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第1章 第46話 序章 天を砕くものと無の極地

 白銀の髪が夜の風に当てられて靡く、月という夜を照らす絶対的な明るさをも凌ぐ異様な存在感。


「おいおい、何だこの怪物は」


 背丈など自分が3人いても勝てない、異様なまでに発達した筋肉は俺の腕なんか小枝の如く折ってくれるだろう。

 最近でいえば志龍以来だな、気圧されそうになる位の殺気を当てられるのは。

 だが志龍との戦いとは違うものがある。


「ひっさしぶりだねー、こんな楽しい相手と刀で語り合えるのは」


 志龍は決して剣士ではない、ライバル視をしているがそれはあいつの器に嫉妬した俺の妄執の念に等しいもの。

 俺は異種格闘技に興味なんて見ること以外ない。

 剣士との戦い、これを俺は求めているんだ。


「さーて、久々の求めていた戦いだ、遊ぶぜ」


 サルワは目下の餓鬼を見て、


「なぜローズクォーツを出さない?」


 気落ちしたかの如くため息をついた。

 少し目くじらを立てて答えた


「出す必要が無いってか俺がやりてえ、そんだけだ、それともなんだ俺じゃ役不足ってか?」


 その問に鼻で笑って


「最初に負かした相手は歯牙にもかけないのが私の主義でしてねえ」


 ああ、そうかと俺は悟った。

 彼は弱者と思った人とは戦わない、いや相手にしないことこそが美徳としているのだろ、それがたかだかアップ程度で戦っていたものであっても。

 意識や筋肉の硬直具合から見てもリラックスしているのではない、落胆をして隙を作っている。

 俺はその隙だらけの体めがけて走りかかる、砂煙1つ立たないそんな静かな走り、だが20メートル程の距離を刹那の瞬間で辿り着き、サルワの首に刀を当てる。


「どうだ」


 自分の美徳を馬鹿にされた、ならどんな感情に変化するか、そんなもの至極単純だ、


「若造がぁ!」


 怒り以外のなんでもない、そんなもの関係無いので笑いながら


「これで相手にしてくれるか?」


 白銀の髪が逆立つ、怒りに言葉が震え、その表情は鬼よりも険しいものになっている。


 一瞬にしてプライドに泥をかけられたことにサルワは怒りに震える、その張本人でありながらざまあみろと嘲笑う。

 長太刀を怒りのままに振り回す、筋肉を正しく使っているわけでもなく、一閃の様な速い振りをする訳でもない、言うならば素人、ただ力任せに振っているだけ。

 そんなものが当たるわけもなく首を切ろうとするその刀を左に持っている刀で止める。


「むぅ⋯⋯」


「どうした? こんなものか、あんたが言う美徳に泥を塗りつけた相手にする攻撃は、甘めえよ!」


 刀を振り払い、よろめいている隙に足を振り払う、バランスを崩し地面に叩きつけられる、今まで見下していた側の人間が負かしたと思っていた相手に見下される、それも俺は飛びっきり嫌味ったらしく残念がるように表情を変えて、


「何だ、こんなものか⋯⋯」


 と聞こえるくらいの声で呟いた。

 何も言わず、何もせずサルワはそこに寝そべっている、俺はそれを見てそして思いのままの言葉を吐き出す。


「サルワさん、正直あんたには幻滅したよ、人を見かけで判断するってのは上っ面しか見ていない、剣士として最低だよ、そしてこうして見下した相手に同じことをされる、どうだ? 気分悪いだろ?」


 俺は剣士であり別段、宣教師や教えを説く人ではない、だからこそ俺の剣士という思いの丈が話せる。


「『人を見かけで判断するのは剣士として二流、三流じゃねぇ、ただの棒振りだ』あんたなら知ってるよな? 『剣神 ヨルムンガンド』の言葉だ、あんた今ただの棒振りだぜ、だせぇな」


 言葉を吐き捨てるように言う、そして俺は後ろを向いて、


「もう戦う義理がねえ、この勝負、引き分けだ」


 そういい歩きだそうとした。


「!」


 刀が首元を掠めようとした、俺はそれを受け止めようとしたが力に押されて吹き飛ばされた。


「はっ!」


 少し笑みを浮かべて息を吐き出した、何か吹っ切れたのかスイッチが入ったのか、その目からは邪念が消え、ただ目の前の敵を倒す、そんな目をしていた。


「やれば出来るじゃないっすか──」


 ────つかの間の静寂がやってくる、嵐の前の静寂と言うよりかは一瞬で終わる演奏の前に誰しもがそれを聞き逃さないように聞き耳を立てそして静まり返っているようなものだ。

 砂を踏みしめる音がする、ジャリっとそれが合図かのように俺も踏みしめてそして足を踏み出す。


「尋常に!」


 サルワも一言


「勝負!」


 互いの刀が擦れる、交わり、それを繰り返し刀を交える、1秒にも満たない時間に千の太刀を交える、やがてその速度は増していき無限に等しい1秒、『虚構』を作り出す。

 刀を知り、刀を扱う者の極地、それが『虚構の時』、それを今過ごしている感覚がある、なんて心地がいいんだ、交える刀の音が、火花が、そして死という隣合わせのものが、ああ、勿体無いくらいに気分がいい。

 だが悲しきかな、感覚があるだけでそれは確信ではない、それは自分たちがいかにまだ未熟かを表すもの、つまりはまだそのステージに立っていないというわけだ。


「ふん!」


 力の伝導を極限まで高めて突きを放つ、それによりとてつもない速度での突きが喉元に向かってくる、サルワはそれを左に逃げたので右で持っていた刀を左に持ち替えて右足を軸に左足で踏み込み切りつける、左肩から右の脇腹を切り込んだ。


「ぐはぁ!」


 サルワが倒れ込む、深い傷跡、白かった体毛が赤く染まっていく、息も荒い、死にかけではないが体力消耗と出血により酸素と血液が脳にあまり行き渡らない状態となり意識が朦朧としているのだろう。

 さてこれは俗に言うサルワにとって詰みな状況だ。


「どーっすかサルワさん、あんたも中々に強かったっすけどここまでっすよ」


 サルワは荒い息を少し抑えて静かに


「そうですか、いやはやまだまだというわけですか私も⋯⋯」


「そんなことは無いっすよ、剣士としてちょっと俺が上手だっただけでサルワさんも充分に強いっすよ」


 そう言うと少し笑って


「そう言っていただけるとこの老体、もう少し鞭を打ってみる価値があるかもしれないですな」


 そういい立ち上がる、そして体勢を低くして強く一言、


「ハル殿、これがこの戦いでの最後の悪足掻きみたいなものでございます、私柄持っている技の中で最強を誇る一太刀にて御座います、どうかこの技、貴方の全力で一戦交えさせていただきたい!」


 そんなこと言われたらたまったもんじゃない、最強の技、是非とも交えたい、魔刀とその力で作り上げた最高の技、そんなもの聞くだけで笑が浮かんでしまいそうになる。


「いいぜ! 貴殿の最後の一太刀、我が刀の全力を持って交えよう」


 そして俺は改めて大声で名乗る、


「我が名は桐太刀晴人、我が名にかけて究極の一太刀て参る!」


「我が名はサルワ、この最後の一太刀、全てをかけていざ参る!」


 そしてサルワは詠唱を始める。


「天翔ける七龍、その力を持って天割るがわが刀、無我の境地に我が理想あり、ならばこの一太刀、無我の境地に達してみせよう」


 一歩踏み出す、その瞬間、彼の姿は消えた、そして彼の声が空に響く。


「一閃 『天砕(あまくだ)き』」


 神速に近づいたその突きは見事なものだった、だがそれは俺から言わせたらまだまだだ。


「──流派 第1の秘技『無空』」


 決着はついた、その一撃ではまだ辿り着けない技があるのだとサルワは察しながら瞼を閉じた、俺はそれを横目にボソリと呟いた。


「戦った剣士の中で19番目に強かったぜ」


 その後、志龍の所に急いで運んでいって回復させた。

 俺も肋骨が折れていたのでそれを直してもらった。


 暫くしてプレアが戻ってきた、ニコニコと笑いながら、


「ようこの様子だと勝ったみたいだな」


「余裕なのですよー」


 その余裕っぷりは服を見ればわかる、傷一つどころか砂で汚れた形跡もない、まさに完全勝利。


「まあ中々いい遊びにはなったのですよー」


 強さがにじみ出るセリフを言って美穂のところに向かっていった。

 俺は月を見た、美しく、それは仏のような優しさを持っていた、まあこれは人工的なものだがそれでも月の美しさは見事だった。

 俺は月に手を合わせて1つ願った。


「月よ、この街の被害総額っていくらなんでしょうか」


 辺りには壊滅した街が広がっていてなんて言うかうん、壊滅している。

 俺はそれを見て笑いながらみんなの元に向かっていった。

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