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第1章 第63話 序章 愛を語るに至るまで②

 ──前回までのあらすじィ!

 時は世紀末! 光希志龍を含む愉快な仲間たちは核の火に飲まれた!

 地は枯れ、人は痩せ細り、世界は弱肉強食へと変り果てた。

 そんな中この男光希志龍は歩んでいた、この不条理を変えるべく、愛する者を取り戻すべく!

『世紀末覇者 光希〇拳』

 ⋯⋯はい、おふざけがすぎました。


 ──ゲームを始めるとしよう。

 男は俺に聞いた。


「ゲームの内容は?」


 俺はカバンから新品のトランプを取り出し男に渡す。


「俺達もちと急いでる、ゲームはブラックジャックにしよう」


「ほぉ」


「そーだなー、ディーラーはおっさんでいいよ」


 運ゲーかつ早く終わるゲームであり、()()()()()()()()()()()()()

 彼はカードを取り出して不正品(マジック用トランプ)じゃないか確かめる。


「どーやら仕組まれてはいないようだな」


「はは、おっさんそんな簡単な仕組みをしても暴かれるし面白くないじゃん、どーせ仕組むなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()やらなきゃ意味無いだろ?」


「ふん、言ってろ、いいぜ俺がディーラーをしよう」


 それは間接的にも「今からイカサマをします」と言っているもの、暴けるものならやってみろと言わんばかりのメッセージだ。

 流石の彼もこの一言には顔を引き攣らせた。

 ──そうだ、もっと俺を注目しろ。そして尚且つ()()()()()()()()、そうすれば俺は勝てる。

 不敵な笑みを浮かべながら主権者(ゲームマスター)は仕込みを続けた。


【ブラックジャック】


【ゲームは単純明快、ルールは通常のブラックジャックと同じ】

【チップは1000とする】

【勝利条件はチップを全て失うorゲーム終了時点でチップの総金額が高かった方】

【ゲームは最小で8回最大で13ゲーム、つまり一回山札が無くなるorゲーム続行不可能枚数、つまり3枚以下になれば終了】

【尚、賭け金は通常勝利で等倍、ドローはそのまま、ブラックジャックで2倍とする】

【ゲーム中、ルール違反とみなす行為をした場合、発覚の時点で負けとみなす】

【以上のルールを両者の合意の元、絶対厳守の規約とみなす】


「ルールはこれでいいな?」


「ああ、勿論」


「──飲んだな?」


「? どうかしたか?」


「あ、いや、こっちの事だ、それはそうとして一つ言っておこう」


()()()()()()()()だ」


「言っとけ餓鬼」


 そう言って親である彼はカードをシャッフルする。

 シャッフルし終えて机に置く。


「準備は出来たな?」


「勿論」


「んじゃはっじめましょー」


 かくして、()()()は始まった。


 ──数十分後

 状況は見る人からしたら悲惨なものだろう。

 八戦三勝五敗、残りチップ250、全く負け越しているよ。

 そしてカードの残り枚数からしてこれが最終ゲームだ。

 男は俺に憐れむような目で見る。


「悪いな、いい線までいってたけどもう無理だな、ゲームで当たるやつが悪かったんだよ」


 勝者の余裕、言葉の圧が、口調が物語っていた。

 だが、次の瞬間その顔は青く冷めた。


「ゲーム? おっさん何言ってんだ? こりゃ()()()()()()()()


 俺は嗤った。男は舌打ちをして目を逸らす。

 勝ちを確信した筈なのにそれでも尚残るのはこの疑心暗鬼だ。──勝っている筈なのに何故だ? ()()()()()()()

 そして志龍が放った次の言葉に男やその周りにいた人達も戦慄した。


「カードの枚数的にこれが最終ゲームだ、どうだ? 男比べでもしないか?」


 そう言ってチップを全て前に置く。


「残りの250枚全て賭ける!」


「正気かお前ぇ──ェ!」


 ──ああ、至って正常だとも。心拍数、脳波、体温、運動能力、全てにおいてパーフェクトな状態であるといえる。


「いーや俺が聞きてぇのはそれじゃねえよ! お前のその(狂気)はなんなんだ!?」


「え? 頭っすけど? え? 何です、他のものに見えるんすか? え、こわ~い」


 煽り口調で新キャラ設定(即興煽り大好き後輩)をする。──全く、自分でしていても恐ろしく気持ち悪い。


「おっと、お喋りが過ぎたようだな? どーするんだ? いもる?」


 はっ、と鼻で笑った。


「乗ってやるよ、後悔はすんなよ?」


「後悔? する必要は無いぜ、何故ならあんた今から負けるんだから」


 ──山札から二枚カードが渡された。俺はそれを見ずに前に出す。


「チェンジは?」


「要らないよ、だって──」


 カードをめくる、男の顔が見る見る間に青ざめていくのがわかった。

 そこにはスペードのAとスペードのクイーンがあった。つまり──


「ブラックジャックだ」


 総取り、俺の手持ちは1000チップとなった。

 勝者は紛いもなく、誰が見てもわかる。

 ──俺だ。


「ウォォォォォ──ォォォォオ!! マジかよ! やりやがった!!」


「ガンさんに勝てるやつなんて居ないと思ってたらこれだよ!」


「────全く、言葉が出てこねえよ⋯⋯⋯⋯」


 歓声が上がる、勝利の余韻と呼ぶには甚だ疑問ではあるがその歓声はここに来て初めて心地よい空間であると俺の心が告げた。


「──何故負けた?」


 静かに悔しそうに俺を睨みガンと呼ばれる人物は言った。


「さっきも言ったろ、これは──()()()()()()()()


「はぁ?」


 戯言だと聞き流していたのだろう、俺は一から答え合わせ(ペテン)をしていく。


「んまあ、俺が使ったのはカードカウンティング、ただそれだけだ」


「カードカウンティング?」


「それって、出たカードを記憶して次来るカードを予想するってやつか?」


 とハルが言う。──さっすがーと心の中で感心する。


「せいか~い、んまあ、少しやり方は違うけど概ねハルが言った通りだ」


 けどそれは──


「ハウスルールによってはルール違反に接触する」


「そうだ、そして今お前はそれを認めた! 俺の勝ちだ!」


「え? それは無いぜ」


 想定内のセリフを言われ思わず笑ってしまった。

 その顔にまたガンは焦燥を隠せなかった。


「だってルールの時言ったよな()()()()()()()()()()()()()()()()()、つまり、()()()()()()()()()()()()()


 まさに一本取られたと、そういう顔をしていた。


「それに俺だってアンタのシャッフルトラッキングを見逃してやってんだ、譲歩してくれよ」


 バレていないと思っていたのだろう、青天の霹靂、男は開いた口が塞がらなかった。


「それにするっていうのは分かってたし、そっちの方がやりやすいからありがたかったぜー」


「は? な、何で分かったんだ?」


「ん? なんでも何も()()()()()()()()()()()()、分かるも何もって話じゃねーよー」


 その場に居合わせている全ての人が驚いた。


「え? ど、どういうことだ!?」


「俺はまずお前に新品未開封のトランプを渡した」


 ──理は最も明確にシャッフルトラッキングが出来るからだ。


「そして俺はディーラーを譲った」


 ──理はそうしなければイカサマは出来ないから。


「その後、ちょーっとだけあんたの自尊心を煽った」


 こっちからやるぞと言っているんだ、少しイラッとするはずだ。


「だがあんたはそこで冷静になる、理由はあんたの戦績が物語っている、この程度の煽りに苛立ちを覚えているようじゃギャンブラーとして三流(アマチュア)だ」


「だがそうとは言えども火がついてやられたら(イカサマは)やり返す(イカサマで返す)、なら親で出来ることなんて限られる」


 勝利を確信して満面の笑みを浮かべる。


「シャッフルトラッキングとな」


 男は悟った、──こいつはゲームの最初から、いやもっと前、ここに来た時からチェック・メイト(勝利宣言)を決めていたんだ! 怪物だ、いやそんな言葉では形容し難い。怪物なんぞこれの足元にも及ばない塵芥同然だ。

 怪物はゲームを始める前に勝負をつける、だがあいつは前の前に勝負をつけた、そしてあの時! だからあの時あいつはチェック・メイトと言ったんだ!

 未来予知に等しい技、常人ができる芸当ではない。


「お前、まさかとは思うが、未来予知してんのか?」


 俺は首を横に傾け──


「はぁ? 未来予知なんて出来るわけないっしょ」


 ──それに、俺は言ったはずだ。


「チェック・メイト以前に()()()()()()()()()()と」


 最初から誘導しきって、勝つべくして勝つ、勝利が確定しているゲームなどゲームに在らず、言うなれば作業をしているに等しい。

 1+1の答えが2であると言っているのと同義、決まりきっているから言いきれる事、だから違うのだ。


「わりーな最初からあんたは詰んでるんじゃなくて終わっていたんだよ」


 チェック・メイト、これは王手とは意味が異なる。

 王手とは今から王を討つ合図であり、チェック・メイトは討ち取ったという報告、つまり言われた時点で男は負けていたのだ。

 男は息を呑む、──こんなやついていいのか? ありえない、神の所業を超えている。


「あんたにゃー勝てねえよ⋯⋯」


「ははっ、当たり前だろ? ゲームで勝つのならともかく、俺にゲーム以外で勝つなんて不可能だぜ」


「はは、全くだ、ゲームでも勝てる気がしねぇよ」


 悲壮感を漂わせながらも少し明るい笑顔を見せた。

 ──その間に向こうも盛り上がってきたな。


 ──ゲームが始まる前


「美穂、お前ちょっと適当なやつ引っ掛けてゲームしてこい」


「はぁ!? 嫌に決まってるでしょ! 何言ってんの?」


「ここに黒魔道教の監視者が居る、そいつを暴き出す為にも必要だ」


「で、でも⋯⋯」


「大丈夫だ、もしもの時はゲームを投げ出してでも助けに行くし、それに()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ──そう、負けるわけが無いのだ。

 俺との戦績1086戦、1086勝0敗、堂々の俺全敗。

 だからこそ言えるのだ、みほが負けるわけねーし、美穂じゃ無きゃ暴けねえ。


「⋯⋯⋯⋯いいわやってあげる」


「ほ、ほんとか!?」


「但し、絶対助けに来てよね」


 俺は頭を撫でながら──当たり前だ。と言う。


「分かった、やってくるわ」


 そう言って立ち上がった。


 ──正直気が乗らない。

 それもそうだろ、だってさっきあんな目にあった所だ、乗らなくて当然、至極まともな考えだ。

 でもそれでも頼まれたんだ、やりきろう。


「あ、あの⋯⋯ゲームしましょ⋯⋯」


 一人の男に喋りかける。

 男は私を見てびっくりしてその後にニヤニヤと笑ってきた。


「嬢ちゃん、ゲームをしに来たんだってな、対価はなんだ?」


 心臓の鼓動が早くなっていく、呼吸も荒い、嫌だ、やっぱり逃げ出したい、こんな所居たくない、帰りたい、無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ────。

 無数の無理が頭の中で浮かんでいた、だが思考を止める物が目に入った。──チェス?

 私はその瞬間、力が抜けた。


「そうね、貴方達はその金を、私は自分でどう?」


「⋯⋯正気か?」


「あら、そう見える?」


「いいや違うね、それにそそらねえ」


 男は苦笑いをする。そそるに関して異議申し立てと共にぶん殴りたい気持ちはあったが心の中に止めておく。

 台のチェスを指さす。


「そうね、ゲームは早指しチェスにしましょ」


「いいぜ、回数は?」


「おたくらが負けを認めるまで」


 男の眉が動く、負けを認めるまで、つまり認めない限り勝負は続く、そして私自身驚くべき行動に出る。


「一度でも勝ったらおたくらの勝ちよ」


「てんめぇ正気か?」


「どこからどう見ても優等生かつ才色兼備の女子高校生でしょ?」


 ──天然ボケで皮肉を込めてやった。

 私が定めたルール、見ての通り回数制限無しで一度でも負ければ敗北。ルールとしてこの上ない不利なものだ。

 ──それにこれくらい()()()が無いと面白くない。


「どうやら負けたいようだな」


「あたしが負けるとでも? ゲームで私に敗北の2文字は──」


 余裕綽々に見つめる。いや相手を見詰める。


「あるわけないでしょ」


 最強のゲーマーとしての誇りか故にこの言葉が出てしまった。──全く恥ずかしい事を言った、それでも今更訂正する気にもなれないし、反省する気も毛頭ない。

 手駒を並べる。


「なあ、嬢ちゃん何者だ?」


「どういう意味?」


「ゲームに自分を賭け、そして一回でも負けりゃ敗北、どう考えたってアウェーなルールだし、発想が狂っていやがる」


「⋯⋯ねえ、今の実力でチェス世界最強に挑む時、ハンデって欲しい?」


「欲しい」


「そういう事よ」


 舐め切った口調で私は言う。実際、ネトゲのチェスで世界チャンピオンに成り上がった、そんな自分に挑むんだ、ハンデくらいあげてもバチは当たらないしむしろ尊ばれる行為だと思う。


「さて、始めましょ?」


「ああ、いいぜゲームを始めるぜ!」


 ────弱すぎる。

 弱すぎる、この試合に勝てば私の21勝0敗、あ、もうついた。


「チェック・メイト」


「⋯⋯⋯⋯負けた」


「うぉぉぉぉ!! また勝ちやがった!」


「この嬢ちゃん何者だよ⋯⋯」


「なんで、不正もしていないのに、何故ここまで勝てる⋯⋯」


 不正で勝てるなどあるわけないんだ。一つの打ち筋に一つの最善の手がある。

 それにチェスなんぞ不正の手が無い。つまり純粋かつ戦略的なゲームである。

 そして無数の最善の手を紡ぎ、その先にある約束された勝利を掴む。


「まだやる?」


「ああ、勿論」


 悔しそうに彼は呟き駒を並べる。

 ──さて、人も集まってきたんだし志龍、頼んだわよ。



 完全に向こうに注目が集まった頃、小声で話しかける。


「ここからは大きい声を出すなよ」


「⋯⋯分かってる」


「まず黒魔道教が来たのはいつ頃だ?」


「⋯⋯一年前だ」


「それでここを根城にしたわけか」


「そうだ」


「なら次に、あいつらが持っている鉱山は幾つだ?」


 その質問に俺以外の皆が驚く。


「ど、どうしてそれを!」


「し、志龍! どういうことだ!?」


「鉱山を持っているだと?」


「もっと小声でこっちに寄れ」


 皆を近くに集める。


「考えたらわかるだろ、そもそも何で一人抜けただけで潰れるんだ?」


「そ、それは⋯⋯そうだとしても鉱山が──あ!」


「気がついたか、正直こっちが壊滅させた原因だろ、ドルフに依存していたとはいえそこが無理でも他の鉱山を使えばまだ辛うじてというか普通にヘーパイストス一派は続けていけただろ。でも続けていない、黒魔道教、そしてここを根城にしている理由、当てはまるだろ」


「な、なるほど⋯⋯」


「感心してる場合か、どれくらいだ?」


「殆どさ、五個近くにある内の四つは取られている」


「根こそぎ持っていきやがったんだな」


「その通りさ、だからこうなってんだ。奴らが来るまではまだ存続できた、それでも⋯⋯あいつらが全てを奪っていったんだ────師匠もだッ!」


 ──師匠、聞き捨てならない台詞が出てきた。


「師匠を奪われた? どういうことだ?」


「⋯⋯半年前、師匠は()()()()()()


 その一言に一同は絶句する。

 尚も淡々と彼は話を続ける。


「ずっとだ、師匠だけは反発していたんだ。間違っている、立ち上がろうと、まだ負けてねえだろとな、そして皆が反乱する気を駆り立てた矢先にだ──師匠は危険因子として裁判という名目の処刑宣言を告げられた後、磔で殺された⋯⋯」


 一種の見せしめだろう、反乱因子の元をこのように始末する事で皆の意思を押さえつけ無駄な事をさせぬようにする為の行為だったのだろう。

 だが、ここで一つ疑問だ浮かんでくる。


「師匠はなんでその裁判に応じたんだ? 別にそうしなくても良かったのでは?」


「人質を取ったんだよ」


 ああ、くそったれと唾を吐き捨てたかった。


「交換条件は裁判に応じてその判決を素直に受け止めろという事だったんだ⋯⋯」


 いつしか彼の目には涙が浮かんでいた。


「師匠はよ⋯⋯すっげーお人好しだったんだよ、俺なんてよ元々その辺にふらついている馬鹿みたいなやつだったんだよ、それでも拾ってくれて世話してくれたんだよ⋯⋯誰よりもお人好しで誰よりも尊敬できる人だった⋯⋯憧れだったぜ、でも同時に適わないって思ってたんだよ、そこがまたあの人のすげー所だったんだよ⋯⋯」


 遠くを見つめ彼はそう言っていた。


「あの事件の後、皆この職を辞めたんだ、俺もその一人だ、でもよ⋯⋯師匠に背中向けたのは分かっている、顔向けできねぇのは分かってる、そしてそんな俺らを笑顔で抱きしめてくれるあの人がいるのは分かっている、だからッ──! だからこんなにも悔しいんだよっ!」


 ──いい歳だと思う、そんなおっさんが公衆の面前で泣いている、普通ならおかしいと思う行為だ。だがその涙は美しいくらいに透き通っていてこっちにもその感情が伝わってきた。


「⋯⋯すまねえな、要らねえこと聞いてしまって」


「いや、いいんだよ⋯⋯他に聞きたいことは無いか?」


 ──そうだな、と悩み俺は口にする。


「もし、あいつらが居なくなったらどうする?」


「⋯⋯もう一度ヘーパイストス一派に戻るかな⋯⋯」


「言ったな」


「え?」


「ハル、シフォン、分かったか?」


「ああ、押さえてくる」


「任せて」


 そう言って二人は立ち上がる。


「おっさん、俺達はよあのクソ集団に恨みがあるんだよ」


「お、おう⋯⋯」


「おっさんとかのも合わせて一万倍にして返してやるよ」


 ハルとシフォンが二人の男の身柄を押さえる。


「あれ、監視者だろ」


「な、何で⋯⋯」


「盛り上がってもいねえこの台を見続ける意味があるか?」


 ──美穂の方が盛り上がっているのにそれを見ずにこっちばかり気にしていた、というか聞き耳を立てていた。


「あんなバレバレの行為してりゃそうなるぜ」


 そう言って俺は二人の肩に手を置く。


「今から正直に話せ、さも無くは──」


 と言って肩を少し凍らせる。


「氷の彫刻になるぜ?」


 二人の顔が青ざめる。


 ──大体の話が聞けたところで俺は二人から手を離す。


「おっつかれさーん、帰ってあのど阿呆に言っといてくれ、手前らに宣戦布告だってな」


 ──そう言い残して俺はその場から離れる。

 おっさんに賭けるまでも無いって言われたヘーパイストス一派の元に連れて行ってもらう事にした。


「おーい美穂もういいぞー」


「ん、そうなのー?」


 そう言って恐ろしいスピードで相手を追い詰め勝つ。

 ──恐ろしく早い一手、俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「もう止めておくよ、勝てる気がしねぇよ」


「あら、そうなの? こっちも用事があるしまたねー」


 美穂はすっかり上機嫌になっていた。

 久々に楽しいゲームができたのだろう。ここの所トランプで美穂は俺に全負けしていてストレスが溜まっていたところだから。


「んじゃ、行くぞ──って! お前危ない!!」


 後ろから猛スピードで先程の二人組がナイフを持ってやって来た。


「に、逃げろ────!」


「──たっく、大人しくしてれば逃がしてやったのに」


 後三歩と迫った──


「『絶対零度の(アブソールゼロ)領域(リージェン)』」


 二人は氷の塊に成り果てた。

 周りで見ていたものが一斉に腰を抜かした。


「おいおい、この程度で驚くのか?」


「そりゃそうだろ、えげつないもん見せられたよ⋯⋯」


 腰を抜かしながらガンはそう言った。

 暫く歩いていると古びた一軒家が見えた。


「あ、一つだけ言っておくぞ」


 とガンが険しい表情になる。


「あいつを見てどうか頼む、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そうとだけ言って扉を開けた。

 失望? 信じる? 一体何が言いたいのか全く──


「にゃァ? お! おお! ガンじゃにゃいか! 久しいにゃ! なあ金貸してくんにゃいか? 軍資金にゃくなって」


「お前はそろそろギャンブルを止めろ」


「いーやーだーにゃー!」


 駄々を捏ねるは猫耳をした女の子だった。

 こちらの存在に気がついたのか興味津々にこちらに近づいてきた。


「にゃ? お客かにゃ?」


「そえだ、お前に制作依頼をしたいらしいぜ」


「にゃ! にゃんと! オイラに依頼にゃか!?」


「そ、そうです⋯⋯」


 が、我慢しろ志龍。


「そうかにゃー! 嬉しいにゃー!」


 元気ハツラツに笑顔で腕を絡めてきた。

 やばいっす、いろんな感触が、息遣いが、生に、しかも近くで! や、やばい、理性が──ッ!


「にゃにゃー? どうしたのかにゃ?」


 烏滸がましいお願いだとは思っている、それでも、俺は、俺は──ッ! 繋ぎ止めてきたもの(理性)が切れる音がした。


「すんません! 一度でいいんでその猫耳の頭撫でさせてもらえないでしょうかァ──ッ!」


 ──理性が、わいの理性がもう持たんくなってもたわ。

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