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リモンド  作者: 名護透
王都編
3/6

episode2 救出

 彼は静かに路地裏に入っていった。一歩進むごとに薄暗くなっていき、段々と石畳の隙間に苔が生えている。そこからはこんな会話が聞こえた。


「悲鳴を出すな!奪った金を出せば済む話なんだよ。持っているなら出せよ、オラァ!」

一人が大声で叫んだ。


「素直に出した方が身のためだぞ。」

別の二人が便乗して言う。


「だから、私は持ってないって…」

少女の弱々しいしい声が聞こえた。


 この会話から推測するに、少女は三人のチンピラに脅されいると考えた。チンピラの人間関係はリーダーとその取り巻き二人といった感じであろう。


 彼が悲鳴が聞こえた場所に着いた時、路地裏にかなり使い古していると見える渋めの緑色の服と茶色のスカートを着た少女とチンピラ三人が見えた。少女は俺と同年代で漆黒の瞳、ウェーブのかかった茶髪していた。その瞳は怖がっているというように涙を流していた。チンピラはそれぞれ二十代くらいでTVゲームで言うところのモブA.B.Cっていうとこでありボロボロの服を着ていた、一人目はハゲ、二人目は赤のモヒカン、3人目は青のボサボサの髪だった。


 物陰からこっそり盗み聞きしていた時、彼の記憶からこんなことが思い出された。

 --この世で最低な人間は、罪のない人間を虐める人間と苦しんでる人間を見て見ぬ振りをする人間だ…というおばあちゃんの声が聞こえた。


ボサボサの髪の奴が少女に殴り掛かろうとした時、

「おい、ハゲ、モヒカン、ボサボサやめろ!その女を離せ!」後先考えず彼の理性ではなく彼の倫理観が言ってしまった。


 帰ってきた第一声は、「俺たちにはショウ、チク、バイという立派な名前があるんだ!冤罪だ!あの女にオレたちの財産をすられたんだ!」


「嘘つけ!どっからどう見ても女を虐めてるようにしか見えねぇだろ!」

 といった非友好的な会話が繰り広げられた。


 リクはハゲの手が拳の形になるのが見えた。リクは刹那の間にバッグや竹刀の入った袋を放り出した。次の瞬間、その男はいきなり殴りかかってきた。彼は間一髪で相手の右ストレートを躱した。彼は素早く距離を置き、シュートボクシングのような構えをした。彼は一応格闘術の心得は持っていた、所詮田舎拳法ではあったが。躱されたことに驚くことなく、再び右ストレートをかましてきた。彼は慌てることなく相手の拳を受け止めた。

 その瞬間、リクはハゲの顔面に左ストレートを食らわした。

 --上手い感じにカウンターが決まった!

 その拍子にハゲは鼻から血を流しながら、バタッと倒れた。

 --倒したのは良かったがやっぱり人を殴ると痛いな…


 ハゲに倒された次の瞬間、モヒカンが突っ込んできた。相手の右ストレートを躱したあとハゲを倒した勢いに任して、モヒカンの第二撃より速く右ストレートを食らわした。モヒカンはは石畳に仰向けになって気絶してしまった。


 残りのボサボサの方は流石にリクの実力に警戒したのか、彼が帯刀していた剣を抜刀して襲い掛かってきた。リクは彼の振り下ろした一撃を僅かに体を動かしただけでを躱すと、バックの中に入っていた竹刀を取り出し、ボサボサの凶刃から自分の身を守った。彼の剣は手入れを怠って切れ味が落ちているのか、竹刀でちゃんと受け止められている。


 リクは、格闘術より竹刀を使う戦いの方が得意だった。その実力は、全国大会に高校一年の時から特別に出場出来るレベルであった。結果的に団体戦では負けてしまったが、リクだけは無敗であった。


 一撃が重い斬撃を次々に浴びせてきており、リクは押されていた。相手は強かった。威力に限った話ではあったが。バイがもう少し変化に富んだ斬撃をしていればリクは死んでいただろう。リクに言わせて見れば、「一撃は重いが、変化に乏しく、すぐに対応される。」ということである。その発言の通り、バイは十合と打ち合わないうちに押し返されるようになった。彼の洗練された動きに対し、バイは反射的に防御することしか出来なかった。バイが体制を崩した瞬間、彼は剣道で言う所の面打ちをしようとして、竹刀てトドメを刺そう(もちろん気絶する程度のレベル)とした時、


「コイツがどうなってもいいのか!」

 という声が彼の耳に入った。彼が後ろを振り返ると、気絶させていたはずのチンピラ二人が少女の喉にナイフを突きつけている。

 流石に典型的すぎる脅し文句だか、彼は竹刀を地面に落とさざるを得なかった。


 三人の視線がリクの方に向いた時、少女は拘束していた二人の急所を素早く蹴り、彼女はスカートを履いてるとは思えぬ速さで逃げた。あまりの素早い行動に蹴られなかった方の一人は、只々唖然とするしかなかった。彼女が走り去っている最中に一瞬視線が合った。助けて欲しそうな瞳は何処にもなく、冷たく俺を見下しているようだった。そこから俺は彼女に利用されていたことを悟った。

 多分彼女はこう俺を見ているだろう、

 --簡単に騙される馬鹿な男もいたものね。

 と。

 彼が彼女に騙された事に憤慨する暇はなかった。バイは勿論のこと、手痛いダメージから起き上がったショウとチクが彼に近寄ってきて、

「名前は変なあだ名で呼ぶし、お前のせいであの女に金を取られたじゃねーか!」


「いやただの八つ当たりだ!誤解したことと名前を間違えて呼んだことは謝るが、金に関しては知らない。」

 真っ当な正論を言った筈だが彼らは聞く耳を持たない。余程の事がない限り友好的に解決することは難しそうだ。一人ずつ倒すのであればどうにか対応できたが、三人で一気に襲い掛かって来られれば対応のしようがない。さらに相手は警戒を緩める気は無いようだ。残念なことに頼みの綱の竹刀は三人の後ろにあった。いや待て、竹刀があったとしても三人を同時に相手取るなんて無理な話だ。


 彼は詰みを確信した。奇跡が起こらない限り、彼はこの状況から抜け出せないだろう。

 --異世界に来てこの結果かよ。

 万事休すと思ったその時、

「三対一は卑怯よ!」という別の少女の声が路地裏の中で響いた。


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