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リモンド  作者: 名護透
王都編
4/6

eqisode3 邂逅

 勇気ある少女の声が聞こえた。チンピラ共の注目は俺ではなく、あっちに行ってしまったようだ。コトン、コトンと足音が近づいてくる。

 やがてその声の持ち主が現れた。その髪はロングヘアで紫苑の色しており、エメラルドグリーンの瞳が美しく輝いていた。肌は万年雪のようにきめ細かく白い。服装は純白がメインで所々にスカイブルーの色が取り入れられているワンピース見たいである。体型はスレンダーな感じだろうか。体型や顔は人それぞれだろうが、彼女が美人だと聞かれたら聞かれた全員が美人だと断言するほどの容姿だった。


「道草食っていいのか?、他にやるべきことがあるんだろ?」

 少女とは別の声が聞こえた。

 一人ではないようである。彼女の後ろから見慣れない動物が現れた。一人と一匹であった。


 その一匹は元いた世界で似いる生物を一言で表すのならタツノオトシゴというべきであろう。しかし我々の知っているタツノオトシゴとは違い西洋の竜のような羽が生えていた。逆に口の方は、東洋の龍のような鬣と髭があった。瞳はルビーのように輝いており、また肌の色も全身が山吹色に包まれていた。


--あれこんなヤツ、TVで見たことあるぞ。確かノリがかなり軽かったとおもうけど…


「人が困っているなら放っておくわけには行かないでしょ?ねぇ、タツゴン?魔法を使うわよ!」


「分かった!契約者の望みとあらば!」

 彼はそう言うと、彼女の手の甲にくっついた。


「契約術者だ!魔法を使えない奴に魔法を使おうなんて卑怯だ!」

 チンピラ三人衆はそのような呻き声を出した。その発言に彼女は呆れ果て、


「魔法使える使えない以前に三人で一人を襲うっていう考えの方が卑怯だと思うんだけど。」


 ド正論を返された三人は激昂し、我こそは言わんばかりに少女に飛び掛かっていった。

 だか、その前に彼女は呪文を唱えた。


アイス()マス()ブラスト()!」


 手毬くらいの大きさの氷の塊が三つ現れ、チンピラの方に飛んで行った。不幸な二人の顔面に当たったが、ボサボサ頭の方だけは刀を顔面に添え、氷塊から身を守った。当たった衝撃で剣は吹き飛ばされたが、彼は彼女の方へ突き進んでいった。


 詠唱には時間がかかり、彼女は焦っていた。その隙に彼は自分の間合いに入ったことを感じ、顔がニヤリと笑みを浮かべた。彼は力一杯の拳を彼女に当て、少女を吹き飛ばした。

 否、吹き飛ばされたのは彼の方だった。いつのまにか彼はリクが気絶していると思い込んでしまった。一度も攻撃を当ててないのにも関わらず。

 一応彼の考えを補足しておくと、相手の実力を判断した時、契約術者は三人で襲い掛かればどうにか倒せ、よく見ない服を着ている方は三人で襲い掛かれば余裕で倒せると考えていた。要するにリクのことは自分の敵ではないと考えていた。その油断が彼の誤算を招き、気絶していたと思い込んでいたリクが起き上がり、彼の腹に精一杯蹴り込まれたのだった。

 そのリーダー格は吹っ飛ばされ尻もちをつく事になってしまい、散々やられているのにも関わらずまだ戦う気満々だったが、


 その子分の一人が

「どう考えても、この状況では不利だ。逃げた方が得策かと。」と逃げるように勧めた。


 流石に子分の発言を受け入れざるを得なかったのか、

「次会った時は、覚えてろよ!」

 と余りにも小物臭い捨て台詞を吐き、彼らは一目散に逃げていった。

 どうにか、彼は自分の身が助かった。今ここに生きることが出来ている要因が彼女に感謝しなければならないと思い、

「助けてくれてありがとう。」

 と感謝の言葉を述べたその時だった。

 彼女に激痛が走り、「イタた〜。」と漏らしながら手を抑えた。


 予想外の事態に彼は半ば反射的に

「おい、大丈夫か?」

 と答えた。


 意外な事に最初に反応したのはタツノオトシゴのような奴だった。

「おい、この()はなぁ、魔法を使うと手が痛むんだよ!自分の身さえ守れない奴が何言ってんだ!」


 それに対し少女は

「大丈夫、痛みは一瞬よ。タツゴン、魔法を使おうと思ったのは私自身の意思、あなたが言っていい事じゃないわ。」


 彼女に諭され、タツゴンは

「悪かったな、俺の悪意をお前に押し付けてしまって。」

 それに対し俺の返答は

「いいぜ。俺もいつまでも細かい事を気にする訳じゃないし。それより別の場所に移って話をしようぜ。こんな薄暗い場所はもうたくさんだ。」

「そうね。」

「そうだな。」

 二人と一匹の意見は一致した。


 ************************


 二人と一匹は路地裏から出た。そして噴水のある広場で話を続ける事にした。ヤグカの話によればここはよく待ち合わせの場所に使うのだという。その証拠に幾人かがそこで待っていたり、少年が遊ぶ相手を見つけたのか、遊ぶ相手の方向へ走っていった。彼女はまだ一度も待ち合わせの場所として使ったことはないと苦笑いをしながら話していた。

 彼女との会話は進み、彼は事情を説明した。茶髪の髪を持つ少女に騙されたことも、他の国出身だということも。


「どうしてその少女を助けようと思ったの?」

 彼女の質問に対し、リクは右腕を上げ曇り空一つない快晴の空を人差し指で指差しながら

「おばあちゃんはこう言ってた。この世で最低な人間は罪のない人間を虐める人間と苦しんでる人間を見て見ぬ振りをする人間だと。要するおばあちゃんの格言を子供の頃からよく言われていて、その格言の通りに有言実行したまでだ。」

 と言い、

「そういえばまだ俺の名前を言ってなかったな。俺は佐久間凛空(さくまりく)。只の人助けが好きな男だ。それで君の名は?」


「うーんそうねぇ、今はとりあえず、ヤグカとでも名乗っておきましょうか。そしてこの契約している精霊がタツゴン。」


「リク、よろしくな!」

 と陽気な声が帰ってきた。


 気付いた時には、昼から夕方になっていた。

 ーー何だ体調の違和感は?

 よくよく考えてみると彼は異世界に召喚される六時間前を最後に何も食べていない。また異世界に召喚された時は昼だったので昼から夕方まで食べ物を買うにしても通貨が違うので何も買うことが出来なかった。つまり約十二時間何も食べていないことになる。お腹が空いていても無理もない話である。そこで彼らは手頃な料理屋に行くことにした。


 ************************


 着いた料理屋は、看板に読めない文字で書かれていたがヤグカに質問とするとその店の名前は黒真珠(ブラックパール)というらしい。作られた頃はもっと綺麗であっただろう。珪藻土で壁を塗っていたようだが、剥げ落ちてたり、汚れてたりしていた。しかしよく観察すると座った椅子もテーブルも古そうだったが埃が何処にも見つからない。店の管理はよく行き届いているようだ。それに店の雰囲気も合わせるとベストな組み合わせであった。

 出された食事は、木製の皿にライ麦のパン2枚と切り分けた鶏肉を鉄の棒に串刺しにして焼いた焼き鳥とソーセージやら、人参、キャベツなどをてんこ盛りに入れたスープだった。


 リクはパンをほうばりながら

「それで協力して欲しいってことは何だ?」

 と質問した。ヤグカの案内で料理屋に行っている最中協力して欲しいと頼まれたのだが、肝心の内容はまだ説明されていなかったのだった。


 なぜ彼女に協力するのかというと、単純に人の役に立ちたいという気持ちもあったが、自分の世界に帰る目処が立っていない以上、異世界で生きていくためにはお金を稼ぐ必要がある。仕事がどこで出来るか分からないので自分で仕事を作るしか無いのだ。自分に何が出来るか分からないので自分の実力を試すためでもあった。


 それに反応して彼女は

「実はわたしの母親の形見の判子を探して欲しいの?それがないと、王都にいる間に書かなければならない証明書があるから。探す場所は広いけど…。」


「判子の絵とか持ってる?」

 彼女は雑嚢の中から羊皮紙を取り出した。黒インクで描かれており、上手いとは言えないがちゃんと特徴を捉えた描き方をしている。その絵には一角獣(ユニコーン)のような角が判子を持つ部分に掘られているようだった。


 彼はさらに質問をしていく。

「それで落とした場所の検討はついてるのか?」

 彼は冷静に判断する。大まかな場所が分かれば見つけやすくなるはずだ。


 彼女は王都の地図を取り出し

「この辺だと思う。小さいから見つけるのには大分時間がかかると思うわ。」


 彼は明るく

「みんなで探せば余裕だと思う。」

 と答えた。


 それに続けて彼は

「どうでも良い質問していいか?タツゴンとの契約内容は何なの?」


 ヤグカは

「一日一回頭を撫でるだけ。それだけよ。」


 予想外の返答に彼は

「一日三食食事を食べさせることかと思ったよ。」

 と返すしかなかった。


 それにタツゴンが反応し

「リク、何も知らねぇんだなぁ。精霊に食事なんていらないんだよ!ヤグカは本当ラッキーだぜ。普通だったら契約者の魔力(マナ)の一割を供給させたりしなければならないんだからな!」

 と相変わらず陽気な声で言った。


 晩食を食べ終わり、お金を払い、店の外に出た。

「リク、宿はこっちよ!」

 という彼女の明るい声が聞こえた。

ーー明日からもっと大変になりそうだな。でも少しでも前に進まないと始まらない。

 彼は独り言を呟くと、リクは彼女の案内で宿の方へ行った。

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