表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/74

第1章 第35話 月詠の獣人族編 月下の元で月詠を守る者達

いつも読んで下さっている皆さんには感謝しております。

 月詠の夜、昔リペアの大図書堂で1つ書籍として読んだことがある。

 そこは昼であっても夜のように空は暗い、でもその街は真夜中であっても明かりは消えることの無く明るい。

 そしてその世界に住んでいるのは獣人族の者達だと言われており中でもコウと呼ばれる1族はその街を作り、守っている、まさに夜を守る月読の様だ。


「こんな世界があったなんてな⋯⋯」


 思いもしていなかった、本で読んだ時も「嘘だろ」と疑っていた、まあそれでも大人になったら探してみるかと思っていたがな、だってロマンじゃん。


「疑い深いですね」


 カグラの隣にいた金髪の狐の獣人族が笑いながらそう言う、


「仕方が無いですよ、顔上げてみたらこんな世界って洒落にならないですよ」


 笑って返す、


「そらそうどすえ、みんな初めはそんな顔しますからね」


 不敵に笑うのを袖で隠している、その姿がまた上品で美しい、するとカグラの方を見て


「カグラ様、彼にお礼は言いましたか?」


「言った」


 ツーンとしながら答える、それでもこっちを見てもう1度


「シリュウ、ありがとう」


 また眩しい笑顔で


「お、おう」


 眩しすぎて答えにくいぜ、尊さレベルがMAXに達しそうだ。


「ほな、カグラ様もお礼を言われたところでうちらもおもてなしをせなな、志龍さんやっけ? 着いてきてもらえへんか?」


「いいですよ」


 そう言って俺は彼女等に着いていく、そこで俺は何か1つ見落としているものがある気がした、何だろ⋯⋯。

 また数分歩いて目的地に着く⋯⋯⋯⋯う?


「はい?」


 もう笑うしかねーよ本当にでっかい門にでっかい屋敷、いやもう城の領域に入っている、白塗りで屋根は瓦⋯⋯あ、これ城だ。


「おいカグラ」


 耳をぴょこんと立てて


「何だ?」


「ここ誰の家?」


「カグラのだよ」


 冗談はよしてくれよベイビー、そう思ってしまった、顔に出ているのだろ、


「ほんとどすえ、ここはコウ家の家どすえ」


 コウ家ねー⋯⋯あ、思い出した、


「カグラってまさか⋯⋯」


「思っている事は正しいですよ、そう、カグラ様はこの家、コウ家の13代目当主、そして自己紹介が遅れてすんまへんな、うちは12代目当主コウ・クレナ、今は隠居をしているもんどすえ、よろしゅうな」


 ああ、思い出したよこの月詠の夜を作り上げたのはコウ家、即ち目の前にいるのは現当主と前当主という訳か⋯⋯笑い事じゃねーよ本当に。


「そう固くなりはんな、カグラに対しても態度を崩さんでええで、あの子喜んどるしなタメ口で喋ってくれる人に」


 彼女を見ると機嫌が良さそうだった、余程敬語ばっかりなのに疲れていたのだろ。


「まあそうしておきますわ」


「頼んますえ」


 話していると門が勢いよく開けられた、そこから男の黒髪の獣人族の爺さん、狐かな、そう思しき人が全力ダッシュで出てきた。


「カグラさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 大声をあげながら彼はカグラを抱きしめようとするがスルーされる。


「カグラ、老人の相手はもっと優しくしてやらないと駄目だぞ」


 と俺が注意するが


「ならシリュウはじーじが抱きついてきたらどうする?」


 即答で


「避ける、ごめん俺が間違っていた」


「おーい! そこの2人、聞こえてるぞ!」


 砂煙を払って老人は近づいてくる、そして


「大丈夫でしたかカグラ様?」


「うん、シリュウに助けてもらったから」


「あの人間にですか?」


 と言って俺を睨んでくる、うっわ目線キツ。


「助けて頂いて誠にありがとうございます」


「いや別に普通のことをしただけですよ」


「いえいえ、そんなご謙遜なさらずに、そう言えばまだ自己紹介していませんでしたね」


 爺さんは深々と頭を下げて


「私は10代目よりこのコウ家を仕えさせて頂いております、サルワと申します、以後お見知りおきを」


「光希 志龍です、よろしくお願いします」


 サルワさんは俺が頭を下げて自己紹介をしたのに驚いて


「驚きました、礼儀がなっている」


 目が穏やかに笑っていたのにやっと認められたという感じがして少し肩の力が抜けた。


「まだまだ礼儀も勉強中でして」


「そんなご謙遜なさらずに、こちらのカグラ様が見習わないといけないくらいですよ」


 余程礼儀がなっていないのだろ、カグラも名を出された時に目線を逸らしていたから。


「さて立ち話もなんですから屋敷の中に入ってお話でもしましょ」


 とクレナさんが言っていたので皆が賛成して屋敷の中に入って行った。


 さて屋敷の中はとても広くて三味線で音楽が奏でられている、そして1番上の天守閣があるところに着いた。


「ここはいい眺めでしょ?」


 天守閣に座って盃に入った酒を飲む、その姿は本当に美しく思わず見とれてしまった、それに気づいたクレナさんが俺を茶化して


「なんや見とれてしまいはったんか? まだまだ子供やね」


 とはやし立てるものだから


「そんなんじゃないですよ」


 言い返してみたがまたそれで面白がられて


「おもろいな志龍はんは」


「面白くもなんともないですよ」


「お、言うてる間に色々来たさかい宴にでもしましょか」


「そーですね」


 そこからは色々なご馳走と共に踊り手による三味線の音楽に合わせた踊りなど楽しくて時間などを忘れてしまいそうだった。

 俺もみんなと一緒に笑って食べ物にありついたり踊ったりしていた、クレナさんには


「踊りは上手いけど三味線はまだまだやね」


 と言われたから明日から鍛えてやる。

 そして1時間ほどたった頃に不意に袖を引かれた、見るとカグラがいた、そして天守閣まで来いと言われたので俺はそれに従って着いて行った。


「ここはいいぞ」


 とご機嫌なようだ、鼻歌なんかも歌ってニコニコしている


「みんな笑ってて楽しいし、じーじはうるさいけど面白いし、出ていったって言ってもあっちが面白そうだから勝手に抜けただけ」


 そう言えばサルワさんは「厳しすぎたから逃げたのかも⋯⋯」と心配していた、聞けば安堵の表情を浮かべるだろな、俺もそう思うし。


「なあシリュ────」


 外から悲鳴が聞こえる、俺はすぐさま下を見る。

 不届き者が店の女性を捕まえて離さない、そして大声で


「なあ! いいことしてやるからあっち行こうぜ!」


 などと言っている、横を見るとカグラがもう既に臨戦状態に入っている、そしてクレナさんもこっちに来て


「こーいう輩がいるから嫌いなんですよ、おどれ血みても知らんぞと言いたいわ」


 その男性を睨みながら言ってもう今にでも飛び出しそうだ、でも俺は1つ確認をしたい


「なああの人倒してもいいんだよな」


「? いいですけど⋯⋯」


 ならオッケーだ、俺は2人を下げて


「飯の礼だ、ちょっと暴れてくるわ」


 俺は勢いよく飛び出す。


「へっへー、なあ行こうぜ!」


 彼女は抵抗をしているが虚しくもそれは通用しない、涙を浮かべていたそして


「離して!」


 思いっきり引っぱたいた、


「ってーな! 何しやがんだよ!」


 頭に血が上ったらしい、怒りの形相に変わって拳を作って彼女を殴ろうとする。


「助け⋯⋯」


 その拳は誰にも当たらずに空を切る。


「御用改めしんぜよう」


 彼女をお姫様抱っこしながら俺は言う、そして


「月読の夜は汚しちゃ行けねえ、もししたいのなら」


 俺は撥を取り出して


「黄泉の街道に野垂れ死にする覚悟は持てよ」


 黒く漆黒に染まった撥を右手に俺はそう言う。


「ぷっ、ギャハハ! 何言ってんだこいつ、僕ちゃんその女置いてお家に帰ろうね」


「無理と言ったらどうする?」


 と言うと右拳で


「力ずくで!」


 やっぱり撥はいらねーわ、俺は彼女を下ろして


「少し逃げてくれ」


 と言って逃げてもらった、よしこれでオッケーだ。

 俺は俺から見て右に避けてそして左足でハイキックを顔面にお見舞する、彼は勢いよく吹っ飛んで行った。


「ぐかぁ!」


 歯は数本折れており、鼻血を出していた。

 これでいいだろ、俺は大声で


「とっとと出ていけ! さもねーと次はもっと痛いのくらわせるぞ」


 と言うと小動物のように逃げていった。

 俺はその場で一息をつく、すると周りから拍手が貰えてそしてさっきの今回は兎か、白くて雪のような色だ。


「ありがとうございます!」


 涙を流して俺にお礼を言ってくれた、俺は


「別にそんなありがとうと言われることでもねーよ、あれを助けねーなんて男が廃れるだろ」


 少しかっこつけてみましたドやさ!

 そんな俺を彼女は頬を赤らめて見ていた、俺は天守閣の方に戻らないとと思ったので戻ろうとすると


「あ、あの!」


 と呼び止められた、そして


「名前を教えてください」


 俺は手を振って


「光希 志龍だ、また今度遊びに行くよ」


 はい、1度は言ってみたかった台詞! 言わせていただきました! 気分はどうだって? なんも言えねえ。

 天守閣まで帰ると皆すごいもの見たさみたいな顔をして


「えらい実力あるみたいやね」


「シリュウすご!」


「あのハイキックは素晴らしかったですよ特に腰の入り! これがまた素晴らし⋯⋯」


 長いから流しておいた。


「まあ実力だけはありますからね」


「そこは謙遜しゃーらへんのやね」


 しても仕方が無いしな。

 まあ今はそれよりも


「勝手にでしゃばってすいません」


 頭を下げて謝る、当然だ勝手に仕事をとったのだから、クレナさんはそれを見てまた笑って


「ええよ、ええよおっぱらえたしそれよりもええもん見してもろたしね」


 と言って水に流してくれた、ありがたい事だ。

 そしてまた何事も無く宴会は進んだ、そしてもうすぐで終わりを迎えようとしていた。


「今日はありがとうございました」


 礼を伝える、クレナさんは手を横に振って


「そんな当たり前よ、家のカグラ様助けてもろたんやから」


 そんな事言われても俺はたまたまそこに来て、たまたま彼女とあった、偶然だろう、でも偶然とは凄いなと改めて感じた。


「最後にちょっとええか?」


「何ですか?」


「ちょっと寄って欲しい場所があんねん」


 クレナさん等が俺を呼ぶ、俺は何だろな? 玉手箱でも貰えるのかな? と思ってワクワクしながら着いて行くことにした。

 階段を降りて降りて行くと地下についた、扉が鍵を開けられる音がしてそしてその部屋は


「うお、すげー」


 この世界を縮小した様な所だった、やはりそこも空は暗かった、そして街に光が灯る。


「ちょっと、野暮用に付き合ってもらいたいと思ってんねん」


 さー何だろなその野暮用って、敵意等が全員から感じられるぞ、何でだろーなー、って白々しいか。


「ちょっとうちらと戦ってほしいねん、なーにちょっとした戦いや」


 さっきとは皆さん明らかに表情が違う、そうあの男を取っ捕まえる前の獣の様な目線だった。


「理由は?」


「あんたにはここに残ってほしいねん、それをあんたに言っても無理やろうからこうやって取っ捕まえよう思てんねん、

 なーに勝負の方法は簡単、うちらが全滅するか、志龍はんが負けるかの二択や、志龍はんが勝てばここから帰ってもいい、でも負けたら」


「負けたら?」


「ここに一生いてもらおうか」


 面白い賭け、俺は思わず笑ってしまった、でもそれと同時に。


「俺に勝てるとでも思ってんのか?」


 撥を取り出して俺は敵意を剥き出す、一瞬向こうの何人かはビビっていた、それでもクレナさんは


「おもろいの、童調子乗るのはよしときなはれや」


「こっちの台詞だっつーの」


 お互い火花が飛ぶ様な勢いで睨み合っている。

 そして向こうが俺に


「20秒後に開始や」


 と言い残して屋敷の方に向かったり店に入ったりと散らばって行った。

 そして俺は数える、20、19、18、17⋯⋯と数える、その度に気配や敵意等が相手から伝わってこなくなる、流石獣人族、身体能力に加えて気配の消し方もマスターしているとは思ってもいなかった。

 そうこうしている内に、


「10、9、8、7、6、5」


 とカウントが進んでいく、戦いがもう少しで始まる。


「3」


 あと3秒、


「2」


 あと2秒、


「1」


 あと1秒、そして


「0」


 と同時にクレナさんが俺の目の前に現れる、


「狂化、うちらの切り札や、能力を比にならんくらい上げさせる、これができるのは1部の獣人族だけ、そしてこの力は物理、魔法の限界を越す、故にもうあんたは避けられん、ごめんなそれとありがとうな」


 そう言って俺を殴ろうとするが俺はそれを撥で受け止める。


「物理、魔法の限界か」


 彼女の顔が歪む、


「超えたきゃ超えてみろ俺はそんな枠では収まりきらないぜ」


 鬼の形相になって俺を見つめて


「このクソガキが舐め腐りおって」


「へっ、舐められる方がわりーよ」


 月詠の夜に月が光る。

 月下の元で俺は今夜を守る獣達と戦う。


 ────志龍対コウ家の者達────

さて獣人族との対戦が始まりました、そして向こうは元祖狂化の使い手、そしてラスボスはなんとあの人だ!

今回も最後まで見てくださっておおきに笑

では次回までドロン!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ