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竜系人型  作者: 根尾栗鼠
10/12

第10話 村発見

「これは、ヘステルの場所を知ってて歩いてるよね?」

「……知らん。そのうち着くだろ」

「いやいやっ! さっきから変だと思ってたんだよ!」

「……」

「かなりの音痴……なの?」

「……」




 ハイロと行動するようになった翌日の朝、いつも通り鍛錬を行った後ヘステルを目指し歩き始めた。森の中のお陰か暑さはそれほど感じないが、いつまで経っても村の"む"の字も見えて来ないので、とうとうハイロが痺れを切らした。




「……お前は知ってるのか?」

「僕は知らないよ。元々森に出た目的が違ったしね」

「……はぁ。ほんと何しに来たんだ」

「それ、君が言うかな!? 準備不足すぎるでしょ!」

「だから嫌なら帰れ!」

「帰らないよっ! ……しょうがないかな……」

「……?」




 ハイロがボソッと呟いたかと思えば、足下に魔法陣が現れる。通常、魔法を行使するとなると体内で魔力を循環させ練り上げて放出していくのだが、魔法陣が現れる類の魔法はその場で何かを創り上げる現象だったり、魔法陣が接している物の属性を利用したりする場合が殆どである。

 稀に大魔術師と呼ばれるような者が、大きな魔法陣を使いその大きさに比例した規模の大魔法を行使することもあるが、それは本当に選ばれし者のみが使用できる類のものだ。




「サーチ・バード」

「……」

「おはよう。さぁ、村を探してみようか」

「……召喚じゃないよな?」

「探索魔法だよ。鑑定後に発現したんだ。結構便利なんだよね」

「……語りかける意味は?」

「き、気持ちの問題なんだよ! それはっ!」

「……必要はないんだな」

「……ないね……」



 恥ずかしそうに俯くハイロを横目に、先程の探索魔法を眺めるシグロ。その時、ふとした疑問が浮かぶ。




「……鳥型が基本なのか? それともあの型しかないのか?」

「……あれは中級だから鳥型固定だよ。上級の魔法は初級の犬型と、今の鳥型を複数放って各方位探索出来るんだ。僕はまだ魔力が少なくて上級には届かないんだけどね」

「……あるかなぁ」

「? 何が?」




 徐ろに眼を閉じ瞑想に入るシグロ。そして身体が赤色に淡く光ったと同時に眼が開いた。何やら欲しいものを目の前にした嬉しそうな少年の笑顔を浮かべている。




「さすがっ!」

「! き、急に大声出さないでよ! ビックリした〜」

「……あぁ、悪い。それよりこれ見ろ」

「何を……えっ?」




 突如シグロの足下が光り、シグロを中心に半径5メートル程の魔法陣が現れる。そして、驚愕しているハイロを無視し魔法を行使した。




「サーチ・タワー」

「嘘……でしょ……」




 それは、その辺の山と変わらぬ程の高さで、まるで挑戦者を待つ1つのダンジョンのようだ。しかし侵入できるような門は見当たらず、ただただそこに佇む無骨で漆黒に染まった塔。頂上は三角錐型に尖り、その根本辺りに周囲を見回す1つの光。そこだけを見れば、さながら海にそびえ立つ灯台のようにも見えるが、塔の色がそれを真っ向から否定している。




「シグロ……底がないよね」

「……いゃ、あるよ。特級はまだ1日に3回しか発動できないから」

「十分だけどね、ははっ……」




 真実を語るなら日に5回までは発動出来るが、ハイロを信用していないシグロの慎重さが伺える。敢えて少なく教えておき、不測の事態に備えているのだ。

 そもそも、ハイロの実力は以前襲ってきた賊よりも数段上であったのに、その時シグロに助太刀する事もせずことの成り行きを静観していたのだ。呆気にとられていたというのも嘘ではなさそうだが、本心は別にありそうだった。




「……そんな事より、あったぞ」

「そんな事って……。で、どっちかな?」

「……向こうだな」

「その方角は……全く逆方向だったじゃないかっ!」

「……知らん。見つけたんだからもう良いだろ」

「ちょ、待! 申し訳ないとかそういう気持ちはないのかなぁ!」

「……」





 ハイロの主張を受け流しつつ村の方角へ向かうシグロ。しかし、その向かった方角も少しズレていた為か村に到着したのは日が落ちるギリギリになった。




「もう少しでもう一泊野宿するところだったけど?」

「……結果着いてるんだ。文句言うなよ」

「ホント、どんな神経してるんだか……まぁ良いけどね」




 全く悪びれる様子もないシグロに呆れ返るハイロ。既に何を話したところで無駄だという事に早々に気付いたのは幸いだった。いちいち反応するだけ無駄なのだ。




「良かった。人もちゃんと居るみたいだね」

「……泊まれる所があるか聞いてきてくれ」

「は? なんで僕が……ってまぁ順当か……」

「……よろしく」




 シグロは元は貧民街出身の孤児である。人との関わり合い等は滅法苦手なのだ。その点、名家グリズ家の長男ハイロにしてみればそんな事は朝飯前であった。




「すいません、村の方。僕達泊まれる場ーーー」

「帰れ」




 凍りついた営業スマイルがガラスが割れるように崩れていくハイロ。こんな森の中にある村にしてみれば、名家だの貴族だの関係ないのだ。



「……しかし、それにしても妙だな。なぁ役立たず」

「好きに呼んでくれ……」

「……ちっ。……おいそこの婆さん。この村何があった?」

「そんな不躾に聞いて相手にーーー」

「最近不作でね〜、食料難が続いてるんだよぉ」




 外れそうになるくらい開いた口の塞がらない某御曹司。そんな事は無視してすぐに交渉に入る。



「……村の長はいるか? もし解決出来そうなら、ここに一泊泊めてもらいたい」

「ほやぁ〜逞しい子だねぇ。ちゃいとお待ちよ」




 シグロは交渉が苦手なわけではない。貧民街では、実力もそうだが交渉が出来なくては話にならなかった。ただの薬草に高額な値段を吹っかけられたりする事はザラにあるのだ。ただ、人との関わり合いが面倒なだけである。





「最初から自分で行けば良かったじゃないか!」

「……お前が失敗するのは想定外だった。人当たり良さそうな顔してるくせにな」

「俺だって想定外なんだからなっ!」




 そろそろ泣きそうなので止めにしようと周りを見るシグロ。すると、村の奥から杖を突いた仙人のようながこちらに近付いてくる。

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