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第1章 第39話 序章 前夜 悪夢は夜に囁く

いつも見てくださっている皆様には本当に感謝しております。

 夢を見た、子供の俺は無邪気に遊んでいた。

 ボールで遊んでいた、友達らしき人もいた、俺は楽しそうに笑っている、でも言葉が理解できない。


「────」


 ノイズがかかっている、顔も砂嵐の様に見えない、なのに俺は言動を理解しての笑い方をしている、全くもって理解できない言動をだ、矛盾している。

 そこに自分の両親らしき2人が手招きをして帰宅の合図をしている、俺は走り出した、両親の元に向かって、でも辿り着けない、地面を踏んで進んでいる、両親は1歩たりとも歩いてはいない、両者の位置は縮まる筈なのに2つの点が等速に平行移動をし一生辿り着けない見たいになっている。

 するとだんだんと景色が変わっていく、建物はだんだん熱が加わり耐えられなかったみたいに上からだんだん溶けていく。

 空も赤く染まっていく、だんだんと夜に変わるように赤く血のように染まっていく。

 周りを見ていると前にはもう両親の姿はなかった。


「────?」


 自分自身で何を言ったのか理解出来なかった、「パパ」と言いたかったのだが自分の言葉にもノイズがかかっている。

 ふと頬に水が飛んできたような感覚がした、触れて見てみるとその水は赤かった、走ってこけた時によく見る鉄臭い存在だった。


「────!」


「───⋯⋯」


「────!!! ───⋯⋯⋯⋯」


 沢山の叫び声、断末魔に等しいものがが聞こえる、景色が変わっていく、地獄へと、人々や種族は斬り合い、魔法を使って殺しあっていた。

 鳥肌が立った、その叫びに等しいくらいの声を上げて逃げていった、目の前に広がる「絶望」の景色から逃れるように走っていく、だが逃げられないどれだけ走ってもゴールと澄み切った蒼い空は出てこない、いつまでも続くのは血のように赤い空と無限に続く絶望だ。

 その時目の前に人が倒れていた、


「────」


「──けて⋯⋯」


 言葉が分かるようになっていく。


「助け⋯⋯て⋯⋯」


 臓物は半分以上外に出て目は片方が無い、呼吸も「ヒュー、ヒュー」と荒い、血が大量に出て辺りは血の海と化している。


「────!」


 1歩後に下がる、後から何かが当たった、振り向くとそこにはおよそ人等の種族とは言えない様な異形となってしまった者達がいた。


「助けてくれよ⋯⋯」


「逃げないでくれ⋯⋯」


「せめてこの子だけでも⋯⋯」


「な、なんでもする⋯⋯た、すけてくれ」


「お願い⋯⋯たすけ⋯⋯」


「頼む⋯⋯この地獄から逃がしてくれ」


 何も出来なきこの状況下、無力、そんな言葉以上に怖さというものを感じる、呼吸が荒れる、沢山の人が助けを求める、でも⋯⋯


「────────!!!」


 逃げ出した、頭が痛くなる、背中に罪という言葉が乗ってきた。


「なんで助けなかったんだ」


 無理だ、出来ない。


「助けて欲しいってみんな言ってたぜ」


 俺にはそんな大層な事は出来ない!


「でも逃げ出すことは無いだろう」


 うるさい!


「なら聞いてみろよ」


 声が聞こえる、


「なんで助けてくれなかったんだ⋯⋯」


「逃げないでくれよ⋯⋯」


「お願い助けてよ⋯⋯」


「なんで、なんで逃げ出すんだよ⋯⋯」


 背中が重たい、色んな声が聞こえる、死の淵の断末魔、俺を恨む声が、心臓が押し潰される、俺はこの気持ちを紛らわすために犬歯で唇を噛む、血が出てくる、不思議と痛みは無い、夢だからだろうか。

 でも心に掛かる痛みは感じる、逃げ出した、仕方が無い、その言葉で済まさないとやっていけない、でもそれでも


「怠惰だな、志龍」


 心を読まれた、いや自分の心が声に出して耳元で囁いてくれた、もう1度唇を噛む。

 だが夢にも終わりはある、そしてその終りがやって来た。

 目の前に女の子が居る、その子はこの景色を見て言った。


「もう嫌だ⋯⋯こんな、こんな世界嫌だ⋯⋯⋯⋯」


 泣いているようにも聞こえる、すると


「無くなっちゃえ⋯⋯」


 耳を疑った、でももう1度彼女は決意を固めるが如く


「無くなっちゃえ、こんな世界、終わればいいんだよ」


 極論にも聞こえるその言葉、そして彼女はその場で唱え始めた、世界の終わりを


「この世界は間違えた、絶望しか無い、種族は戦争を起こし天はそれを見守っているだけ、そんな世界存在してはならない、

 世界よ、祖は全てを終わらせる者、終わりの時は来た、これが世界が辿り着いた運命だ、神々の運命運命とし世界の終焉の日としよう、

 では始めよう『ラグナロク』」


 北欧神話における終焉の日、即ち世界の終わりというわけだ、世界は光に包まれていく、そして最後に聞こえた言葉は


「君は英雄でも無い、只の少年だよ」


 ああ、それくらい分かっているよ⋯⋯。

 光に包まれて俺の意識は覚醒する。



「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」


 過呼吸になっている、隣にいた美穂も起きて


「?! 志龍どうしたの!?」


 と慌てている様子だった、俺は笑って


「大丈夫だ」


 とは言ったが美穂は


「そんな青い顔をして言われても無理だよ! ほら横になって」


 とベットに寝かされて


「良くなるまで見てあげるからゆっくりもう1度寝なさい」


 と言われたが寝る気にはならなかった、もしかしたら夢の続きを見ることになるかもしれないからだ。

 なかなか寝ない俺を見て悟ったのか美穂は


「何が悪い夢でも見たの?」


 と俺に聞いた、話した方が気が楽になると思い俺は夢を話した。


「⋯⋯怖いね」


「ああ、怖いよ」


 本当に怖かった、見栄を張る気も無い、2度と夢を見たくないそう思うほどに印象的だった。

 そしてそれと同等にこの夢に対する興味もあった、何故か、この夢の景色がロベンではないかと思った、直感かそれとも小さい5歳以前の頃に見た景色が蘇ってきたのか分からないが消えた世界である可能性はあった。


「⋯⋯大丈夫?」


 美穂が俺に声をかける、その目はいつもの様に弱々しくすべてに怯えているようだった、でもいつもはそれは自分に対してのものだが今は俺に対してのものだった。

 少し起き上がって鏡を見た、俺はそこで笑ってしまった


「ひでー面だな」


 青い顔をして目は虚ろになっていた、笑ってしまうくらいに酷い顔だった。


「そりゃ美穂も心配するわな」


 と見ているうちに笑えてきてしまった、


「夢見ただけでこんなになっちまうのかよ」


 すると耳元で夢の中に出てきた俺が囁いた。

 悪夢は囁く


「お前はこれでもロベンを探すのか?」


 今は少し遠回りする必要はあるがそりゃ当たり前だ。


「こんな夢を見たのにか?」


 当たり前だろ、故郷に帰りたくない子供なんているか? そんなやつは遅めの反抗期でもしてるんじゃねーのか。


「どんなに辛くてもか?」


 愚問だぜそれは。


「⋯⋯誰かを犠牲にしてもか」


 ⋯⋯言葉が詰まる、この先待ち構えているのは黒魔道教団、俺ですら司教レベルであったら少し手間をとってしまう、それに教団が崇める神、こいつに勝てるかどうかなんて会ってみなければ分からない。

 それにより誰かを犠牲にしてしまうこともあるかもしれない、だからあの3人を置いていく。

 なんてことするとでも思ったか。


「?」


 その問はもう済んでいる、あいつらを置いていくなんてことは絶対しない、それに置いていったら末代まで3人で祟ってくるだろうしな。


「あほらしい」


 そうだ、俺達はあほらしいよ、それが俺達なんだから。


「答えになってないよ」


 ならなくたっていいよそれが俺達の答えなんだからな。


「バーサーカーかよ、まあいいよ⋯⋯

 ならさっさとその3ヶ月の命、100年に伸ばしてこい」


 ああ、分かったよ。

 そこで囁きは終わった、さて今俺がすべきことはたった1つ。


「むん!」


「バチン!」と大きな音が鳴る、両手で頬を叩くすると後から当たり前のように


「ああ痛てぇ」


「し、志龍?」


 美穂が後から何が起こったのか全く理解できない様子だった。


「いや、余りにも情けない顔してたもんだからビンタしてみたら痛いもんだな」


「⋯⋯へえ、そ、そうなの」


「おい引くなよ」


 明らかに距離を取られて目も合わせてもらえなくなった、酷い泣きそうだ。


「⋯⋯目、覚めた?」


「ああ、覚めたぜ」


「もう大丈夫?」


「元から大丈夫だ」


「顔色は?」


「ちょっと待ってくれ、うんいい肌色だ、目が死んでいるのはビンタでは治らないな⋯⋯」


 悲しい、治って欲しかった要らないチャームポイント。


「よかった⋯⋯」


 肩の荷でも降りたのかぐったりとしている、俺は隣に行って寄り添って


「すまんな」


「スターミュー奢ってくださいよね」


「なんだそのおしとやかな喋り方は」


「悪いですか?」


 OKです! 最高に可愛いです!


「悪くねーよ」


 ふふっと笑って美穂は窓から外を見る、まだ外は真っ暗で星も見えた、星は夜空に輝き月は夜を照らす様に浮いていた。


「死なせませんよ」


 夜空を見ていると美穂が俺を見てそう言った。


「絶対に志龍、あなたを死なせませんよ」


 決意にも見える、その囁きに俺は答えなくてはならないと思った。


「安心しろ、俺は死なない、お前を置いてけぼりになんてさせないよ」


 美穂はその言葉を聞いて安心したように笑った、そして俺が寝るように促すと疲れたのかすぐに寝た。

 俺は窓から外を見る。

 これから始まるのは戦いだ、1人は死を弔う為に戦う、1人は記憶の為に戦う。

 多くの人がこれに巻き込まれた、弔いの為に。

 これから多くの人が巻き込まれるだろう、記憶の為に、そしてこの戦いはその序章になるだろう。

 この戦いは序章に過ぎない、これから始まる戦いの、神をも敵に回す戦いの始まりの歌に過ぎない。


「神か」


 神殺し、神話にでも載る逸話になるだろう。


「はっ、いいね」


 思わず笑ってしまった。


「神殺し、神話にでもなるかもな」


 記憶を取り戻すついでに神話を作る、


「我ながらいい考えだ、いずれ作ってやるよ、神では無いものが作った最も新しくて最も面白い神話を!」


 空が薄明るくなってくる、光がまるで希望を持っているかのようにその輝きを放っている、夜に囁いた悪夢も消え、新しき目標を作り上げた。


 これはただ1人の少年が右往左往して回り道をして皆に助けてもらう物語だ。

 作り上げるものは1人の物語、それが神話となるそれだけだ。

 いずれ作られる神では無い、最も新しき神話、序章始まる。

こんばんわ! 道山神斗です! お久しぶりの投稿となりましたいず神。

さてここから序章始まります!

今回は序章を始めるプロローグの様なものを書きました、次回から物語は進展していきます。

いやーやっと言えたタイトル、少し言葉は変わってますが言えた事に興奮しています笑

次回からなんとか投稿ペースを上げたいと思っているのですが中々リアルの都合が色々と忙しくてまた結構な間空くかもしれませんがそこは本当に謝らさせてもらいます、すいません。

ですがそれでも上げたいと頑張ります!

では今日はここら辺まで、次回までドロン!

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