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声の神に顔はいらない  作者: 上松
106/403

106 察しが良いがそこにいた

「匙川、何すんだ!? これが大事な勝負だってわかってるのか?」


 普段はヤル気なさそうマネージャーが声を荒げるとは……彼もかなり本気だったらしい。昔はボウラーだったらしいし、その血が騒いでるのかもしれないね。でもこっちも別に、ふざけてる訳じゃない。


 私は別の勝負を仕掛けてるだけだ。それはこっちの試合に関係あることである。私は声優だ。ボウラーではない。だからそっちの土俵に上がる必要はない。むしろこっちの土俵に来させないといけない。


 愛西さんが、どんな理由でこの業界に見切りをつけたのかは分からない。けどもう一度だけ戻ってきたいと思って欲しい。そのための、今の応援だ。


 別にふざけてあんな声を出した訳じゃない。今のは私の声をいかに自然に聴かせるかって奴を考えた末の方法である。


 だって私の声を使ってラジオは行われる。むしろラジオは声しかない。私が全部のキャラを演じてる以上、私が出ずっぱりになるんだ。


 だからこのキャラの声をどう使うか今の内に考えておいてもらいたいし、これが私の本気度だとわかって欲しい。


 愛西さんのプロボウラーになるって夢、私は別に否定しないよ。でもこっちの本気だってわかって欲しい。声優がなんでこんなことやってるのかって愛西さんは思ってるかも知れない。


(いや、絶対に思ってるだろうけど……)


 だってこんな事声優の仕事じゃないしね。声優が面白がって首突っ込んでるとか思われてるかも知れない。


 そうじゃない、本気でヤバいから声優まででばってるんだって事を知ってもらわないと。


 直接いうことはしない。何故ならあんまりにもヤバい現場だと感付かれたら、そのせいで引き受けてもらえないかも知れないからだ。私はこの勝負に勝つことはそこまでこだわってない。

 それよりも私は愛西さんの中にあったはずのラジオへの情熱に訴えかけるのだ。こんな声優と仕事をしたいとか思わせたい。


 だから私は私の出せる声を自然に披露していくことにしたんだ。


「あ……えっと」


 私は割とマネージャーには心を許してると思ってる。けどそれでも自分の考えを伝えるのは難しい。私、コミュ障だから。他愛もないことならまだいいやすいのに……


 マネージャーは私がふざけてあんなことをやったと本気で思う? その思いを込めて私はマネージャーを見る。

 前髪が長いせいで、ちゃんと見えてないかもだから片目だけでも私は晒す。


「匙川……今度はもっとソフトなやつで頼む」


 流石は私のマネージャーだ、察してくれた。

 

次回は正午に予約投稿してます。

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