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第1章 第40話 序章 再会、そして再戦を

いつも見てくださっている皆様には本当に感謝しております。

 朝、俺達は第2の世界のシフレル王国の壁門、ゴリースがいる場所に集合した。


「ようゴリース、元気にしてたか?」


 獣顔がキザに笑い


「元気も何も朝から酒持ってるやつにそれ聞くか?」


「それもそうだな」


 お互いに笑いあった。


「そうだ、志龍、お前にちと話がある、少しこっち来てくれ」


 言われるがままに彼の愛用している馬車の反対側に行かされた、彼を見ると遠い目で空を見上げ煙草を吹かしていた。

 言いたいことはなんとなくだが分かる。


「ルーベル学園、大変なことになっちまったみたいだな」


「ああ、ちとばかりな

 これには流石に学園長も堪えてたよ」


「⋯⋯っくそ」


 彼を見ると唇をかみしめて悔しそうにしていた、それもそのはず、ゴリース、彼もルーベル学園の生徒だった。


「その場に俺が入れば⋯⋯」


「状況が変わってたとでも?」


 彼の表情が一変し驚きの表情に変わった、


「ゴリーフ、お前が来たら少しは状況が変わってたとでも言うのか?」


「⋯⋯ああ、そう言いたい」


「無理だ」


「っ! ふざけんな!」


 俺が断言すると彼は激怒し胸倉を掴んで来たその表情は激昴した獣そのものだった。

 だが俺は臆することなくその手を捻り足を使って彼を倒した。

 そして冷酷に彼を突き放すように


「図に乗るなよ、

 お前が居て変わるくらいの状況だったら被害なんて出てねーよ、それどころか俺は黒魔道教の司教なんてその場で殺せてるよ」


「っ!」


 殴り言葉の様に俺は告げた、彼はというと何も言い返さずにただ倒れ込んで悔しそうな表情を浮かべていた。

 先程みたいにもう襲ってくることはないだろうと思い皆の元へ帰ることにした。


「頭冷やしてからまた会おうぜ」


 そう言い残して戻った。


「話し合いは終わった?」


 コクリと頷くと、「それじゃ行こっか」と美穂が森を指差して歩き出す、だが誰も場所が分かってないので先頭に俺が着いた。


 暫く、およそ小一時間といったところだろう、森の少し深い部分に入ってきた、木々が生い茂っていた、記憶の中にあった数ヶ月前の景色よりもその緑は上品に日をかけてこそ出る深みというのがあった。


「綺麗な森ね」


 美穂が森を見て感嘆していた、小鳥の囀りは耳を心地よくして、風に煽られた木々を葉が成す音は先程まで少し荒れていた心を落ち着かせてくれた、自然による精神的な回復の恩恵を存分に受けながら俺達は進む。

 この前に来た時にマッピングは出来ていたので場所には困らずに着くことが出来た。


「さてここが目的地だ」


 そこは皆が想像していた光り輝く月詠の街ではなくただのでかい岩だった。

 さて質問だ第1反応はどうだったと思う?

 ANSWER PLEASE

 答えは「冗談だろ? こいつ頭おかしいんじゃ無いのか?」でした⋯⋯ああ、読めてたよその反応、でも誰一人として口に出してくれない、ツッコミ待ちをしていたので誰も何も言ってくれないので結構堪えた。


「おほん! それじゃこれから行くぞ、皆俺の手を握れ」


 キョトンとした顔で美穂が俺の手、プレアが美穂の手、ハルがプレアの手を握る形になった、オーケー準備は出来たな、心做しか美穂がワクワクしているそして最後の注意をする、ここから起こる最悪の出来後のについての注意だ。


「お前ら! 死んでも文句なしな!」


「「「え?!」」」


 岩に手を突っ込む、それと同時に体が吸い込まれていく、


「きゃぁぁぁぁぁ!!!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「おぉぉぉぉぉ?!!!」


 各個人個人素晴らしいくらいの悲鳴を上げてくれるので大満足している、でもちょっとまだこれには慣れないかな⋯⋯あ、やっぱこれダメだわ。


「ちょっと志龍!? 何死にかけてんのよ!? ええ!?」


 ごめん 美穂(パトラ〇シュ) 僕もう眠たいよ⋯⋯。


「ぐえ?!」


 地面に背中が当たる感覚がして意識が覚醒した、辺りを見渡すと3人その場で倒れ込んで死んでいた。


「いやーいいデジャブだ!」


 清々しいくらいに俺が叫ぶと後から


「ふふ、志龍はんやっぱおもろいねぇ」


 色っぽい、大人の声がした、振り向いて少し笑って


「よう、来たぜ」


「お久しぶりやね、ようこそやで志龍はんとそのお友達さんら」


 時は少し経ち、場は移り、コウ家本家に通された、行く時に俺以外の3人はワナワナと少し慌てふためいていた、「どうしたんだ?」美穂に聞くと


「こういう所初めてだし何か緊張しちゃって⋯⋯」


 分からんでもない、1発目は誰でもそうだ、俺だってそうだったからな、と言うと少し落ち着いたようだがまだ少し緊張しているみたいだった。


「着いたで」


 クレナさんが立ち止まった先にはいつ見ても立派なコウ家本家だ、その圧倒的な風格に3人は唖然としていた。


「んじゃ入るか」


 そう言って中に入ろうとすると袖を引っ張られた。


「何の用だい?」


「何勝手に実家に戻ってきたかのような感覚で行こうとしてるの?」


「慣れてるから」


「私達は慣れていない」


「心の準備は?」


「出来ていない」


「よし行こう」


 美穂や他の2人にもお構い無しに進んでいく、「ちょっと待ってよ」と言いながら駆け足で俺の隣に着いてくる、後からプレアとハルが着いてきているのを確かめ、少し前と距離が空いたので詰めるために早く歩く。


「んで志龍はん、ええ子捕まえてるやないの」


 突然クレナさんが振り向いてニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた、俺は1つため息をついて


「ただの幼馴染っすよ」


「そうには見えんけどな」


 いやらしくもちょっと痒いところをついてくる、俺はジト目で睨むと


「はいはいこの話は終わりね、すまんなーえっと名前は?」


「⋯⋯美穂です」


「おお、美穂さんかいな、よろしゅうな、ええ名前しとるね」


 いい名前と言われて少し頬を赤らめて髪をクルクルと指で遊んで


「あ、ありがとうございます⋯⋯」


 とお礼を言っていた、当の本人は笑いながら「ええ子やね」と機嫌良さそうに言っていた。


「さて暇やし少しここで本題について聞かせてもらおか志龍はん」


 真剣な口調で彼女は俺に本題を迫った、


「今回の本題はある情報についてだ」


「ほう? 情報か、そらまた面白そうやね」


「詳しくは着いてから話すが黒魔道教の情報が欲しい」


「ほう、そりゃ面白そうやね」


「まあ面白くもないこともあるけどな」


 死が迫っているのはまた着いてから話すとしよう、そう心に決め奥へと進んでいくと一部屋に着いた。


「まあ入っておくんなし」


 襖を開けて俺達は中に入る、俺は1度見た事のあるだがいつ見ても美しい宴会部屋に通された。


「わぁ綺麗⋯⋯」


 口に手を当てて感嘆している、美穂、お前の方が綺麗だぜ、1度言ってみたいものだ。


「さて、改めまして挨拶とさせてもらいましょか

 ようこそ月詠の光に照らされた夜の世界、ここの夜は明けません、どうぞお楽しみ下さい、ここが夜の神が宿る街月詠にてございます

 またの名を夜の街灯 月詠の夜とも呼ばれとります」


 夜に光るのは月の光、明かぬ夜に沈まぬ月、見るもの全てを魅了する街、夜の神でも居るかのようにその街、いやその世界は息をしているように思えた。


「さて、こっからやで志龍はん、カードとチップを用意してもらおか」


 カードは相手がその情報を手に入れるために必要となってくる相手の情報、彼女達がどうやってその情報を仕入れるかは分からないがこれは必要だろう。

 そしてチップは⋯⋯んまあ金だ、そりゃ必要だ、だがこいつらは金には意地を張る、まあ見とけ。

 俺は一旦ここまでの流れをクレナさんに話した。


「なるほどなって! ええ?! 志龍はん死んじゃうの?!」


 驚いてあたふたしている、少し目に涙を溜めている。


「そうならないようにする為にここに情報を仕入れに来てるんすよ」


「そ、それもそうやな、んでカードはどうや?」


「怠惰、彼は死者の弔い、そして死者を操るといった能力があった、恐らく潜伏しているのはこっちの世界の何処かの教会と見ています」


「ほう? 寺という可能性はないんか?」


「完全に西洋の格好と弔い方をしていました、寺とかは無いと思っています」


「なるほど⋯⋯教会ねー、そんでこっちの世界っていう根拠は?」


「黒魔道教の近年の動きを見るとこっちの世界の方が動きは多いし向こうにはあまり現れない傾向があった、今回はイレギュラーみたいなものだったしな、そして怠惰の目撃情報が多いのもこっちだ、根拠はこんなもんだ」


「なるほどね」


 頭を傾けて考え込んでいる、そして立ち上がって


「少し資料漁ってくる、最近の黒魔道教が出ている教会を探してみるわ、なーに2、3分程度やすぐ戻ってくる」


「ありがとうございます、それで今回の値段は?」


「金貨30枚や」


「30?!」


 俺を含まない全員がその金額に驚いた、至極まともな話ではあるが金貨30枚はおよそ円に換算すると30万円にも相当する、そんじょそこらの気合の入った武器なんてゆうに買える。


「ちょ、ちょっと多すぎませんか?」


 慌てて美穂がクレナさんを呼び止める、クレナさんは笑いながら


「何も多ないよ、情報は金になる、これは当たり前や、そして難易度が高い情報となってくるとうちらも危険が伴ってくる、これくらいは当然、いやリーズナブルにも程があると思うんやけどなー」


 怪しい笑みを浮かべからかう様な仕草ではあるが反論ができない、美穂は納得のいっていない顔もしながらも黙り込んだ。


「まあそんくらいはするだろう、ほらクレナさん金だ」


 目の前に金貨30枚の入った麻の袋を出す、クレナさんはそれを一瞥して


「金は後払いや」


 と受け取るのを一旦断った、


「あ、そやあんたらここいてもおもんないやろ」


 まあこの前みたいに宴会が行われている訳でもない、唯一あるとしたら窓から覗ける景色だが見ていてもあまり面白いものでもない。


「良かったら遊んで来いや、そんなR18指定の店ばっかって訳でもないし、茶屋もあるさかいそれなりには楽しめると思うわ」


 と言われるままに俺達は外に出て遊ぶ事にした。とは言ってもどこに行こうとしても


「あ! 志龍さんや! お久しぶりー! うちよって行かん? お友達さんもおるみたいやし楽しめるで」


 茶屋に遊郭、賭博場にピーとかピーとか、まともに俺達が入れる場所といったら茶屋しかない、


「ここ普通の店とかないの?」


 美穂やプレアはそう嘆いていた、男子で思春期真っ只中のハルは行く先々の店に入ろうとするところをプレアに耳を引っ張られながら止められている。

 ずっと歩いてばっかなので少ししびれを切らした美穂が


「どこに行くのかアテでもあんの?」


 そう少しイライラした声で問いかける、勿論の事ながらそんなものあるに決まっている、軽く俺は笑って


「着いてきたら解るよ」


 澄ましてそう言ってしまったせいか美穂に


「うざ!!」


 と言われてしまった。


 暫く歩き、目的地に着いた。


「ほら着いたぞ」


 呼びかけるとやっとかよと少し疲れを見せた表情をしていた。


「茶屋? いい雰囲気ねー」


「そうだな、俺もそう思う」


 少し古びた木造の建物に「茶屋 おきく」と書かれた気の看板が掲げてあった、建物に歴史と共にゆったりとした落ち着いた雰囲気が漂っていていた。

 さてここに来た目的は1つ、ある2人に会いに来た、誰かいる気配を感じとったのか


 「はいはーいお客さんですかー?」


 ドタドタと奥から人が来た、兎の耳をした少しまだ幼げの少女が、


 「よう、久しぶりだな」


 「あ!志龍さん! お久しぶりです!」


 元気に迎えてくれたのは兎耳が特徴の「さえ」だ。


 「やっと来てくれたんですねー」


 「時間なかったからなー」


 遊びに行くという約束をしておいてずっと放ったらかしにしていたから流石にこの機会は逃せまいと立ち寄ったわけだ。


 「そう言えばいつもの店は?」


 前まで遊郭で働いていたはずなのだがそれを聞くと少し笑って


 「あの事件があってから少し怖くなってしまって······元々小心者でしたから辞めて今は茶屋で働いている所存です」


 「そりゃ仕方が無いな」


 「はい⋯⋯あ! そうだ何か食べていきますか?」


 「おう、頼むわ、どうせここに居る暇人姫様とも喋らないとダメだしな」


 そう言うとてもポンと叩いて「あーあー」と頷いていた、注文は皆で茶と団子を貰うことにした。

 中に入るとより一層趣のある雰囲気を漂わせている、これぞthe和風と言えるだろう、とても落ち着く。


 「あーここにずっと居ときたいわー」


 「右に同じくなのですよー」


 「俺もだわ」


 と3人は座敷の部屋で寛いでいた、


 「ふふ、どうぞゆっくりしていってくださいね、遠くから来ていると聞いているので疲れをとっていただけたらと」


 「さえちゃんはいい子やね、こっちおいで」


 と美穂が呼んで不思議そうにそちらに向かうと美穂の膝の上に頭を乗せられてそのまま耳や毛などを撫でられてさえはノックダウンとなった


 「くるるー」


 と気持ち良さそうに鳴いていた⋯⋯いいな。


 「さえーこっちに来いよーぱふぇとか言うのが足らん」


 聞き覚えのある声が嘆いていた、さてこの声は暇を持て余しているあの姫君に違いない、俺はさえに「俺が行く」といって彼女用に持っていたパフェを持って向かった。

 さて久々の再開、でもここで一つだけ問題がある、後程それはわかる。


 「お待たせしました、当茶屋特製のスペシャルパフェです、どうぞごゆっくりお食べください」


 「ありがんん!!」


 赤い髪に瞳、その誰でも魅了できそうな猫耳、そしてロリという特性(俺はロリコンでは無いからな! な、無いからな⋯⋯)すべてを兼ね備えた少女、


 「久しぶりだなカグラぐへぁ!」


 パフェはテーブルに置いてたものの蹴りを入れられて俺は倒れ込んだ。


 「なんしに来たしりゅう!」


 「お前に会いに来たんだよこの茶屋まで」


 痛い腹を撫でてそう言うと驚いた顔をして


 「誘拐か?」


 「誰が獣人族全員敵に回すことするんだよそんな馬鹿じゃねーよ」


 「そうか⋯⋯よし言いたいこと言ってもいいか?」


 問題は当たってたようだ、俺は無抵抗で構え


 「どうぞ」


 と言うとポカポカと腹を殴りつけて


 「こんにゃろう1ヶ月後に会いに来るって言って岩の前で待ってたら来なくて風邪ひいたんだぞ! おまけにクレナに大笑いされて今でもネタにされてんだぞふざけんなよぉぉ!!」


 はっはっはそんな約束したっけなーオボエテナイナー、


 「し、シラナイナー」


 「嘘下手すぎだ」


 「すまんすまん、忙しかったんだよ」


 1ヶ月、何となく暇で忙しくてそんな約束をしたっていう存在を忘れていたなんて口が裂けても言えない、クレナさんからそれを聞いて少し焦っていたのは内緒だ。

 カグラを見ると今にも襲いかかってきそうな感じの中で1つ言ってきた。


 「つけ払ってもらうぞ」


 つけとはなんぞかと思ったがまあ大体は分かっている、でもどう払うのか? 分からなかった。


 「どうすればいいんだ?」


 彼女はニカッと笑って


 「勝負しろ、あの場所で

 非常にイライラしてるからストレス発散とかいうやつみたいにほら殴らせてくれ」


 拳から殺意が見える、あ、やべこれ本気出すやつだあっち、俺の額から少し汗が滲む。


 「3時間後、あの場所に来い分かったか?」


 元はと言えば忘れていた俺が悪い、拒否権なんて執行できるような状況では無いし、まあ勝てるし、俺は軽く


 「いいぜ」


 と答えると、笑って彼女は出ていった、さて3時間後に合わせてちょっと体動かしとかないとな、そう思った。


 「わりぃ、少し俺先に外出るわ」


 と言い、3時間後の再戦に向けて高まる気合を抑えつつ少し嬉しく外の街を歩く。


 「カグラ、呼べたか?」


 「うん! これで再戦できるね!」


 「久しぶりやね体動かすんも、まああの子やしうちらも本気でかかれるやろ」


 夜に照らされた2つの影、再戦を目前に高まるものは狩りの本能、即ち戦闘意欲、弱肉強食、生きる為に戦い抜いた力を存分に発揮できる、歓喜していた、今まで抑えていたものを発揮できるということに。

 夜に照らされた影は笑う、再戦を心待ちにするように。


 次回志龍対???

どうもー道山です!

今回から月詠の街に来た訳ですが早速1戦です!

また少し期間が空いてしまったのはすいません。

さて次回からはまた獣人族との対戦となります! お楽しみに!

また次回で会いましょうドロン!

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