第1章 第3話 水龍都市編「森の中で最悪の敵と戦うようです。」
──ゲートに入ると転移に近いのだろうそんな感覚がする。
光に包まれて一瞬でその場所に着く。
──水龍都市ウォータースペルン到着──
「着いたー!」
ハルが両手を上に伸ばしながら大きい声で言った。
朝も早いので近くの人たちの眠そうな目が一気に覚めてこっちを睨んでいた。
プレアが平謝りをしているがハルはそんな事どうでもいい感じで声を張り上げる。
「なあ! どこに行く? やっぱり水美の噴水?」
高揚した声がハルのテンションの上がりっぷりを示していた。
美穂がやれやれと保護者が子供に言い聞かせるように。
「あんたねーもーちょい外見楽しむとかしなさいよ。それに最初に行くのは龍城ヴォレスよ」
──外見を楽しむこれには同意見だな。
一言で言えば凄い、いや本当に凄い、街の至る所に水路が巡っており、噴水などの水の芸術が街全体にあり、まさに水と共にある水の都とも言える。
──だが昔は水とは無関係と言える都市であったらしい。
地面は荒野で草の1本も生えていない、まさに死んだ土地と言っても過言では無かった。
人々も水に飢えていた。雨も降らないそんな絶望的な場所で人々は日々暮らしていた。
──そんなある日1匹の龍がこの地に降りてきた。
龍はこの地に水の恩恵を授けた、龍が足を踏んだ土地には噴水のように水が溢れ出てきたと言われている。
この龍の名こそが城の名前にもなっている、水龍ヴォレス、偉大なる三神龍の一つだ。
三神龍は人々に火を与え、光を与え、水を与えた、と言われている。
ぼんやりと外見を眺めていると白を基調とした軍服に似た服を着た恐らく騎士と思われる赤色の髪と赤く燃えるような目をした青年がこちらに来て軽く微笑みながら膝をつく。
「お待ちしておりましたルーベル学園魔道騎士団御一行様、私は龍騎士団団長、アシレルと言います以後お見知りおきを。これからは私が王城まで案内します」
⋯⋯めっちゃ丁寧で反応に困る⋯⋯。
こんな丁寧に挨拶をしてもらったからには何か言わないと、焦りながらも俺は頭を下げる。
「初めまして光希志龍と言います。ルーベル学園魔道騎士団の団長を務めさせていただいてます。王城までの案内お言葉に甘えさせてもらいたいと思ってます。宜しくお願いします」
それなりに対応をしたつもりだ。
挨拶をしていたので頭を上げて彼を見ると驚いた表情をしていた。
「まだ若き青年がこのような丁寧な挨拶をすると正直驚きますね」
「礼儀作法は彼女から昔しっかりと叩き込まれているものでそれなりには出来ていると自負しています」
美穂を見ながら言うと赤い顔をしてこちらを睨んできた⋯⋯おぉ怖い怖い。
「ここで時間を過ごしていても仕方がありません早速ですが王城に案内させていただきます」
「はい宜しくお願いします」
数分歩いていると都市の中心にそびえ立つ青い塗装をされた王城に着いた。
蒼きその城は水龍を意識したものだろう。門の少し奥にある庭の中心には水龍と思わしき美しい彫刻と山紫水明とは真逆である人工の美である噴水が絶妙なバランスでこの国の英華を物語っていた。
──絶景かな絶景かな、自分の語彙ではこの言葉でしか表せなかった。やれやれ自分を恨むよ。
そんな庭を抜け城の中に入る。
王城には数百を超える宮中がいて王の世話や城の管理をしていた。
中も圧巻だった。中世のヨーロッパ、ベルサイユ宮殿を彷彿させるような作りだった。
王は忙しかったのだろう、少し通されてチラッとこっちを見たら、
「貴殿らに龍騎士団との森の調査を命ずる、健闘を祈る」
とだけ言われた。
俺達はもう少しここに居たかったが用もなくとどまることも出来ずに城を出た。
ここからは観光なのでゆっくり出来ると思いさっきまでの緊張から開放された気分になった。
ウォータースペルンは水の都だそのため水に関することならなんでも凄い。
さっき言っていた噴水なんかも何十個の噴水をまとめ一つの大きな噴水にしている、十数メートルにも上がる水は一つの彫刻のような美を感じるこれが本当の水の美というものかを感じさせる。
これだけじゃない食べ物もだ、水に関する食べ物なら本当に凄い、特に魚類は本当に美味しい、焼いても煮ても、生のままでもなんでも行ける、これが水の利だと思わせるくらい美味しい。
基本的には彫刻などの芸術は好きだ、見ていて心が踊るし何よりも形の無いものから形のあるものに作り上げるのは本当に尊敬をする。
でも⋯⋯食べ物の前だとその美に対する意識も全て食欲という一つの怪物に食べられてしまう。
俺は根本的には花より団子タイプなのだ。
まさに今俺は団子を食している。
団子と言っても魚だがな!
「うんま! これ何? 味噌? まさか味噌塗って丸々焼いたの? あんた天才すぎだろ!」
「分かるかあんちゃん! 魚の味噌焼き!」
「あったりまえだろ!」
「くぅー! 気に入ったぜあんちゃん! もう一本食っていけ! お代はいらねぇ!」
「大将、俺はあんたが好きだ、だから少ないかもしれねぇがこれ取っといてくれや、釣り入らねえ」
金貨を渡す。ビックリされたが俺はその場を串焼きとともに去った。
食べ物に集中しているとみんなとはぐれてしまった、みんなを探そうかと思ったがそんなに焦ることでとないので今は⋯⋯
──今はあの俺の後を付けている奴を警戒しよう。
いつから付けられているのかは分からないが確かに付けられている。
このままにらめっこを続けていても拉致があかない、そう俺は思ったので行動を起こすことにした。
食べ終わった魚の串焼きの棒を手から離し落とす、そうすると意識はそちらに行く、そこで──
「音速」
音を操ることが出来るので自分も音速で移動することが可能になった、でもこれは体への負担が半端ないのであんまり長距離での移動では使えない。
でもこの10mもない距離なら0に近い時間で着く──
⋯⋯逃げられていた、恐らく棒を落とす時に警戒して逃げたのだろう。まさに策士策に溺れるってやつだ、俺策士でもねーけど。
転移魔術を使ったと見られる転移結界用の魔法陣が書かれた紙が落ちていた、使えるかどうか魔力を流してみたが無駄だった。
1度だけ姿を見たがあれは間違いなく──だろう。
「あ! いたー探したんだぞー」
間の抜けた声がした、プレアの声だ、張り詰めていた空気から一気に逆転したような空気になったので少し俺は安心感を覚えた。
するとプレアは不思議そうな顔でこちらを覗き込む。
「むー? なにか変なことでもあったのですかー?」
「いいや5mほどの猫が群れで飛び回ってただけだ」
プレアは難しい顔をしたのでこれからはプレアには冗談を言わないでおこうと心に決めた。
程なくして観光は終わり今日泊まる旅館の様な⋯⋯いやこれは旅館だろう。
外装は日本、ジャポニズムを意識したような完全な旅館で内装も全くだ、木を基調とし、部屋も和室であった。
「うわー凄いねー外見も内見も全くをもって旅館だねー」
目をキラキラ輝かせ子供ようにプレアが言った。
「なんだプレア、お前旅館で泊まったことないのか?」
そう問うと、少し苦笑いをする。
「家柄がそうだったからなのですよー友達とお泊まりとかも今日が初めてなのですよー」
そう言えばプレアの家柄はとても厳しいんだったよな、まあ今だけ楽しそうなら詮索はなしだな。
「ゆっくり楽しめよ、なんせ楽しい楽しいお泊まり会なんだからな」
プレアは目を輝かせてニカッと笑った。
「よう遠いところからこの水亨館へおこしやす、うちがここの女将のヘン・スイレンです」
──美人、本当の美人とあった時にこのような表現が出るのだろう、そしてまさに女将に相応しい、堂々たる姿に客を魅了する喋り方と大人の魅力というものが全て出ている。
見とれていると美穂に足を踏まれた。
「志龍御一行様、今日は菊の間と睡蓮の間にて1夜過ごされませ」
「ではごゆるりと」
部屋についた、俺達は菊の間だった、あ、俺達というのは俺と美穂ってことだ、何故か単純だ事だ美穂は俺が近くにいるのであれば絶対離れない、まあイレギュラーがない限り。
色々何故が今日は緊張しまくりで疲れた。
布団でぶっ倒れていると美穂が俺の横に座る。
「志龍、何を見たの?」
「ストレートにぶち込んでくるな」
「いいから答えて」
強い口調で言われた。
「怪しいフードを被った人族だろう、恐らく──だ」
「そんな、奴らがなんで志龍に近づいてきたの?」
「理由は分からない、でもこれは森に関することだと俺は思ってるし、何より」
「何より」
「俺達から大切なものを奪った奴らだケリをつけるぞ」
「無茶はしないでよね」
クスッと笑いながら言われた、俺も笑い返した。
夜ご飯は豪勢だった、恐らく割烹と言うものだろう、前菜から何から何まで楽しめた、途中ハルを見ると泣きながら食べていた、こいつは今まで何を食べていたのだろう⋯⋯。
みほとプレアは流石女子と言ったところだろう、品の溢れた食べ方をしていた。
夕食が終わった。
さて風呂の説明をしよう! 風呂は温泉で、室内と露天に分かれている、露天は隣に女子風呂があるので少し高めの柵がある。
さあ!今夜男達の友情が試されます、何でかって?そんなもん決まっているだろう、古来より修学旅行、部活の外泊遠征、これらで行われてきた古の儀式、そう!覗きだ!
「準備は出来たか相棒」
「おうともこちとらいつでも大丈夫だぜ志龍のとっつあん!」
「大きい声を出すな、感ずかれたら俺達が危ない」
変な掛け声とともに俺達は作戦を実行する。
恐らく柵の高さは7mから8m程だ、俺たち2人が肩車をしてもまだ足りない、そこでこいつだ、双眼鏡、これを機械いじりの得意なハルに改良してもらい潜水艦に付いているようなものにしてもらい、長さが6m程伸ばせる品物にした。
色も変えた、事前調べで木の色も完璧に把握済みだ、抜かりなしこの作戦に一片の曇なし。
では始めようか、イッツショータイム!
2人の姿が見える、だが想定外の最悪の問題が発生した。
「ハル! 最悪だここで最悪の敵と遭遇してしまった⋯」
「何!? とっつあん、そんな敵⋯まさか!」
「ああ⋯そうだともやつだ、俺達の行く手をいつも挟むやつだ」
「そう、湯気だ」
──湯気、アニメでは一二を争う活躍ぶりを見せる、言わばアニメでは無くてはならない存在なのだ。
これにより幾多の夢と希望を持った少年達が己の精神を蝕まれ、夢を失い代わりに二次元という新たな居場所を見出した。
さてこれをどうしたものか、湯気に逆らうということは世界の条理に逆らうということ、つまり世界を敵に回すこと⋯⋯さてどうしたものか。
あれ?そう言えばさっきから2人が見当たらないのだが?
「あーらー楽しそうなことしてるじゃない志龍君」
「何をしてるのですかーはーるーくーん」
嫌な予感がした。
悪寒がする、殺気が付近を漂う。
それは覗きという大罪を犯した者達への判決、すなわち死刑を伝えにこられた。
「肩車を解けー!」
「あいあいさー!」
掛け声とともに肩車を解こうとした。
「もう遅いわよ」
「そうそう遅いのですよー」
柵の上に2人が乗る。
タオルで身体は隠してあって見えない、そして俺達は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。
「「なに覗いとんじゃぼけー!」」
桶がものすごいスピードで投げられ2人の顔に直撃した。
意識が刈り取られる中美穂の冷たい目線が見えた。
「男ってほんと最低ね」
美穂が言っていた、これは焼き鳥奢なければならないな⋯⋯。
いや奢っても無駄か⋯⋯。
菊の間、美穂の機嫌は少し拗ねているみたいに怒っていた。
その前で私、光希志龍は完璧な姿勢でジャパニーズ式の謝り方、土下座を行っていた。
「もう二度としませんか」
「⋯⋯はい、しません」
「なら許します」
お許しを受けたのだがまだ機嫌が悪い、まあ10割自分が悪いから自業自得だ。
少し反省をし、布団で寝転んでいる。
「ねえ志龍⋯⋯」
「なんだ?」
弱々しくいつも通り「素」で言ってきた。
「なんであいつらは志龍を狙うの?」
「さあな、なにか因縁でも付けられたのかな」
「それって私に黙ってるあの話のことなの?」
⋯⋯どうだろう、それは自分にも分からない。
何かしら因縁が付けられているのであればそれが1番可能性としては高い。
そう考えて俺も何度も奴らと接触しようと試みている、だが今まであったやつのほとんどが下っ端で何も知らない奴らだった。
「ねえ答えて」
「俺にもそれは分からねーな、でもそうであればますます因縁つけられるな⋯⋯」
「志龍、無理しないでね」
「分かっているよ、無理は禁物だ、でも今は美穂、お前の方がしかねない、今日はもうこの話はやめて寝よう」
「うん、おやすみ」
美穂も寝たので俺も寝るとした、やはり隣で震えている、そっとてを握ってやると向こうも握り返し震えが止まった。
──── 一つ夢を見た、俺は都市にいた、でも普通の⋯⋯俺が知っている都市ではなかった。
テレビの砂嵐のようにノイズがかかり白黒とした何故か懐かしみを覚える様な光景だった、無論俺はこんな都市知らない。
誰かいる、少女らしき人が1人俺の前に立っている。
その少女は小さく小声で
「────りゅう」
「──しりゅう」
驚いた、俺はこの少女を知らない、でもそれならなんで名前を知っているんだ?まさかもしかし──っ!頭が痛くなる。
思い出させないと言わんばかりの痛みで俺はその場に崩れ落ちた。
するとノイズがかかる声のする少女らしき人がまた
「──しりゅう」
──っ!一体誰なんだよ!お前は!
「また──を助けに来てね」
名前にノイズがかかる。誰なんだ一体誰なんだよ!なんで?なんで俺が助けないとダメなんだ?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?
こんな気持ちが頭の中をグルグルと回っていた。
思わずその場で吐いてしまった。
「ひっ──」
吐き出されたものは言葉だった。怨念であり、苦しみであり自分の負が目の前に吐き捨てられていた。
「しりゅうは──のヒーローだもん」
また声をかけられた。知らないよ君を俺は。
「だから助けに来てね」
分からない。
「殺しに来てね」
⋯⋯。
少女の顔には砂嵐のようにザッピングがかかっており顔はよく分からなかったが最後笑ったような気がした。
俺にとって大切な人なのか分からないが助けを求めに来ている、なら助けなくてはそれが俺と言う生き物だから。
「必ず助けてやるよ、お前を絶対に、約束だ!」
彼女から1滴の涙が落ちたような気がした、助けてやる、必ず絶対に──。
夢から覚めた、美穂はもう起きている様子でずっと俺の顔を見ていた。
「あ! 志龍! 大丈夫?!」
「なんだどーってことねーよ」
「ずっとうなされていたよ?! なにか悪いものでも見たの?」
「何でもねえ、古い友人を見ていたよ」
詮索はここで終わりにしようと俺が言うと美穂もうんといい部屋を出て朝食を食べに向かった。
「昨夜はよう寝られましたか?」
女将さんに言われたので、あのことは内緒にしておいた。
「ゆっくり寝られましたよ」
言うと耳元で囁く。
「嘘はあきまへんで、つくならもう少しましな嘘をつきなはれ」
うなされていたことがバレてた。
苦笑いをしてその場を去った。
「よう志龍! しけた面してんな!」
昨夜、プレアと寝てドキドキして寝られなかったのか目にくま出来てるぞ。
それかなにかあんじょう気張らったんかなと言いたかったが何かを察したのか、プレアがずっとこちらを殺気立って笑ってくる⋯⋯うん余計なことはやめよう。
朝ごはんも豪勢なものだった、我々庶民とはかけ離れているものみたいなんかも出てきた。
さて、今日はついに森の調査だ、龍騎士団の人達が来た、蒼く、輝きを持った鎧と水龍が書かれている旗を掲げて来た。
「おはようございます、いい服ですね」
赤と白を基調とした、魔道服で、動きやすく、魔法耐性も抜群の品物だ、魔導騎士団に入っているものだけが、手に入れられる品物で、胸元には邪竜を討ち取る勇者のシンボルがある。
これが我らルーベル魔導騎士団の魔道服だ。
さてこの話はこれ位にしておいて、
「では、作戦会議を始めます、今日の調査は森の魔法石が何やら異常になっているとのことなので、恐らく結界回路の一部が少しイレギュラーを起こしてしまい、魔法石が、おかしくなったのだろう。でも大丈夫だ、今のところ何事もないので早急にその魔法石とこの魔法石とで入れ替えをする。魔法石は異常を来すと青から赤くなるこれが目印だ。これより5団編成に分かれる、1団と2団は西側から、3団と4団は東から5団の君たちは中に異常がないか見てくれ。これにて作戦会議終了、5分後に作戦を実行する、以上解散!」
すぐに作戦会議は終わった、俺は5団なので中を見ることになった。
──5分後
「これより作戦を実行する! 健闘を祈る!」
森は見かけによらず広かった。
まあ元々でかいと思っていたのだが想像の3倍は上回るものであった。
だが森とは気分のいいものだ、何故かは分からないが鳥の1匹も見当たらないのだがな、この森でなにか起こっている、これだけは分かる、そしてあの黒いフードのやつ、今回のキーポイントだな。
そう考えてながら森を1時間ほど歩いてやっと中間の大木に着い──っ!
俺は想定外の光景に思わず息を飲んだ、何故?何故ここに?この場にあるはずの無い魔法石があるんだ!
驚いていると後ろから無数の悲鳴が聞こえた、龍騎士団の人達だ、そして黒いフードを被った人族の者がこちらに来た⋯⋯間違いないな。
「おや?あーあ貴方様でしたか、しかし何故ここに? あーあ、あの方々と同じですかな」
脳に焼き付くようなねっとりとした喋り方だった。
迂闊に手が出せない、龍騎士団の人達が、一瞬でこれほどまでの惨殺をされたのだからな。
1人は両目を抉られ、1人は腸が飛び出てそれが周りに飛び散っている。
「無言とは厳しいですねー! あ、そうでしたか、私としたことがまだ名乗ってもいませんでしたね」
名乗るまでもない、こいつは最悪だ、俺は森の調査を舐めていた、本来このような事が起きたら真っ先に疑う相手だということを忘れていた。
向こうはフードを取り、にたりと笑いながら腰を90°に折、礼をして一言
「私は黒魔道教、副司教、強欲担当シリウス・ソ・ミヤソンです」
何故ここにいるのかは分からない、でも今まで貯めていた怒りが体の底から殺気と共に湧き出てきた
「何を⋯⋯何をしに来たんだ黒魔道教がぁぁぁぁぁ!」
俺があまりに殺気立っているものだから向こうも
「おお、そんなに怒りなさらないで下さい、もう少し冷静に行きましょう」
少し俺も落ち着いた、向こうも少し話がしたいようだ、細心の注意を払いながら話そう。
「一体何をしに来たんだ?」
「あーあそれはまた後で話しましょう」
「なら1人か?」
「いえ、仲間も連れてきていますが今は外で交戦中でしょう」
「それでは私からも質問をさせていただきます、貴方様が本当に私に聞きたいことは何ですか?」
ねっとりとした喋り方だが、心の探り合いが上手いのだほう、いや俺が弱いのか、なら聞くしかないな。
「数年前、レストランを襲撃したのはお前か」
「あーあそれでしたかそれでしたか、そうですとも、あーああの晩は楽しかったですね、私の最初の任務で最高の功績を挙げた晩でしたもの、私にはそれ以外はどうでもいいのです」
どこかヘラヘラと笑っているように見えた。
今俺は本気で怒っている、こんなふざけた狂人に俺達が大好きだった人を奪われたのだから、殺す、殺してやる!そう決めた。
それともう一つ俺の好奇心なのだろう、全く人の好奇心には呆れるものだ、少し状況を悪くしてしまったのだからな。
「お前、ロベンを知っているか?」
今まで笑っていたのがこの言葉を聞いた瞬間に笑わなくなった、そして一言俺を睨んで
「⋯⋯⋯⋯やはり知っていましたか⋯⋯なら仕方がない忘れてもらいましょう、こちらとしては知られては困ることなので」
やはりなにか知っていたか、聞き出したかったら戦いが終わってからだな!
──森での襲撃線、志龍対黒魔道教副司教強欲担当シリウス・ソ・ミヤソン、交戦開始──
次回から少しだけ西と東に分かれた美穂とかの戦いのストーリーに入れ替わります。
こちらも乞うご期待し楽しんでください!
それではまたの機会にせーのドロン!