prologue 戦闘
佐久間凛空は、石造りの倉庫の中で戦っていた。戦っている相手は、黒いとんがり帽子を被り、黒いロープを着ている、典型的な姿をした魔女と、得体の知れないどこか無機質な姿の元人間×3とである。
残念なことに佐久間凛空はこの世界に来て、何か特殊能力も与えられることもなかった。精々頼りになるとすれば日頃から鍛えていた身体能力と17年間の人生で覚えた知識と知恵だけであった。魔法も覚えれば使えるかも知れないが、魔法の使い方を知らない。凛空は都合のいい奇跡が起こらないことを嫌という程知っていた。
「何でも自分の思い通りに行くもんじゃないな、人生って。」と独り言を呟き
--こんな強そうな奴と戦わず、逃げたい…
というのがリクの本音であった。しかしながら、一人の少女が魔女の後ろの地下室に捕らえられており、もし逃げたら彼女に何をされられるか分からない。自分の正義感が自分の逃走本能を抑えていた。戦闘に役立ちそうなこは一緒に助けにきた彼女と契約しており、魔法を使える精霊と精霊が魔法で取り出した剣だけであった。
「ファギギャー・ドーク・ツカブド!」と魔女が唱えた。
少なくとも当たったら人間が即死するであろう温度の火球が高速で飛んできた。凛空は間一髪で躱すことに成功した。
リクはアイツらを倒すための作戦を練るための少しばかりの時間を手に入れた。
リクは、記憶の中から使えそうな知識を引き出しながらこの世界に来てからのことを思い出していたのだった。