第6話 生まれ変わり
「そしてその世代から子供達に伝えられていくのじゃが、人間側がワシらに干渉してきてのぅ……」
「人間が……?なんで?」
「竜の伝承が伝えられていくと、人間の生活が脅かされると考えたのじゃろう。気持ちは分からんでもないが……」
亜人の中で竜の伝承が伝えられていくと、復讐心を煽りかねない事に気が付いた人間が、初めの頃は復讐される恐怖から亜人たちに干渉し始め、今回のような見せしめを行うようになったのだ。竜の話をする者はこの者と同じようにこの世から消される、と亜人たちへ牽制しているのである。
しかし冷静に考えれば、人間から脅迫されてるこの状況こそ復讐心を呼び起こしそうなものだが、人間とはいつまでも優位な立場にいたいという欲に支配された生き物だった。いつの間にか復讐される恐怖から他種族を支配する喜びに感情が染まっていったのだ。
「……そっか。……ん?ちょっと待って」
「なんじゃ?」
「竜の子で、この世界初めての亜人が磔にされて殺されたんだよね?……ならどうしてこんなに亜人がたくさん存在しているの?人間が魔物を受け入れるとは到底思えないし」
シグロの当たり前の疑問に、ジョーが驚きつつも答える。
「それはの、竜の子が何度も生まれ変わっとるからじゃよ」
「……それって……」
「流石に分かったかのぅ。……お前がその生まれ変わりの可能性が高い」
驚きを隠せないシグロ。こんな生まれも育ちも貧相な僕が竜の子の生まれ変わりであるはずがないと否定しつつも、シグロ自身に思い当たるフシがあった。
「……スキル」
「スキルがどうかしたのか?」
「……身に覚えのないスキルが沢山あるんだ」
「スキル毎生まれ変わっとるというのか?なんとも凄まじいのぅ……」
スキルとは本来生まれ持つものではなく、鍛錬した後発現してくるものである。シグロ自身も子供ながらに鍛錬していたおかげで、ある程度のスキルが身についてはいたのだが、種族鑑定の際に覚えのないスキルが多数発現したのだ。
種族鑑定には自覚作用があるようで、そこで初めて発現するスキルがあったりもする。土竜系人型の子供に暗視のスキルが発現したりするのが一つの例である。
「……本当に生まれ変わりなのかな……全く実感ないんだけど」
「まぁスキルの話を聞いた限り、ほぼ間違いなさそうじゃがの」
「……面倒くさくなりそうだなぁ」
心底憂鬱そうに自分の将来を悲観する5歳の子供。シグロは人と関わり合うのが心底苦手なのだが、またそれは別の話である。
「まぁそんなに悲観することはなかろう。苦労せずして数多のスキルを手に入れたんじゃ。自分の人生ナンジャカラ楽しんでみぃ」
「……爺は他人事だからそんなに楽観視できるんだよ……はぁ」
「……お前がたまに頭良さそうな話し方になるのも生まれ変わりの影響かの?」
「……それは爺とフロウさんのせいだろ」
「ほっほっほっ。お前はワシら以外とは極端に話さんからのぅ」
自分の人生について憂鬱そうに語るシグロだが、スキルについてだけ言えばかなり好奇心を擽られていた。そもそも刀剣スキル以外はほとんど種族鑑定の時に発現したばかりのスキルなので、興味が尽きないのだ。
槍を持てば槍棍スキルが自然と使えるのか、はたまた魔法スキルを使えば魔法が放てるのか、5歳の好奇心を擽るには十分の素材たちであった。
「……ちょっとそこの煉瓦借りても良いかな?」
「あぁ、しかしどうするんじゃ?」
「……少し試したくて……ねっ!」
シグロの右手に握られた煉瓦は粉々に砕けた。身体強化の魔法を使い煉瓦を握り潰したのだ。予想以上に自然体で使える事に喜ぶシグロだが、同時に驚いてもいた。
「お前、それ後で掃除しておくんじゃよ。床を汚してからに」
「……身体が覚えてる……?」
「……シグロ聞いとるのか……っ!?シグロ伏せえぃっ!!」
突如頭を掴まれ床に叩きつけられたシグロ。ジョーが咄嗟にシグロを床に抑え込んだのだった。何が何だか分からないままジョーの顔を覗くが、その顔は汗だくで壊れた窓の外を睨んでいた。
「……爺、窓が割れて……っていうか何がどうなって?」
「ここにおれシグロ。絶対出てくるなよ」
覚悟を決めたジョーが、家の外へと歩き出す。シグロはそれを見つめている事しか出来なかった。
「どういうことか答えてもらおうかのぅ?フロウよ」
話がグシャグシャで読みづらいですね
すみません。