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第1章 第47話 序章 結末は予想できる

 結末とは、始まる前から決まっている。

 物語にしてもこの世界にしても、始まりがあれば終わりが来る、そして結末は始まりと共にあり表裏一体の存在だ。


「だからこそー、この勝利も決まっていたことなのですよー」


 勝負はすぐにはつかなかった、いやさっさと終わらせてもよかったのだろう、でも何となく結末が決まっているこの勝負で彼女がどれだけ足掻けるのか私は興味が湧いていた、そしてその興味を満たすためわざと手を抜いた。


 地面を踏みしめる音がする、彼女は余裕そうな表情見浮かべて私を見据えた、


「殺しはしません、ですが御庭番として全力で排除という形を取らせていただく所存、少し痛い目を見ますよ」


「それは楽しみなのですよー」


 彼女の体と服から忍と言う奴らが使う「クナイ」というものが両手合わせて6本出てきた。

 ジャリンと金属音を鳴らしその重厚な鉄の塊を3本、私に投げてきた。


「氷の壁を守りたまへ「氷壁(ひょうへき)」」


 厚さ10cm程の壁が3本の鉄塊に壊された、前を見るとそこにいたはずの彼女がいなくなっている。


「そこには私は居ませんよ」


 後ろを振り向くとそこには先程まで目の前にいた彼女が今度は短刀を持って後ろに立っていた。

 そして走って距離を詰めて


「隙あり」


 私の腹を刺そうとした。

 そう、しただ、短刀は私の財宝の盾により防がれた。


「どうなのですよー? 龍の盾の感想わー」


 本気で力を加えているのはわかる、だが盾はビクともせずそこで私を守っている。


「ぐっ、流石に分が悪い!」


 と一旦引いて距離をとった、そして私を見据える目が一層険しくなり、どうやら「お気の毒」のような私に対する同情する感情が消えてなくなったようだ。


「さて、今までは序の口、これからは少々手荒くなりますのでご注意を」


 そう言って彼女は建物の屋根に乗った、そして向かい側の屋根に乗り移る、次は斜め前に、次は右斜め後ろに。

 だんだんと速度が早くなる、次第に彼女という原型を留めないで何か黒いものがあちらこちらを飛び回っているように見える。


「面白いのですよー」


 面白かったのでしばらく眺めているとだんだん黒いものも見えなくなってきた、動きが早すぎてそれすらも見えなくなり音だけが聞こえるようになった。


「忍法、神隠し」


 後ろに居るのか前に居るのかも分からない、まさに彼女が神隠しにあったみたいに居なくなった。


「さて、面白いのはここからですよ」


 クナイが1本飛んできた、どうってこともないので龍の盾で防ぐ。


「んー? 何が面白いのですかー?」


 と言うと彼女は動きを止めて少し離れた位置にある建物に姿を現した。


「設置は出来ました、後は降ってくるだけですよプレアさん」


 まさかと思い空を見上げる、


「あーそういうことなのですかー」


 黒く光るその武器たちは回避不能という絶望と共に空から地に向けて降り注ぐ。


「御庭番伝承忍法『時雨(しぐれ)』」


 回避不可能の攻撃を私は眺める、1つ1つの殺傷能力はそこまで高くはないがまともに全てくらえば重症どころか肉片になるかもしれない。

 だが私に当たるものはもう1つ殺傷能力は低いもの、つまり死にはしないものが当たるという訳だがまあ勝負は負けになるだろう。


「なるほど素晴らしいのですよー」


 私は思わず感嘆の声を上げた、それに浮かれたのか彼女は一言、


「これにてお粗末」


 勝ちを確信して後ろを向いた。

 さて戦いにおいて後ろを向くという行為をするという事は恥だ、まだ彼女は


「未熟者」


 盾が変型する、テントのように私を覆いかぶさり攻撃を防いだ。

 余興はすんだ、


「戦いの間に慢心するとはとんだ未熟者なのですよ」


 私は宝物庫の鍵を開ける。


「武器はまだ持っているのですか?」


 問いかけに答えるように2本の短刀を手に持った。


「余の財を持って貴様のすべてを打ち砕くのですよ」


 財の扉は開かれた、小手調べに槍を千本取り出す。


「千の槍」


 降り注ぐは天からの戒め、王であった私に挑んだ、その罰を彼女は受ける。

 避けて、打ち流し、何とか攻撃はくらっていない、だが体力はどんどんと消耗していき、武器もまた消耗していく。

 千の槍が降り終えた所にまた次の刺客を与える。


(スケルス) 彼の者の(ざい)は私に挑んだこと、そして慢心したことだ、我が裁きを与えよう『裁きの剣 (イウーディカーレ)』」


 金色に光るその剣は罪人を裁く、意思があるかのように動き回り彼女を困惑させる。


「くそ! この!」


 防御をしながら剣を攻撃するが全く剣にはダメージはいかず、ついにはその小刀は折れた。

 そしてそのまま剣は彼女の腹を貫いた。


「ぐ! がはぁ⋯⋯!」


 大量に吐血をした、腹も貫かれて血が溢れ出し辺り一面血の海となっている。

 それを静かに見つめる、暫くはのたうち回っていたがやがて意識を失った。


「まあ致命傷は避けているのでそうそう死にはしないのですよー」


 と聞こえているわけがないが彼女に話しかける。

 脈は静かに打ってはいる、死んではいないし大丈夫だ。


「上級回復魔術 『ヒーリング』」


 魔術により腹の傷はみるみるうちに傷跡1つ残らず塞がった。

 彼女はまだ眠っているので近くの家に寝かしつける。


「はあ、一仕事終わったのですよー」


 勝つことは予想できた、少しは楽しめたしこの戦いで求めたものが全て手に入ったことは本当に良かった。

 だが


(スケルス)原点(オリジン)』を使うまでもなかったのですよ」


 罪とは私が最も恐れて私が最も憎悪に満ち溢れるもの。

 だからこそ、それは私に力を貸してくれる、私にとって最大の力はそれなんだ。

 でもそれにもいくつかの定義がある。

 それは具体的であるか。

 それは罪であるか。

 それは裁かれるものであるか。

 これが定義だ、定義を満たさなければ罪とはならない、力を持つことができないというわけだ。

 そしてそれは私が決める、私が全ての罪を裁くのだ。


「まあハルには使わないのですよー、ハルは罪なんか背負うわけないのですから」


 彼は私にとって正義の象徴、彼がイエスならそれはイエス、彼がノーならそれはノーになる。

 私に一筋の光と正義をくれた存在、彼が殺すのなら私もそいつを殺そう、絶対崇拝のような感覚だ。

 美穂も罪なんか背負うような人間ではない。


「でもあいつだけは⋯⋯あいつだけは違う」


 志龍、彼は罪を背負っている。

 具体的にと聞かれてもそれが何なのかは分からない、でも確実に彼は何かしらの、それも大罪に等しいものを背負っている。


「『原点(オリジン)』はすべてを裁く、それも罪が重ければ重いほど、それは強くなる。」


 でもまだ定義が完成していない、天をも揺らがす、王を脅かす、そんな罪なのにそれは罪として認められない。


「歯痒い」


 まあでもいい、今足掻いてボロを出すよりもゆっくりと着々と罪を固める、そして


「財宝と罪であいつを裁く、ハルにとって彼は邪魔な存在なのですよ」


 結末は予想できる、罪もまた始まりがありその結末もある。

 そろそろ他も終わっている頃だろう、そして全員勝っているだろう。

 ハルや美穂、そして罪がいる場所に戻る。

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