第1章 第31話 ルーベル学園祭編 鎮魂歌(レクイエム)を唄おう
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荒野にただ1つ廃墟のようなビルがある、ここには何らかの街があったのかもしれない、はたまたもしかしたらこの場所は少し前まで世界に名を轟かす様な都市だったのかもしれない。
しかしもうそこには砂漠とかした世界とあったと証明が辛うじて出来る物しかない。
「趣味わりーよ学園長も」
見ていると消滅した場所を何故か意識してしまう、これも定なのかもしれない。
俺はこの戦いに終止符を打つためにリーダーがいるであろう最上階に突撃する。
ビルの側面を登って一番上の窓をかち割る、何? 階段使って登れ? んなめんどくさいことする訳ないだろ、タダでさえめんどくさがりなのに。
「さて、御用改め、観念して貰おうかって、まじか⋯⋯」
驚いたことにそこには誰もいないただ白い世界が広がっていた、これはあの数ヶ月前にリペアの大図書堂で見た夢に似ている、違うことといえばこれは現実だということだ。
「空間構築魔法か⋯⋯よく出来てるな」
歩きながらつぶやく、試しに靴で地面を鳴らす、音は響く、なるほどどうやらここは
「相手の罠ってところか」
後ろから誰かがそう言った、後ろを見ると黒装束、葬式にでも出席する様な漆黒の黒、でもゼッケンは付けてある、この人がリーダーって訳だな。
「思考でも読めるのですか?」
「いやー、そんな多そびれたものじゃない、単にここに入って頭のキレる君ならこう思うだろうという自分の考えさ」
なるほどこの人相当頭がキレるぞ。
そう言えば野球部には一人だけ学年トップ3に入る成績をずっと維持している人がいると聞いた、この人か。
「さて、ここに入ってきた時点で君は罠にかかったと思った、なら次に君がすることはこの空間を消すことだ」
「分かってるじゃないっすか」
よく分かってるじゃないか50点だ、俺は狂眼を開く、すると彼は表情一つ崩さずに
「しかし君は消さない」
っ!
「なんで言い切れるんですか?」
「1つ目、君は勝負が好きだ、こんな空間魔法滅多にお目目にかかれない、だからこの空間で戦いたい、そういう常識的判断だ、間違っているかい?」
ああ、間違ってないよ、くそったれ。
「2つ目、これは決定付けるものだ、それは君の今の表情だ、人は嘘をつくと眉が動く、そして人は見抜かれるとそれを隠したいから表情をより一層固くする、これが罠さ、それくらい見つけるのは容易な事、志龍君だっけ? チェックさ」
1点の隙もないその洞察力、推理力、苦笑いしか出てこない、これだけで分かる彼の異常さ、さてここまで読まれたら積みだ、今から世界を変えてもいいけどそれはそれで負けだ自分自身が。
プライドの高さか、彼自身に思考を読まれムキになっているのか、どちらにしてもこれも彼に読まれているのだろ。
「チェックか⋯⋯」
確かに状況は最悪だ。
相手の思うがままにやられて、何をしても読まれる、こんな反則的な思考力俺にも欲しいよ。
でもな
「チェックはチェックでもこれでパーペチュアルチェックだぜ」
知を持つものには力で負かせ、無情にも今からあんたが戦うのは世界最強。
知を持ってしても通用しないような圧倒的な力の差、狂眼無しで勝ってやるよ。
俺が魔力を剥き出しにすると、彼はそれでも尚表情を崩さずに淡々と
「パーペチュアル・チェックですか、これで私は貴方と対等って訳でもないですがそうなるのですか
なるほどこれは1本取られましたね、お見事です」
と小さく拍手をした、音は響き何重にもなり、そこに人が数人いるかのように思える。
「打って変わって1つ質問をします、貴方は鎮魂歌はお好きですか?」
死者を慰めるような歌は俺は好きではない、
「なるほどお嫌いと、私はですね好きなのですよ、流れゆく月日の中でも死者を忘れず弔う、その心と曲から伝わる悲しい思い、素晴らしい作品です、そして」
指を鳴らす、すると白い世界からゾンビが出てきた!
「何?! 死者をゾンビとして復活させる、お前まさか! ネクロマンサーか!」
彼は笑い
「いかにも」
と言ってゾンビの数を増やしていく、禁忌の技、死者の復活、こんなものを研究していたのか?!
「表情が崩れていますよ」
彼は淡々と告げる、そして
「死者の弔いを忘れるのは怠惰です」
ゾッとした、その一言に畏怖では無いが寒気がした、そして変装をしていたのだろ覆面として被っていた彼の顔の皮膚を脱いだ。
黒髪で顔は白く狂っていない冷静で人を殺すのをなんとも思っていないような目をしていた。
背はあまり高くなくて160中盤位、歳は20代前半のように見える。
彼は目の前に脱ぎ捨てた顔を見て悲しみ、
「ああ、此方も弔わなくては、死者として私が弔いの言葉を述べさせていただきます」
手を握って天を見つめた、お前に天を見る資格はない。
「まて、てめえ一体何処のどいつだ?」
聞くと、軽く奴は彼の顔に向かって十字架をして弔い、こちらを見て。
「さて、初めてお会いしましたね、光栄です」
顔の血を拭きながらそう言った、そして軽くお辞儀をして
「私は黒魔道教の司教、怠惰を担当させて頂いております、アケディア・ジャッチメントです」
アケディア、ラテン語で怠惰を表す、なるほど怠惰の裁きってか、言ってくれるじゃねーか。
どうしたものか、この場で司教と出くわすとはな、思いもしなかったぜ。
憎悪の炎が燃える、その前に先程死んだ野球部のリーダーである人に弔いをする。
「すまない、助けられずに⋯⋯」
関係ない人を巻き込み、そして殺したあの許されるわけがない悪を俺は睨む、
「ここから逃げられると思うなよ」
より一層憎悪に満ちた表情を見せると彼は笑って
「そう! その表情だ! 死を弔った後! レクイエムを奏でた後! 相手を見てその憎悪に満ちた表情を見せる! たまらない! 最高だ! 怠惰でないその目標を見据えた表情、最高だぁぁぁ!!」
狂ったように笑い出して素晴らしいものを見たように崇める、その表情に俺も絶句した。
「あーぁぁ、さて、外は外で今大変な事になっていると思いますよ、我が愛する勤勉な教団の者と戦っているところでしょう」
司教が来ているのだから予想は着く、それにさっきからあいつらに繋がらない、まああいつらの事だし大丈夫だ。
さて俺は戦闘準備に入る
「すぐにてめえを殺してやるよ」
撥を取り出す、黒くどす黒い奴という存在を断ち切る、そう思い俺は全身の神経を集中させる。
「始めましょうか」
手を広げ、地面からゾンビが大量に出てくる、1000をも超えるだろう、その死者に向けて乾いた笑顔で
「さあ! 死者たちよ、自分らを弔う鎮魂歌を唄おうではありませんか! さあ! 始めましょう、題名は「記憶無き者の死」」
指揮棒を振る指揮者の構えをして演奏を始めようとしていた、俺はその演奏をぶち壊す為に大きな声で
「上等だぁぁぁ!!」
死染めの歌が白い世界に黒を作るように唄われる、弔いとは言い難い弔いの歌が奏でられる。
────志龍対黒魔道教 司教 怠惰担当 アケディア・ジャッチメント────
戦いとは至って単純なもの、俺がゾンビを倒す、するとまた復活してかかってくる、無限ループの様に続く、限りがない。
指揮棒を振りまるでオーケストラやオペラでもやっているように彼は時期僕を振り続ける。
「キリねーなくそ! ならこれならどうだ!」
俺はゾンビを引きつける、そして充分溜まったところで両手の撥で
「2音 轟音!」
轟く音の衝撃に押し潰されゾンビ達は断末魔を自分への鎮魂歌の様に上げていた。
見ているだけで心苦しい、勝手にここになんの罪もなく集められ無理やり戦わされているだけなのだからな。
でももうすぐその元凶を倒してやるよ。
「音速!」
音の速度で奴に近づく、狙いに定めて俺は
「音武装、音切」
音の剣を作る、そして奴の心臓に突き刺す
「さて序章は終わりです、ここからが本当の鎮魂歌ですよ」
奴の目の前にゾンビが現れる、剣は彼の心臓があった胸に突き刺さる、ゾンビは倒れる様に俺に攻撃を仕掛けてきた、俺は撥を抜いて逃げようとするが
「抜けねぇ!」
と、目の前に拳が迫ってきた、俺は逃げられないことを確信して
「っ! 絶対零度の領域」
瞬時にゾンビは凍りつき粉々に粉砕した、攻撃は辛うじて避けらた。
油断した顔に思いっきり衝撃が走る。
「っか!」
少し吹っ飛んだ、そこにはもう一体佇むようにゾンビがいた。
2体も、そこにはさっきまで居なかったはずのゾンビがいた、俺は少し声を荒らげ
「さっきまでそこには居なかったはずだ? なんでゾンビが2体も居るんだ?」
「怠惰さ、あそこに佇んでるだけじゃ怠惰ではないですか、だからここ移動をさせたそれだけですよ」
空間移動魔法、いやその域を超えている。
しかし俺を移動させられなかったってことは自分にとって有利なもの、つまり味方は移動させられるっていう能力だろ。
でも厄介だ、そこには居ないはずの敵をそこに持ってくる、戦いにくい。
「まあそれでもパーペチュアル・チェックだけどな」
「まだこれで私は貴方と対等って訳ですか?」
「いーやまだお前の方が詰んでいる、負けるのはお前だ」
「実に面白いですね、最高ですよ!」
またゾンビを増やす、そして笑い
「さあ演奏も終盤に! 最終番に! さあ最後の鎮魂歌を奏でましょう!」
局面は刻一刻と最終局面に近づいている、最後の弔いが始まる。
敵は移動する、そこに居なくてもそこに来る、1部の隙でも見せればやられる、そんな局面だ。
集中しろ、右に、左に、四方八方を四面楚歌で固められても抜け道はある。
前に行け、その間違った弔いを止めさせる為に、奴を殺す為に。
行くぞ、準備は出来た、広範囲での最強の氷華の弔いを!
「絶対零度の領域!」
絶対零度で全ての敵を凍らせる、そして美しくも散りゆく花のように崩れ割れていく。
そしてもう敵は出てこなかった。
「演奏は終了です」
「そうかい」
「まさかあんな事をするとは私も思っていませんでしたよ」
と笑う、笑うな、お前に笑う権利はない。
撥を剣に変え、奴に突き刺す、でもそれもまた通じなかった。
「それは悪手だ志龍」
その声に聞き覚えがある、朝に聞いたその声だった。
「なんで⋯⋯お前が⋯⋯」
「ごめんな、お前の友達にはなれない、俺と志龍は反対にいるんだからな」
この世の無情さに俺は絶句した、目の前にあの忌々しいローブを着ている友と思っていた人が立っていた。
「鎮魂歌は聞き飽きただろ、これからは別れと悲しみの歌だ」
目の前に道部 幸四郎が立っていた。
さて、前回で言ったはずですね、野球部編は終わると、そんな私が簡単に終わらせるわけがありません、歪んだ終わり方を今回はお届けしました。
歪んだ弔いと圧倒的な能力、志龍に1発を入れたのは彼が初めてです。
そしてまだ隠している能力があります。
それよりも次は裏切りの友の回、黒魔道教出会った道部、として志龍、さあどうなるのでしょうか、友情の儚さの歌が奏でられます。
今回も最後まで見てくださってありがとうございます!
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では次回までドロン!




