なるべく色々と聞かせたいからだ。ついでに行っとくと、ピンは一本も倒せなかった。ここらで私はiPadを取り出して、テーブルに置く。そして流すのはアニメである。


 私が今やってるアニメをとりあえず流す事にした。最初はウザそうな顔をした愛西さんだが、実際にはとめられなかった。とりあえずささっと投げて、二つピンを残して戻ってきた愛西さんはチラチラとiPad見てる。そしてぽつりと言った。


「クソアニメじゃねーか」

「それは……否定しないです」


 確かにこのアニメはクソアニメだ。だって色々とやばい現場なんだ。声優なんて私一人だし、作画は一話から崩壊だ。はっきり言ってまだ総集編を挟んでないのが不思議でならない。まあプロデューサーが大人の事情を話してくれたが、アニメははじめに枠を買って放映してる。総集編を挟むってなると、最初からその総集編を組んで枠を買ってない限り、元の枠には収まらなくなる。


 そしてテレビ局から枠を買うにはお金がかかる。すでにこのアニメにそんな予算はない。だから総集編は出来ない。どんなに絵がダメでも放送するしかないのだ。


「声でしかキャラを判別できねーぞ」

「ネットで、よく言われて……ます」


 ちょっとだけ自慢げにそういった。なかなか誇らしくない? 私の声でキャラの判別を出来るって。これが別々のキャラを別々の声優が演じてるなら、普通だと思う。でもこのアニメのキャラは全て私が声を変えて演じてる。元を正せばそれは全部私だ。

 けどその私の声でしか判別できない。アニメとしては失格だ。けど声優としてはうれしいことなのだ。それになんだかんだいって、愛西さんの興味は引けてる。このまま私は押していく。そう決意してる間に、マネージャーが残ったピンを倒してた。

次回は17時に予約投稿してます。

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